ここでしかできない開発 ホテルではなく、「まち」をつくる(前)
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2018年12月28日 10:31

ここでしかできない開発 ホテルではなく、「まち」をつくる(前)

(株)LANDICホールディングス
代表取締役社長 中山 朋幸  氏

IMD Alliance(株)
代表取締役兼CEO 麻生 宏  氏

 天神ビッグバンが進むなか、2016年に水上公園が整備され、19年8月までに天神中央公園が再整備されるなど福岡のセントラルポジションの存在感が高まっている。このようななか、不動産デベロッパーの(株)LANDICホールディングスは、天神ビッグバンの奥座敷と位置付ける西中洲に約280坪の土地を取得し、ホテル&ダイニングの開発を計画している。そのオペレーションを担うのは、博多廊などのレストランを展開するIMD Alliance(株)。実業にこだわり、本質的な価値を提供し続ける2社の代表に、西中洲ホテルプロジェクトの展望をうかがった。

(聞き手:弊社建設事業部リーダー・永上 隼人)



 ――LANDICグループが、西中洲に土地を取得しました。

左がLANDICホールディングス・中山社長 
右がIMDアライアンス・麻生社長

 麻生 西中洲でこれだけまとまった土地は、なかなか出ないですよ。

 中山 天神と中洲のセントラルポジションに位置しながらも、緑豊かな天神中央公園に隣接する立地です。天神、中洲を流れる那珂川、博多湾への眺望も望める場所ですから、福岡都心に残された希少な土地の1つですね。  

 麻生 公園の整備工事も始まりましたね。

 中山 プロジェクト予定地の目の前には、貴賓館のある天神中央公園があります。麻生社長がいうように、この公園は19年8月までにカフェやレストランが整備される予定です。ホテル計画の詳細はこれから決めていく予定ですが、1棟の大きなものではなく、2~3棟の低層建物を配置することで奥行きをつくって中庭を置き、そこでお客さまがくつろげるようなイメージで計画しています。天神の奥座敷・西中洲だからこそできるものを、つくりたいですね。

 麻生 普通でしたら高層の建物になるのでしょうが、西中洲のように前面道路が6m未満の土地は、延べ面積1,000m2以上の建物を規制する福岡市の条例があるので、今回は3つのブロックにそれぞれ1,000m2以内の建物を3つつくるほうが効率的なのです。

 ――西中洲の魅力は、どのようなところでしょうか。

 中山 西中洲は路地が狭いのがやっぱり素敵ですし、情緒がある。なので、そこに見合う、奥行きのあるホテル&ダイニングを実現していきたいですね。感度の高い外国人観光客だけではなく、日本の方たちも受け入れてもらえるようなもの。「博多に行ったらあそこに泊まろう」みたいな。

 麻生 西中洲エリアは、路地裏ならではの界隈性と居心地の良さがありますね。

 中山 そういう意味では、「あの場所はお金だけでは買えない価値がある」―そういうところにこだわって演出していきたいです。観光としてだけでなく、福岡市の中心にあの雰囲気があるのですから、福岡としての奥行き感をうまく出して、懐深い福岡を演出できたら面白いと思います。今は、県外から多くの資本が流入していますが、やはり福岡が好きで、福岡を知っている人たちが開発する、そんなことをしたいですね。

 ――開業は、いつごろを予定されていますか。

 中山 これからコンセプトワークに取り掛かりますが、順調に進捗して、20年秋の中洲ジャズあたりでオープンできるのが望ましいですね。ただ、建材調達などもありますし、20年秋から21年の春にかけてのオープンを見込んでいます。

 麻生 本当にまだ計画の前段階です。これからじっくり練り上げていくところですが、飲食部分に関していえば、西中洲らしいものがいろいろと集まったほうが良いと思います。軸となる部分はもちろん我々がコントロールしますが、西中洲は路地裏と雑多な雰囲気が魅力ですので、まちとして面白くなるように、ほかの飲食店も混じえていきたいです。ホテルをつくるというより、あの面白い土地を西中洲というまちのなかで、どのようなブロックにするのかという視点で考えています。

 中山 飲食事業やホテル事業をやるという感覚ではなく、まちづくりという意識ですね。18年6月に、ロンドンからスコットランドへ住宅、ホテル、オフィスの視察に行きました。日本では建齢50年前後のRC造は解体され、建替えられることが多いですが、ヨーロッパでは建齢100年でもまだ新しいほうだということに改めて驚かされました。

 全英オープンゴルフでお馴染みのセントアンドリュースのまちや、世界最古のゴルフ場オールドコースに隣接したホテルは、建齢500年の5~6階建の小規模ホテルやコンドミニアムなどが石畳に連なり、1階、2階にはセンスの良いレストランやショップが入るほか、オープンテラスがあったりと、500年前の生活や宿泊様式、建築様式が伝承されていることに感動を覚えました。

 セントアンドリュースの街並みと同様に、西中洲というまちの雰囲気はすばらしいものです。中央公園内には、フレンチルネッサンス様式の建齢100年を越える国の重要文化財・福岡県公会堂貴賓館があり、歴史や文化を感じさせてくれています。西中洲プロジェクトには、この雰囲気を伝承できるような工夫が必要だと感じています。点としての開発でなく、面開発、まちづくりとして開発したいですね。

 ――福岡では、ホテル建設ラッシュですが。

 麻生 今のビジネスホテルの建設ラッシュは、昔のカラオケラッシュを彷彿させます。あのころはどこへ行ってもカラオケ屋でしたが、今ふと気づいてみると、残っているのは限られたところだけ。やはり、本質的にカラオケを考えていたところだけが生き残っているようです。今のホテル建設の状況は、何となくそんな感じがしますね。マーケットも変わりますし、将来の日本の動態を考えると、現在のホテル建設ラッシュは恐ろしいですね。今はいいですけれど、10年後、20年後はどうなるのかと。

 中山 その辺りが麻生社長は一貫して達観していますね。「いくらで10年、20年一括借上をします」といった提案には、何となく違和感がありました。そのときはいいのでしょうが、じゃあそのオペレーションが破綻したらどうなるのか、と。先々を考えると、大事なのは契約単価ではなく、そもそもの付加価値なのです。デベロッパーとしては、サスティナブルなまちづくりが求められますので、街並みに対してどういうものをつくって、どういう風になっていくのかが気になります。お金も大事なのですが、それだけではありません。付加価値をいかに提供するのかが肝心で、麻生社長はそういうことを常々考えていらっしゃる。そういうところで今回、タッグを組ませてもらいました。

 麻生 1989年に、私は20代でこの業界に入って仕事をしてきましたが、最近のホテル建設ラッシュは、過去のバブルの状況に近づいてきたように見えます。当時はゼネコンなど異業種がホテルやオフィスのオペレーションに投資を始めて、ふと気づくと投資額を大きく下回る価格でそういった事業を売却していました。投資の出口としての価値はあっても、本質的な価値が本当にあるのか。今はいいけれど、10年後はどうなのかと。

(つづく)
【文・構成:児玉 崇】

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