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2019年02月21日 07:03

アダルは中国でどう戦ってきたか? 友利家具新工場設立までの歩み(中)

「日本式」ものづくりが軌道に乗る

旧松江工場のオフィスビル内の様子

 協栄家具の従業員は、アダル独自で採用。前回と同じく武野会長による直接指導のもと、木材の選定(含水率による選別など)に始まり、カット、組み立て、塗装、縫製、上張り、検品に至るすべての工程について、アダル式のものづくりを徹底させた。ラジオ体操、朝礼などの日本式のルーティンも取り入れ、「もの」「ひと」の品質向上に努めた。

 その後、ビジネスは軌道に乗り、日本向けのほか、アメリカ、デンマーク、インド、オーストラリア、シンガポールなどからも受注が舞い込んだ。中国製の家具は、アダル製品よりも低価格だが、明るい色調の商品を打ち出すなどの工夫をした。「中国製ではやれないことをして、自ら市場をつくる」という狙いがあった。

 中国従業員に手ほどきした技術には、武野会長が考案した特許加工技術「斜線ホゾ」も含まれる。この技術は、家具ホゾ(接合部)にいくつもの小さな溝を入れることで、ホゾに沿って充填した接着剤がまんべんなく広がる。接着面積を増すことで、強度を向上できる。アダルの代表的な技術だ。商品の品質管理についても、日本と同じ2万回におよぶ強度試験を導入。「安かろう悪かろう」ではなく、「安くて良いもの」を追求した。

友利家具工場

 07年5月、工場の生産力増強のため、独資会社「上海江州工芸品有限公司(上海松江工場)」を設立。デスクなどの「箱もの」は南翔工場、イスなどの「足もの」は松江工場という上海2工場による生産体制を構えた。総従業員数は170名以上に上った。

 中国での納品の代表例が、極楽湯上海店「碧雲温泉館」だ。極楽湯として初の中国店舗には、日本らしさを表現した組子、トンボ玉を使用した別注家具などを提案した。上海の極楽湯では、家族連れなどが館内で長時間過ごす。1人掛けのイスやソファーなどに複数人が座るなど、通常ではありえない使い方をされることもある。デザインと強度をより高い次元で両立する家具づくりが求められた。松江工場のスタッフが中心となり、諸々の課題をクリアしていった。

上海政府から「工場立ち退き命令」

改装中のショールーム

 松江工場が立地する上海市松江地区は、市中心部から南へ30kmほどの位置にある工業団地だ。アダルが工場建設をした当時は、住居もまばらな田園地帯だった。アダルは、同地区への工場建設に先立ち、上海市政府と50年間の土地利用契約を結んだ。その後、上海市が急速な経済発展を遂げるなか、同市政府は松江地区の用途指定を工業再開発区から商業施設開発区に変更。土地利用権が数倍高く売れると考えたからだ。

 ところが、アダル工場を含むすべての素材産業に対し、同地区からの立ち退き命令が出された。命令の前には、一方的に「送電を止める」と通告されたこともあった。土地利用契約そのものは有効だが、工場利用はダメだという決定だった。

 武野会長は、上海市に設立した協栄家具、江州工芸品、2つの会社の売却を決断。上海市以外の場所での新会社の設立へと舵を切る。2工場の経営は順調で、それなりの利益が出ていた。新たに工場を建設した場合でも、資金繰りに困ることはないという見通しが立った。新会社は、アダルの海外子会社ではなく、アダルと資本関係のない中国企業(提携会社)として設立することにした。設立、建設などの資金は、武野会長個人が用立て、董事長、社長といった要職には、武野会長の身内関係にある中国人をそれぞれ起用するというものだ。

 新会社設立にともない、協栄家具、江州工芸品は廃止。松江工場建物は現在、モダンなオフィスビルに改装され、数十のオフィスが入居している。工場周囲の景色も工場建設当時から変貌。10年の変化の早さには驚くばかりだ。

中国人パートナー張英氏の登用

工場に保管されたままのショールーム備品

 最初に中国に合弁会社を設立して以来、歴代の現地責任者には、アダルから日本人社員を送り込んできた。早くて数カ月、長くても1年程度の赴任で、中国のビジネス環境、慣習などに馴染めず、長続きしなかった。何か問題が発生するたび、武野会長が現地入り。問題解決に奔走し、何とか収束させる。そういうパターンが繰り返されてきた。

 独資会社を設立したころから、武野会長のなかでは「中国人の身内がいない日本人が、中国で商売するのはムリ」という考えがあった。中国人は身内意識が非常に強いからだ。中国人の身内ができてから、中国でのビジネスがうまくいった知人の影響もあった。当時65歳だった我が身を思うと、「いずれ自分が出て行くわけにもいかなくなる」という思いもあった。

 武野会長は中国人のパートナーを募集する。40〜50歳ぐらいで、日本語ができ、仕事を任せられる女性を探し始めた。そして当時29歳の張英氏と出会う。最初は、35歳という年齢差に躊躇したが、最終的に「もう決めたから、社長の彼女にしてください」という彼女の押しに負けた。「若いが、仕事ができる」という期待もあった。2人は同居生活を始める。張英氏は協栄家具に入社。工場作業員として働き始めた。

 張英氏にとって、当然家具づくりは初めての経験だったが、猛烈な働きぶりで、メキメキと頭角を現していく。ほかの中国人社員からの評価も高まっていった。それを目の当たりにした武野会長は「自分の目に狂いはなかった」とヒザを打つ。数年後には、取締役人事部長に抜擢。財務の責任者という重要なポジションを任せた。張英氏は、公私ともに武野会長の真のパートナーになった。新会社の設立は、張英氏あってこその一手だった。

(つづく)
【大石 恭正】

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