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2019年02月13日 10:29

公益資本主義を提唱する原丈人氏が福岡市で講演

短期利益追求は社会に有用な企業を滅ぼす

内閣府参与 原 丈人 氏

 福岡市内で7日に開催された(公財)九州経済調査協会主催の交流会で、内閣府参与でデフタ・パートナーズグループの原丈人(はら・じょうじ)会長が「公益資本主義2050年の国家目標 天寿を全うする直前まで健康でいられる社会の実現」をテーマに講演を行った。

 原氏は、考古学を志し、中央アメリカで研究を行う一方、1981年に米国初の光ファイバーディスプレイ装置開発メーカーをシリコンバレーで起業。その後もIT企業への投資を行い、90年代のアメリカで代表的なベンチャーキャピタリストの1人となった。その後、国連政府間機関特命全権大使、米国共和党ビジネス・アドバイザリーカウンシル名誉共同議長、ザンビア共和国大統領顧問などを歴任。提唱する「公益資本主義」の普及活動について、2017年に著書『公益資本主義』(文春新書)を出したほか、代表理事を務めるアライアンス・フォーラム財団主催による国際会議などを開催している。

 「会社は社会の公器であり、株主のものではない」。会場に集まった九州の経済人を前に、原氏は実例を交えながら会社のあるべき姿を説いた。株主の利益を追求する欧米の行き過ぎた「株主資本主義」と戦い、数々のベンチャー企業を世界的企業へと導いてきた原氏は、「株主資本主義」が社会に有用な企業をすべて崩壊に導くおそれがあると警鐘を鳴らす。短期的な利益を追求した結果、中長期投資が行われなくなり、企業の成長力が衰える。また、利益が、株主配当や株式の時価総額を上げるための自社株買い、経営陣の動機付けとしてのストックオプションで費やされた結果、従業員は貧しくなる一方で格差が拡大。中間層は没落し、政治のポピュリズム化が加速すると指摘する。

 原氏が提唱する「公益資本主義」に基づいた経営理念には、①会社を構成する「社中」(従業員、顧客、取引先、地域社会、地球全体、経営陣、株主)に対して公平に利益を分配する、②持続的成長、③リスクを厭わず新しい事業に挑戦し、常に改善・改良に努めるという三原則が求められる。その結果として利益はついてくると原氏は強調する。「公益資本主義」の普及のための具体的な方策としては、経営指標として過度にROE(自己資本利益率)を重視すべきではないことや、投資家の短期志向を助長するとして四半期決算報告を廃止することなどをあげる。すでに原氏の提案を受けて、18年3月期第1四半期の決算短信から業績予想を任意記載とする制度改革が行われた。

 「世界に、教育を受けた健康な中間層をつくる」ことを目標として掲げる原氏は、ITとバイオテクノロジーが融合した新産業への投資を始めている。とくに多くの日本人科学者が世界的に優れた評価を得ている先端医療の分野では、アメリカに追従した医療制度から脱却した制度改革を行うべきとの考えは、14年11月の薬事法大改正につながり、再生医療関連の医薬品などが有効性と安全性の確認で仮承認が得られる仕組みが実現した。原氏は、こうした制度改革が、日本の技術の進歩、新産業の創出に寄与するとともに、世界の企業・人材の集積にもつながるとしている。

【山下 康太】

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