旅館業届け出種別で見る福岡市のホテル市場動向
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2019年03月06日 17:35

旅館業届け出種別で見る福岡市のホテル市場動向

要件緩和で開業相次ぐ

 福岡市内で宿泊施設の開業が相次いでいる。その背景にあるのは、訪日外国人観光客―いわゆる“インバウンド客”の増加だ。

 「福岡市の観光・MICE 2018年版(福岡市観光統計)」によると、福岡空港および博多港からの外国人入国者数は年々右肩上がりに増加しており、17年にはおよそ298.3万人を記録した。とくにクルーズ船(外国航路)の寄港回数については、15年から17年にかけて3年連続で200回を突破し、3年連続日本一になっている。外国人の延べ宿泊数については、14年から16年にかけて、三大都市圏(東京・名古屋・大阪)の伸び率が1.43倍、地方部の伸び率が1.74倍なのに対し、福岡市の伸び率は2.25倍となっている。しかし、インバウンド客が増え続ける一方で、「受け入れる宿泊施設が不足している」という声も高まっていた。

 こうした状況を踏まえ、市は2度にわたる旅館業条例の改正を行った。1回目の改正は16年12月1日に施行されたもので、旅館業の種別のなかでも、「簡易宿所」と呼ばれる施設の要件を緩和。これまで旅館業の要件を満たせなかった小さな施設でも宿泊営業を行えるようにした。2度目の改正は18年6月12日に施行され、簡易宿所に限定していた緩和要件を旅館・ホテルにまで広げた。

 条例改正後の宿泊施設の営業許可届け出状況【Ⅰ】を見ると、簡易宿所については、16年までは全51施設だったものが、16年12月に施行された条例改正の影響で、17年は90施設、18年は126施設の届け出許可が実施。この2年間だけで216件増加している。

 また、簡易宿所だけでなく、旅館・ホテルの開業も相次いだ。18年6月12日の旅館業法改正後の届け出状況を見ると、「旅館・ホテル」の開業が圧倒的に増えている【Ⅱ】。法改正により、従来の「ホテル営業」および「旅館営業」が「旅館・ホテル営業」として一本化されたこともあるが、一番の要因は、市の条例改正により、簡易宿所に限定していた緩和要件が旅館・ホテルに広がったことであろう。民泊新法の場合、年間営業日数の上限が180日以内と定められているが、旅館業法上では営業日数の制限がない。建物や設備の要件が緩和されたことで、事業者にとっては、宿泊業に参入する機会やメリットが増えたことも大きいとみられる。

開業ラッシュはいつまで続くのか?

 ホテルの開業ラッシュに沸く福岡市内だが、この状況はいつまで続くのだろうか。【Ⅲ】は、16年以降で市内に設置された「予定建築物のお知らせ」のうち、宿泊施設に該当する物件概要を集計したものである。17年に24件だった宿泊施設の予定建築物は、18年には46件とほぼ倍増。着工から完成までの期間をおよそ1年から1年半と仮定すると、18年に着工したホテルは19年中にほぼ完成を迎えることとなる。

 【Ⅳ】は、19年1月31日現在の福岡市内にある旅館業の営業許可総数である。

 市内には692の宿泊施設があり、最も多いのは簡易宿所で275施設(全体の約39.74%)、次いでホテルが184施設(同26.59%)、旅館・ホテルが141施設(同20.37%)、旅館が92施設(同13.29%)となる。19年1月には、22の施設が営業許可を届け出ており、いずれの施設も「旅館・ホテル」あるいは「簡易宿所」となっている。なかでも、「旅館・ホテル」については、規制緩和にともない、マンションの一室や一部のフロアを宿泊施設として提供することが可能となり、事業者にとっては、宿泊事業への参入機会の拡大が見込める。

 【Ⅴ】は19年1月31日時点での、行政区ごとの宿泊施設分布である。宿泊施設が一番多いのは博多区で395施設(市内全体の約57.08%)。届け出種別ごとに見ると、ホテル100施設(市内全体のおよそ54.34%)、旅館・ホテル71施設(同50.35%)、旅館31施設(同33.69%)、簡易宿所193施設(同70.18%)となり、旅館を除く各宿泊施設で全体の半数以上の割合を占めている。2位の中央区は219施設(市内全体の約31.65%)。届け出種別ごとで見ると、ホテル64施設(市内全体のおよそ34.78%)、旅館・ホテル66施設(同46.80%)、旅館36施設(同39.13%)、簡易宿所53施設(同19.27%)。博多区とならび最もホテルの開業が進んでいる区である。

 博多区と中央区を合わせた宿泊施設数は614施設となり、市内全体のおよそ88.7%にも上る。ホテルの開業ラッシュは、この2つの区によって牽引されているといえよう。19年についても、前年と同推移で営業許可届け出が行われれば、引き続きこの2つの区を中心とした開業ラッシュは続くと思われる。

博多・中洲・天神エリアの宿泊施設の状況

 博多区、中央区を「博多」「中洲」「天神」のエリア別で分類すると、対象エリアにある宿泊施設は全523施設。内訳は博多エリア、天神エリアがそれぞれ190施設、中洲エリアが143施設。なお、各エリアの客室数合計と定員数合計は、【Ⅵ】の通りとなった。

(1) 博多エリア

 宿泊施設の割合はホテル29.47%、旅館・ホテル19.47%、旅館5.26%、簡易宿所45.79%となっている。17年に34件だった簡易宿所の営業許可数は、18年は前年比およそ1.26倍の43件に増加。旅館・ホテルの届け出は18年だけで35件行われている。

 19年1月末時点で届け出が最も新しいのは、博多駅東3丁目にある旅館・ホテル「Condominium KAWAKIYO STAY 503」(事業者:(株)エム・ワイ・ユウ管理(福岡市博多区))で、19年1月16日。最も古い届け出は、博多駅前一丁目にある旅館「司」(事業者:長田アキエ)で、1954年10月21日。

 客室数が最も多いのは、博多区博多駅中央街にあるホテル「博多グリーンホテル2号舘」(事業者:(株)博多グリーンホテル(福岡市博多区))で505室。同ホテルの定員数は811で、こちらも博多エリアのなかでは最も多い。

(2) 中洲エリア

 宿泊施設の割合はホテル17.48%、旅館・ホテル18.18%、旅館6.99%、簡易宿所57.34%となっている。3エリアのなかでは簡易宿所の割合が一番多く、17年に32件だった営業許可の届け出数は、18年は前年比約1.09倍の35件となっている。

 届け出が最も新しいのは、博多区住吉4丁目にある簡易宿所「GRAND BASE 博多住吉」(事業者:(有)元創(久留米市))で、19年1月30日。最も古い届け出は、博多区冷泉町にある旅館「山本旅館」(事業者:山本進)で、52年7月9日。

 客室数が最も多いのは、博多区住吉1丁目にある「キャナルシティ・福岡ワシントンホテル」(運営業者:WHG西日本(株))で423室。定員数が最も多いのは博多区住吉1丁目にある「グランド・ハイアット・福岡」(運営業者:(株)エフ・ジェイホテルズ)の744名。いずれのホテルもキャナルシティ博多でのショッピング・飲食・観劇などが楽しめるほか、中洲へも徒歩5分と好立地にあることが特徴である。

(3) 天神エリア

 宿泊施設の割合はホテル31.05%、旅館・ホテル31.58%、旅館14.21%、簡易宿所23.16%となっている。ホテル、ホテル・旅館、旅館の営業許可届け出数は3エリアで最も多い。また、旅館・ホテルに関しては18年に54件の届け出があり、こちらも3エリアのなかで一番多い。

 届け出が最も新しいのは、中央区大名1丁目にある旅館・ホテル「mizuka Daimyo 4 - unmanned hotel」(事業者:コロンビアホテル&リゾーツ(株)(東京都渋谷区))で、19年1月31日。ホテル名にある通り“無人ホテル”で、支払いはクレジットカードのみ、同日に同じ施設ビルの1階から4階を同社が事業者として届け出許可を取っている。最も古い届け出は、中央区大名2丁目にあるホテル「西鉄グランドホテル」(事業者:(株)西鉄ホテルズ)で、69年4月17日。市内にある西鉄系列のホテルのなかでは、最古のホテルとなる。

 客室数が最も多いのは、中央区渡辺通1丁目にあるホテル「ホテルニューオータニ博多」(事業者:(株)ホテルニューオータニ九州)で392室。定員数は792名で、天神地区では最大規模だ。

【長谷川 大輔】

※ データは2019年1月31日時点(【Ⅱ】を除く)

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