2024年04月29日( 月 )

豊洲市場使用禁止申立に最高裁の判断は?

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東京都豊洲市場の違法建築に関して、仲卸業者の代表5社が市場の使用禁止を求めた申立は、東京地裁・東京高裁で却下されたが、最高裁判所に特別抗告されていた。{東京高等裁判所平成30年(行ス)第74号豊洲市場違法建築物使用禁止要請仮の義務付け申立}
3月5日、最高裁判所は「抗告を棄却する」と決定した。今回の最高裁の決定について、同裁判の建築構造分野において 原告(申立人)の技術支援を行っている構造設計一級建築士、仲盛昭二氏に話を伺った。


-今回の最高裁の決定は、どのような意味をもつのでしょうか?

判決文 ※クリックで拡大

 申立人(仲卸業者)の代理人である 武内更一弁護士・藤田城治弁護士によれば、最高裁の決定は、都知事の「通知」「要請」は、行政訴訟の対象たる「行政処分」に当たらないとした一審及び高裁の判断を、「是認」できると断ずる内容ということでした。また、最高裁の決定には「なぜ是認できるのか」「申立人が主張する理由を認めない理由」についての説明はないとのことでした。

-今回の最高裁の決定は、非常に行政(東京都)寄りの決定との印象を受けますが?

 最高裁も 地裁や高裁と同様、行政への忖度があったとしか考えられません。豊洲市場が稼働している現在、豊洲市場を使用禁止とすれば、都民の生活や販売業者や飲食店などに深刻な影響を与えます。東京都が そのような大混乱を避けたいのは当然であり、裁判所が東京都に忖度することは、同じ体制側の視点とすれば国民感情としては残念なことではありますが、あり得ないことではないと思います。

-社会の混乱を招きたくないという行政側の考えは理解できますが、違法建築物を違法な状態で放置するというのは、行政や司法としてあるまじき行為だと思いますが?

 原告や私たちが指摘していることは、「豊洲市場の建物が建築基準法令を満足しておらず、大地震が発生した場合の安全性を確認できない違法建築物である」ということです。大地震により市場の建物が倒壊した場合の人的被害・物的損失・市場機能のマヒという重大な事態と、市場をいったん使用禁止にして是正措置を講じることを比較してみれば、採るべき道は明らかです。人命こそ最優先すべきです。

-先日、政府の地震調査委員会は、東日本の日本海溝で発生する地震の確率を見直し発表しました。今後30年以内の地震発生確率は、宮城県・岩手県・青森県沖ではマグニチュード7.0~7.5程度の地震で90%、茨城県沖で80%と、衝撃的な発表でした。首都圏で今後30年以内の大地震の発生確率も70%と言われています。東京都や裁判所の対応からは、都民の命を守るという意識は微塵も感じられないのですが・・・。

 東京都や裁判所に 都民の命を守る意識があるかどうかは、私の知るところではありません。ただ、これまでの経緯を見る限り、都民の命を守るという意識は低いと言わざるを得ないと思います。東京都には、行政の本来の使命を思い出していただきたいと思います。

-豊洲市場の建築基準法令違反について、都議会で議題になっていないようですが、なぜでしょうか?

 私にも某都議会議員から連絡があり、可能な範囲で技術資料を提供しましたが、都議会でどう活用されたのか、報告もいただいていません。このような状況を見る限り、都議会議員までもが、何かに忖度しているのではないかと考えざるを得ません。これは、都民にとっては、決して望ましいことではないと思います。

-豊洲市場の違法建築の元凶である日建設計は、全国で公共建築物を中心に多くの物件の設計を手がけています。豊洲市場と同じような違法な設計は行われていないのでしょうか?

 設計事務所に限らず、どの企業でも、新入社員は先輩や上司の仕事のやり方を踏襲します。それ故、自動車や鉄鋼、建築などさまざまな分野の企業において、データ改ざんなどが多数発覚しました。恐らく日建設計でも先輩社員が犯した法令違反を後輩社員が踏襲してきたはずなので、日本全国に豊洲市場と同様の違法建築物が存在していると考えることが妥当ではないでしょうか。日本最大手の設計事務所である日建設計が手がけた物件の数は天文学的な数に上ります。これらの建物について、豊洲市場のように訴訟となった場合、各地の裁判所でどのような判断が示されるのか、関心をもっています。各地の裁判所が、今回の最高裁の決定に右に倣えの判断を示すようであれば最早、我が国の三権分立は崩壊したといえるでしょう。

-カルロス・ゴーン氏の事件でもわかるように、民間人であれば たとえ世界的な経営者であっても100日以上も拘留されるのです。一方、違法な設計を行った日建設計は、なぜおとがめなしなのでしょうか?

 それは、日建設計の違法な設計を見逃したのが東京都だからです。そもそも両者は長い歴史のなかで深い関係を築いてきました。市場問題プロジェクトチームの会議において 構造設計上の問題点が議題になった際、東京都は火消しに躍起になり、問題提起した委員の発言を封じる暴挙に出たほどです。それほど 東京都としては触れられたくない問題だったということです。

-今後、この裁判は どう進んでいくと考えられますか?

 東京地裁も東京高裁も最高裁も、具体的な審理に踏み込まず、訴えを却下することを念頭に置いているように思えます。それが行政を守る道なのでしょう。しかし、日本国憲法は三権分立を謳っています。司法自らが、憲法を否定するようであれば、司法が 社会秩序を乱しているという恐ろしい状況になります。司法には、行政に忖度することなく、公明正大な判断を示していただきたいと思います。

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