2024年04月25日( 木 )

グローバル市場で成長を続ける 国際物流事業パイオニアの強みとは(1)

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西日本鉄道(株) 国際物流事業本部
執行役員副本部長兼営業企画部長
黒飛 茂樹 氏

西日本鉄道(株)は利用運送業者として世界27カ国・地域114都市に海外拠点を展開し、海外企業のM&Aを活用して国際物流ネットワーク体制を拡大している。競争が激しい物流業界で成長を続ける事業戦略や今後の展開について、執行役員副本部長兼営業企画部長の黒飛茂樹氏にお話をうかがった。
(聞き手:弊社調査部部長・鹿島 譲二)

1948年にパイオニアとして航空貨物の取り扱いを開始

 ―西鉄グループの国際物流事業進出の経緯を教えてください。
 黒飛茂樹氏(以下、黒飛) 西日本鉄道(株)は、戦後まもない1948年に連合国軍総司令部(GHQ)の統治下に就航した米国のパンアメリカン航空と代理店契約を締結しました。そして、航空貨物の取り扱いを開始したことが国際物流事業の始まりです。1951年には国際物流の前身の航空輸送部を設置し、戦後の日本が復興していくなかで日本から海外に航空貨物の輸送を行いました。

 さらに71年には初の現地法人を米国に設置し、海外拠点の展開を開始しました。航空輸送では、一般的に緊急性のある貨物や高付加価値の貨物、高価格の貨物を取り扱います。そして市場に新商品を投入する際には、納期に迅速に対応できる航空輸送を行い、シェアが拡大して取扱量が増加すると海上輸送に移ります。時代でヒットするものに合わせて、主力の取扱品目も時計や精密機器、そしてパソコン、デジカメへと変化していきました。

 また85年には海上貨物の輸送分野に進出し、複数の輸送手段を組み合わせて一貫した輸送体制を構築しました。現在の航空輸送の取扱品目は多岐にわたりますが、主力の半導体関連品、自動車関連品、機械関連品で取扱量の6割以上を占めます。なかでも、半導体関連品の輸送需要は伸び代があると見込んでいます。さらに今後は、航空宇宙産業関連品の新たな輸送需要を取り込み、取扱量を増加させたいと考えています。

米中関係の影響に備え新規の需要を取り込む

 ―現在の国際物流事業の状況をお聞かせください。
 黒飛 西鉄グループの2017年度の連結売上高3,751億円のうち、物流事業の売上高は891億円で24%を占めています。なお、物流事業の売上高の90%が国際物流、10%が国内物流です。国際物流事業本部では、国際航空貨物と国際海上貨物の利用運送業を行うフォワーダー業務と、国内の集配業、倉庫の在庫管理業務を行うロジスティックスを実施しています。弊社の航空フォワーダーとしての取扱量は国内第5位。海外を含む西鉄グループの総合フォワーダーランキングでは、全世界で第25位です。

 弊社は貨物輸送の需要がある地域にネットワークを構築し、海外拠点の拡大はスピード感をもって行っています。18年11月現在で、世界27カ国・地域114都市に拠点があります。顧客に日本企業が多いですが、世界的にネットワークを拡大するなかで地場の会社のみならず多国籍企業との取引も増加しています。

 なお、トランプ政権による米中関係の変化により、19年に米国の対中国関税が引き上げられる見込みのため、現在は駆け込み需要で貨物輸送の取扱量が増加しています。米国の対中国関税の引き上げが実行されると、中国拠点での取引に影響します。そのため中国の生産拠点がほかの国に移行する可能性も踏まえて、中国以外の新規の需要を取り込んで取扱量を維持できるように進めています。

(つづく)
【文・構成:石井 ゆかり】

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