2024年04月19日( 金 )

豊洲市場の「闇」に光差す!東京高裁「抗告許可」決定(中)~技術専門家が解説

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 豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算偽装(設計:日建設計)をめぐる裁判において、仮の使用禁止申立に関して、5日、東京高裁は「抗告許可」を決定した。東京地裁、東京高裁で却下されていた申立が、最高裁において審理されることなった。ここまでの経緯や今後の見通しについて、この裁判における原告の仲卸業者らに対して、建築構造の技術面でアドバイスを行っている構造設計一級建築士の仲盛昭二氏に話を聞いた。

東京都の入り口論争(被告意見書より)
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 仲盛 東京都が入り口論争で決着したいと目論んだ東京都の意見(画像は実際の意見書。裁判資料は原告から入手)について、東京地裁はこれを受け入れるかたちで申立人(仲卸業者)の申立を却下し、高裁もこれを追認しました。しかし今回、高裁は この判断に問題があったとして 最高裁への特別抗告を許可しました。

 ――日建設計は豊洲市場以外の建物においても不適切な設計を行っている可能性はないのでしょうか?

 仲盛 豊洲市場の不適切な設計は、偶然 私が気付いて指摘した”氷山の一角”に過ぎないと思います。
 日建設計に対して、私は過去、何ら接点がなく、一切の個人的感情を抱いていません。ただ、1人の建築構造技術者として、不適切な設計により建設された建物は是正措置を講じることが不可欠であり、技術者の義務として不適切な設計を指摘したまでです。これまで国内最大手であるだけに、日建設計には良心があるものと信じていました。ところが、日建設計は市場問題プロジェクトチームの場に虚偽の説明資料を提出するなど、不適切な設計を正当化することに躍起になり、本来、是正措置を命じる立場であるはずの東京都まで日建設計の擁護に徹する始末です。

 以下の図表は、市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)第2回会議(16年10月25日)において日建設計が参考として配布した資料4-2「豊洲市場の建物の構造安全性に関する参考資料」の9頁の資料です。会議において説明は行われていません。

日建設計の配布資料
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 仲盛 SRC用スーパーハイベースのカタログには、「Ds増減」に関する記載はありません。「Ds増減」に関する記載があるのは、鉄骨用ハイベースです。本来、RC造のDsで保有水平耐力計算をすべきところを、SRC造としてDsを低減して計算をしてしまったことを正当化するために、苦しまぎれに鉄骨用ハイベースの「Dsの割増不要」という表記を、あたかもSRC用の表記であるかのごとく、資料に記載しました。PTの委員らを欺くために、このような姑息な手段を講じたものと思われます。

 私が指摘したのは、「Dsの割増の要・不要」ではなく、「非埋め込み形柱脚の場合 RC造のDsを用いて保有水平耐力計算を行わなければならない」ということです。日建設計の説明にある「Dsの割増」は関係なく、PT委員を幻惑した日建設計の行為は 委員や都民を侮辱した行為と断じざるを得ません。

(つづく)

(前)
(後)

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