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2019年01月25日 07:01

排泄予測デバイス「DFree」で実現する人の尊厳を大切にする介護へ(後)

トリプル・ダブリュー・ジャパン(株) 代表取締役 中西 敦士 氏

介護市場でみえてきたこと、今後の事業展開

 介護施設にディーフリーを導入するときに感じた課題は、ITインフラ普及の問題だそうだ。ディーフリーは、使用者がディーフリー本体を身に付けることで膀胱の尿の量を検知する。そして、無線通信のWi-Fiで、使用者や介護施設のスマートフォンやタブレットに予測した排尿のタイミングを知らせる。介護施設や病院では、入居者が100床を超えるという例も多い。そのため、複数の介護者が連携してディーフリーを使用して100床の排泄介助を行うためには、介護者同士の連絡用ナースコールにディーフリーの施設利用者の排尿のタイミングを知らせることが必要だ。

 しかし、介護施設のナースコールは主にPHSが使用されており、無線通信のWi-Fiを使用しているディーフリーと連携することは難しい場合が多く、中西社長は介護施設内でIT情報を共有できるITインフラの普及が必要だと感じているそうだ。

 そして現在、トリプル・ダブリュー・ジャパンは海外展開として、フランスなどの欧米に販売市場を広げている。欧州では社会保障費の制度が確立されており、個人の尊厳を大切にして本人の生きる意欲を国が支える体制が整っているという。ディーフリーは、排泄予測により自分で排泄ができるようにサポートする機器だ。欧州の個人を尊重する介護の姿勢はディーフリーと目指している方向が同じため、今後も、さらに欧州での普及が進むのではないかと予想される。

 また、トリプル・ダブリュー・ジャパンは事業の拡大にともない、人材採用を前向きに行っている。どのような人材を求めるかは、事業の発展に直結する。ディーフリーは人の役に立ちたいという想いから始めた事業だが、前例のない市場のため、事業展開のための労力も並大抵ではないという。中西社長は、「事業の方向性に共感している人や人の役に立ちたいという使命感をもっている人を採用している。同じ思いをもっていることで、困難な場面でもともにハードルを乗り越えることができる」と話す。

 なお、18年7月からは介護施設向けだけでなく、個人向けにもDFree Personal(ディーフリー パーソナル)の販売を開始した。現在、ディーフリーは介護施設をはじめ、在宅介護や自閉症でおむつを使っているなどの排泄に悩みを抱えている多くの方々に利用されている。60才以上では8割近い人が排泄の悩みを抱えているとされる。ディーフリーを使うことで、「1年半ぶりにトイレで排尿できるようになった」という声や、「トイレのタイミングが分からずに外出ができないことが多く、外出時も家族が心配していたが、安心して散歩に行けるようになった」という声が届いている。

 中西社長はデータを使った予測デバイスを通して、社会保障の最適化を目指している。寿命は延びたものの健康な状態で長生きできる環境は整っておらず、健康寿命と不健康寿命のギャップに多くの税金が使われていることが多いという。中西社長は「『生きる意欲』を高めて、最後まで楽しくイキイキと生きることを全力でサポートできるような世界観を目指していきたい」と話す。

 多くの人が「最後はピンピンコロリが理想」というくらい、誰もが家族や周りに迷惑をかけないようにして生きたいと感じている。今まで不安に感じていた体や健康面での「見えなかったもの」や「わからなかったもの」がテクノロジーを活用することで見えるようになる。何歳でも尊厳をもって生きられるようになることは、誰もが安心して人生を楽しめることにつながるのではないだろうか。

(了)

【取材・文・構成:石井 ゆかり】

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