2024年04月20日( 土 )

【流通ジャーナリスト西川立一のトレンドウォッチ】国民的イベントとなった恵方巻~業界火付け役はセブンイレブン

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 2月3日は節分、今年もコンビニやスーパー、デパ地下の売場に「恵方巻」が並ぶ。恵方巻は節分に恵方を向いて丸かぶりで食べると縁起が良くご利益があるといういわれのある巻寿司で、今年の恵方は東北東。

 ルーツは、江戸時代、大阪で商人たちが商売繁盛などを祈って始まったとされ、1989年、セブン‐イレブンが広島地区で売り出し、2004年には全国で発売、スーパーや百貨店も追随し、いまでは節分の風物詩としてすっかり定着している。

 なぜ、恵方巻がこれほどまで消費者に受け入れられたのか、節分では、すでに豆まきという伝統行事があるが、恵方巻は縁起を担ぐのが好きな日本人の心をくすぐり、一本丸かぶりというインパクトもあって注目をひき、家族団らんのイベントとして受け入れられた。

 そして、日々よく利用される身近な存在であるコンビニで売られたことも大きく、全国に5万店以上あるコンビニでの情報発信力の凄さを改めて再認識することにもなった。

 今年も各社は趣向を凝らしたものを売り出しているが、30周年を迎えたセブン-イレブンでは、一人前の丸かぶりしやすいミニサイズや、「恵方巻」を6つにカットしたものを新たに用意し、複数人でのシェアや、小さな子どもも食べやすいようにした。

 イオンは、ミュシュラン3つ星の寿司店の職人の監修といった豪華なものから、ドラえもんなど子ども用まで最大22種類を取り扱い、大丸東京店は150種類もそろえ、ローストビーフで巻いたものなど変わり種も用意している。

 最近ではロールケーキなどデザートもあり、今年、カルビーはローソン限定で恵方巻の味を再現したポテトチップスを販売するなど、巻寿司以外にも広がりを見せている。

 しかし、コンビニ、スーパーなどで店員に販売ノルマを課し、大量の売れ残りが出て廃棄されるといった負の問題も浮かび上がっている。各社は予約販売を強化するなどして対策を強化しているが、今年、農水省は需要に見合った販売を日本スーパーマーケット協会などの業界団体に呼びかけた。

 販売ノルマ強制は恵方巻に限らず取引先も巻き込んだ悪しき慣習で、予約販売が盛んになればさらに助長しかねない事態になることも予想され悩ましい問題だ。フードロスの問題も関心が高まっており、多くの売れ残り商品が値引きせず廃棄されるコンビニへの風あたりも強まっている。

 業界は、「初午」の日に、いなりずしを食べるという仕掛けをしているが、いまのところ不発で盛り上がりを欠いている。二匹目のどじょうを狙う前に、販売ノルマ、フードロスといった問題を正面から見据えて解決することが求められている。

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