2024年04月20日( 土 )

福岡北九州高速道路公社 これまでの歩みと課題

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福岡北九州高速道路公社は、福岡県、福岡市、北九州市の出資により、1971年11月に設立された地方道路公社だ。福岡都市高速(延長56.8km)、北九州都市高速(延長49.5km)の建設、改築、維持管理などを行っている。都市高速は、今や福岡都市圏の経済活動などに欠かせないインフラとなっている。現在、アイランドシティを結ぶ6号線が建設中のほか、3号線(空港線)の延伸計画もあり、さらなるネットワークの強化が進んでいる。その一方、供用開始から40年を経過した路線が増加しており、メンテナンスのための費用が増大傾向にある。同公社の歩み、課題などについて取材した。

償還準備金積立に年間約368億円

 福岡北九州道路公社の財務状況は、料金収入(2017年度実績約602億円)のほか、公募債などの民間資金(同約322億円)、福岡県や福岡市からの出資金などの公的資金(同約32億円)を事業資金とし、営業中道路の未償還額は同7,996億円となっており、17年度は約368億円を償還準備金として積み立てている。職員数は170名(18年7月時点)。トップである歴代の理事長は国土交通省OBが就いている。福岡県、福岡市、北九州市から41名(同)の職員が出向しており、うち技術職員が32名を占める。

 通行台数は、年間1億323万台(17年度実績)で、そのうち福岡都市高速が6,932万台、北九州都市高速が3,390万台となっている。福岡都市高速は、1日約19万台(同)の通行量があり、市街地の渋滞緩和や利便性向上のほか、九州自動車道や西九州自動車道との接続により、北九州、熊本、佐賀方面とのアクセス向上に大きな役割をはたしている。

 両都市高速とも、緊急輸送ルート(啓開ルート)としても位置付けられており、大規模災害発生時には、人命救助や緊急物資の輸送車両などの緊急車両の貴重なルートになる。

3号線(空港線)延伸計画も進む

福岡高速環状線-百道付近
(提供:福岡北九州高速道路公社)

 福岡高速には1号線から6号線まであり、現在、6号線(事業中延長2.5km、東区香椎浜~東区みなと香椎)の建設が進められている。数字は事業着手順で、1号線(香椎線)への工事着手は公社設立と同じ71年度。全線完成順で見ると、3号線(空港線、博多区東光~博多区豊、延長0.6km)が88年度、2号線(太宰府線と環状線の一部(以下「太宰府線」と記載)、博多区千代~太宰府市水城、延長13.2km)が98年度、1号線(香椎線と環状線の一部(以下「香椎線」と記載)、東区香住ケ丘~西区福重、延長18.0km)と、4号線(粕屋線、東区箱崎ふ頭〜東区蒲田、延長6.9km)がいずれも01年度、5号線(環状線の一部、博多区西月隈〜西区福重、延長18.1km)が12年度となる。合計の事業費は8,823億円に上る。

 6号線は、博多港のコンテナターミナル、福岡市総合体育館や市立こども病院、青果市場などが立地するアイランドシティと、1号線(香椎線)香椎浜出入口付近とを結ぶルートになる。事業は、有料道路事業(公社)と港湾整備事業(国)、街路事業(福岡市)の3事業合併方式で進められており、建設費は292億円。3事業合併方式での整備は、公社としては初となる。延長は約2.5kmと比較的短いが、「(仮称)アイランドシティ出入口」が完成すれば、ターミナルに出入りする大型貨物トラックなどの移動利便性が向上するほか、下道の渋滞緩和が期待される。20年度中に完成する予定だ。

 3号線(空港線)については、既存の空港通出入口が終点だが、空港北口付近まで延伸する計画が検討されている。福岡市南部地域や太宰府IC方面からの国内線ターミナルへのアクセス強化、福岡南バイパス空港口交差点の混雑緩和が目的だ。とくに空港周辺では、空港口交差点や榎田交差点、月隈JCTに近い立花寺北交差点での渋滞が深刻化しているという。現状では、九州自動車道とつながる2号線や西九州自動車道を結ぶ5号線を経由する場合、最寄りの空港通出入口は利用できず、手前の半道橋出入口や金の隈出入口を利用せざるを得ない。その場合、国内線ターミナルまでの約3~5kmの道のりは、一般道を走行する必要がある。

 3号線の延伸計画については、現在、福岡市住宅都市局が検討を行っており、概略設計を行うほか、環境影響評価準備書を作成中。完成時期などのスケジュールは未定だが、「できれば、24年度末に予定されている福岡空港の第2滑走路増設工事に間に合わせた当該道路の供用を目指したい」(福岡市住宅都市局担当者)と話している。

 検討中の延伸計画は、既存の都市高速と同じ4車線道路を約2km延伸する。途中、国道3号バイパス空港口交差点と交差する箇所は、トンネルで立体交差し、ルートを確保。トンネル延長は数百メートル程度の予定だ。トンネルの後は、高架橋ではなく、地表面上の道路を計画している。延伸が完成すれば、「5分~10分程度の時間短縮効果が期待できる」(同)としている。

維持補修に20年間で630億円投資

 福岡都市高速では、1号線(香椎線)、2号線(太宰府線)、3号線(空港線)を始め、供用開始から30年以上経過した路線が年々増えており、18年4月時点の延長は9.2kmある。今後10年が経つと、その延長は倍以上になる見通しだ。年数がそれほど経過していなくても、海沿いや交通量の多い区間では、損傷が発生するリスクがある。公社では12年以降、老朽化・予防保全対策として約630億円の追加投資を決定。20年計画を立て、コンクリート部の剥落対策や鋼部材の塗装補修などを進めている。

 具体的には、1号線(香椎線)の香椎~千鳥橋JCT区間の老朽化対策に着手。この区間は、供用開始から30年が経過しているうえ、博多湾沿いに位置し、海水による塩害のリスクが高い。コンクリートのひび割れ補修、橋脚の天端防水、床版下面への炭素繊維貼り付け補強、鋼桁の塗装補修などを実施している。

「お客さま」目線の料金体系を

 同公社の収入のなかで、最もウエイトが高いのが料金収入だ。福岡都市高速の通行料金は、普通車620円、大型車1,230円となっている。ETCを利用すれば、4号線(粕屋線)を日祝日や夜間早朝(22時~翌7時)に通行する場合は、普通車440円、大型車880円まで割引されるが、割高感は否めない。既存路線の建設費償還のほか、将来的に増加が見込まれるメンテナンスコストを考えると、有料道路事業者として「料金を下げたくない」のは理解できる。

 有料道路の料金体系には、「対距離料金制」と「均一料金制」がある。前者は距離に応じて料金が決まるもので、後者は距離にかかわらず同一料金だ。福岡都市高速は後者を採用している。前者を採用するのは、首都高速、阪神高速、広島高速がある。受益者による「公平負担」の原則に照らせば、走行距離が1kmでも10kmでも料金は同じというのは、ナンセンスだ。対距離料金のデメリットとして、料金徴収コストの増大や料金所での渋滞発生などが挙げられるが、だからと言って、公平負担の原則を踏みにじって良いのか、という疑問が残る。今の時代、組織の論理ではなく、「お客さま」の目線に立った事業運営姿勢を示すことが、何より求められる。

【大石 恭正】

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