会社を上場させるだけではない 不動産オーナー社長の「出口」(後)
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10月31日、「アメイズ」シリーズの分譲マンションを九州で供給してきた(株)シフトライフを、東証JASDAQ上場の(株)アスコットが子会社化。11月16日、東証マザーズ上場の(株)GA technologiesが、「Cloud ChintAI(クラウドチンタイ)」などの不動産テック事業を手がけるイタンジ(株)を子会社化。12月17日、投資マンションの企画開発を手がける(株)グッドライフカンパニーが東証JASDAQに上場。このところ、不動産業界ではM&Aや株式上場の話題が相次いだ。とくにM&Aについては、売る側も買う側もかつてのような抵抗感はなく、選択肢の1つとしてM&Aを選んでいるように見える。各社の事例を見てみよう。
18.5億円+αで売却、不動産テックがM&A
11月16日、東証マザーズ上場の(株)GA technologies(以下、GA)は、「Cloud ChintAI」などの不動産テック事業を手がけるイタンジ(株)を子会社化した。株式の譲渡および株式交換によって子会社化され、イタンジの代表取締役だった伊藤嘉盛氏は退任した(伊藤氏はGAのエグゼクティブ・アドバイザーとなった)。これまで、複数のベンチャーキャピタルから出資を受けていたイタンジだったが、最終的に選んだのはバイアウトという選択肢だった。ベンチャーキャピタルからの株式の買い取り資金は必要だったとみられるが、GAの子会社となるまでに18億4,900万円を得た。
GAはイタンジを子会社化した狙いについて、次のように発表した。
「紙でやり取りされる不動産広告を『賃貸1.0』、ポータルサイトではネット上での物件検索、仲介店舗ではリアルでの案内対応といった、ネットとリアルを融合することなく個別の業務にテクノロジーを活用している賃貸サービスを『賃貸2.0』としており、『賃貸3.0』では、デジタル化による完全オンライン取引を始め、AIやデータ技術とを組み合わせることで、従来の賃貸サービスが提供してきた契約や管理のみにとどまらず、賃貸から始まる統合的な賃貸住環境サービスの提案を目指す」。GAはAI(人工知能)を活用した中古不動産の総合プラットフォーム「リノシー」の運営が主力で、イタンジを子会社化することでサービス充実を図る。「Cloud ChintAI」や「nomad cloud」など、これまでイタンジで運営してきた事業については、引き続きイタンジが運営を担当。サービスを休止していた「nomad」は、19年内での再開を予定しているという。
イタンジでは、従業員などから提案された新規事業はすべて採用してきた。そのなかで、代表的なサービスである「ぶっかくん」や「内見予約くん」が誕生するなど、社内でもイノベーションに対する挑戦的な姿勢や失敗を許容する文化を重視。会議を重ねるよりも、最小単位でサービスを開発して、マーケットやユーザーの反応を直接見るほうが早いという考えだ。
伊藤氏は以前、イタンジの新規事業への関わり方について、次のように話していた。
「ビジネスアイデアを思いついた社員は、自由と責任のもとに新規事業を立ち上げられる。社長や役員であっても、新規事業にストップをかけることはできませんし、誰の決裁も必要ありませんが、3カ月間で累計100万円を売り上げることが正式に事業化する条件です」。
上場企業・GAの子会社となり、伊藤氏が事実上抜けたことで、今後のイタンジはこれまでのように失敗を許容し、挑戦的な姿勢を保っていけるのか注目したい。IPOで7億円調達、GLCがJASDAQ上場
12月17日、東証JASDAQに(株)グッドライフカンパニーが上場した。25万株の公募などで7億円超を調達した。同社は熊本市で創業された投資用マンション企画会社で、GLCシリーズ(18年9月からLIBTHへ変更)の賃貸マンションを供給してきた。14年に福岡支社を開設。17年12月には福岡へ本店移転した。
17年12月までに69棟・1,932戸の開発を手がけ、管理戸数は2,448戸を数える。17年12月期には売上高25億円、経常利益3億6,074万円を計上した。これまで、既存オーナーからの紹介がメインだった同社は、事業規模拡大のためオーナー満足度向上を図り、保有物件や収支の状況を確認できるオーナー向けプラットフォームの開発も進めていくという。
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オーナー社長の「出口」は、大きく分けて2通り。「株式上場」か、「事業売却=バイアウト」だ。ほかに、株式上場後にオーナー社長が持株を売却して西部ガス(株)の子会社となった、分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズを開発する(株)エストラストのようなケースもある。
エストラストやシフトライフのようなマンションデベロッパーの社長にとって、「出口」にたどり着くのは容易ではなかったはずだ。事業期間の長さから、マンション開発のリスクは低いものではないからだ。新興のマンションデベロッパーが事業の出口にたどり着くためには、家主業へのシフトなど、ビジネスモデルの転換が1つとして挙げられる。ここに「事業売却」を加えることができれば、経営者にかかるリスクはかなり小さくなる。
依然として「身売り」という見出しが新聞紙面を賑わすことも少なくないが、昨今ではバイアウトに対して向けられる世間の目も変わりつつある。事業承継に対する選択肢は、明らかに増えてきたようだ。
(了)
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