2024年04月20日( 土 )

ふくおかFGと西日本FHの実力度を検証する(後)

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~親会社に帰属する中間純利益について~

 ふくおかFGの中間純利益(連結)は前年比▲6億9,100万円の272億7,200万円となっている。福岡銀行は前年比+42億5,500万円の267億8,700万円(18.9%増)と増加しているものの、熊本銀行は前年比▲14億5,800万円の11億5,600万円(▲55.8%)、親和銀行は前年比▲16億6,800万円の33億5,200万円(▲33.2%)と大きく減少。また十八銀行も前期比▲15億5,100万円の16億5,400万円(▲48.4%)と、ほぼ半減しており、厳しい状況となっている。
 西日本FHの中間純利益(連結)は前年比+3億1,300万円の127億4,300万円となっている。西日本シティ銀行の単体は前年比▲136億1,900万円の111億3,900万円となっているが、前年の特殊事情(親会社への株式売却)を差し引けば、わずかではあるがプラスとなっている。
 問題は長崎銀行で前年比▲3億200万円の8,800万円(▲77.4%)と大きく落ち込んでいる。十八銀行とふくおかFGが来年4月に経営統合し、その1年後に親和銀行と十八銀行が合併することになっており、たとえ債権譲渡を受けても厳しい状況は続くものと見られる。

(2)19年3月期(通期)の収益予想比較表 【表2】

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 ふくおかFGの経常利益は前年比+38億6,400万円の755億円(5.4%増)の予想となっている。十八銀行を加えると前年比+29億9,200万円の825億円(3.8%増)となる。
 西日本FHの経常利益は前年)比+10億6,300万円の350億円を(3.1%増)予想しているが、ふくおかFGの約半分の比率であり、新たに十八銀行が加わるとその比率は4割近くに落ちる。その差はさらに広がることになるのかもしれない。
 ふくおかFGの17年3月期の当期純利益は▲543億円だったが、熊本銀行と親和銀行の「負ののれん代」(端的にいえば累損)1,834億円を毎年償却していたが、残りの948億円を一括償却したことによる。日銀のマイナス金利政策を見込み、早めに処理していることが読み取れる。
 来年4月に予定されている十八銀行との経営統合は、「負ではなく益ののれん代」を計上することになりそうだ。

ふくおかFGと西日本FHの預貸金について 【表3】

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~貸出金について~
 ふくおかFGの18年9月期の貸出金は、前年比+1兆1,120億円の12兆6,722億円(9.6%増)となっている。十八銀行を加えると前年比+1兆3,703億円の14兆5,409億円(10.4%)。内訳は福岡銀行が前年比+5,504億円の9兆6,007億円(6.1%)。熊本銀行が前年比+3,011億円の1兆4,665億円(25.8%増)。親和銀行が前年比+2,610億円の1兆7,523億円(17.5%増)。十八銀行(連結)が前年比+2,583億円の1兆8,687億円(16.0%)と、大きく増加させているのがわかる。
 西日本FHの18年9月期の貸出金は、前年比+2,759億円の7兆2,067億円(4.0%増)。内訳は西日本シティ銀行が前年比+2,705億円の7兆12億円(4.0%増)。長崎銀行が前年比+60億円の2,439億円(2.5%増)となっており、ふくおかFGが大きく増加させているのがわかる。

~預金について~
 ふくおかFGの18年9月期の預金は、前年比+3,849億円の14兆1,848億円(2.8%増)となっている。十八銀行を加えると前年比+4,359億円の16兆8,519億円(2.7%増)。内訳は福岡銀行が前年比+3,999億円の10兆4,456億円(4.0%増)。熊本銀行が前年比▲166億円の1兆4,458億円(▲1.1%)。親和銀行が前年比+56億円の2兆3,353億円(0.2%増)。十八銀行(連結)が前年比+510億円の2兆6,671億円(1.9%増)となっている。
 西日本FHの18年9月期の預金は、前年比+2,691億円の8兆5,467億円(3.3%増)。内訳は西日本シティ銀行が前年比+2,781億円の8兆3,456億円(3.4%増)。長崎銀行が前年比▲89億円の2,422億円(▲3.5%)となっており、苦戦しているのがわかる。

~預貸率について~
 ふくおかFGの18年9月期の預貸率は89.3%。内訳は福岡銀行91.9%、熊本銀行100.5%、親和銀行75.0%、十八銀行70.1%となっている。これから見ると長崎県の資金需要が弱いのが読み取れる。
 西日本FHの18年9月期の預貸率は84.3%。西日本シティ銀行は83.9%。長崎銀行は100.7%となっている。預貸率は銀行収益のバロメーターであり、健全な預貸率を維持することが求められているのではないだろうか。

ふくおかFGと西日本FHの経営陣 【表4】

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 ふくおかFGはかつて日本銀行(日銀)から頭取を迎えていたが、2代続けてプロパーが就任している。西日本FHは金融庁から歴代頭取を迎えている。ふくおかFGの柴戸社長兼福岡銀行頭取と西日本FHの谷川社長兼西日本シティ銀行頭取は、修猷館高校卒の同級生であるのがわかる。

まとめ

 ふくおかFGと西日本FHの計数を見てきたが、ここ最近、ふくおかFGが西日本FHを大きく引き離しているのが読み取れる。はたして、さらに差を広げるのか、その差を縮めるのか。奇しくも地元高校の同級生2人が、九州地銀の経営統合の行く末を握っているといっても過言ではないのではなかろうか。

(了)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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