2024年04月20日( 土 )

M&A駆使し売上高1,000億円に挑戦 物流業に正当な評価を(前)

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福岡運輸(株) 代表取締役社長 富永 泰輔 氏

冷凍輸送の大手、福岡運輸(株)は国内初の冷凍トラックを開発したことで知られる。6年前に就任した富永泰輔社長は創業者の孫で5代目社長になる。就任以来、M&A(合併・買収)と積極的な設備投資で事業を拡大、売上高1,000億円へ向け全国展開を加速している。トラック運送業界は深刻な人手不足で、需要に対応しきれない状況。富永社長は「成長の足かせになりかねない」と危機感を深めつつ、「働く人の待遇を改善することが人手不足解消の最大の方策」と訴える。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

会社を成長させる

 ―いま、保有トラックは何台ですか。

 冨永泰輔社長(以下、富永) グループで合計約600台です。九州では大手ですが、売上規模(グループ計約450億円)に比べると少ないと思います。グループ企業で常温物流を手がける福岡運輸システムネット(株)は100億円を超しますが、利用運送なので保有台数は10台足らずです。運送業界は多重構造で、自社だけで仕事をさばくことはできません。忙しくて車が不足する時は他社にお願いする。結果的に傭車比率が高くなる。

 ―就任以来、積極的にM&Aを手がけていますね。

 富永 これまでに大小合わせて6件です。ビジネスをする以上、会社を成長させていかなければやる意味がありません。売上も利益も伸ばしていきます。会社が大きくなっていかないと中身も良くならない。会社が成長していけば従業員も仕事にやりがいを感じ、自ずから成長していくはずです。M&Aは我が社の事業戦略の大きな柱に位置づけています。

 ―2016年1月に買収した長崎県諫早市の北松通運(株)がM&Aの第1弾でした。100台近く保有し県内では比較的大きな会社ですね。

代表取締役社長 富永 泰輔 氏

 富永 親会社の野母商船(株)が非中核事業を切り離すというので手を上げました。同じ食品を扱っており、当社は冷凍・冷蔵、北松は野菜が主体で、繁忙期が異なるので乗務員の手当などで相乗効果を出しやすい。野菜の輸送技術も魅力でした。

 我が社はそれまで長崎県に拠点がなかった。地方では拠点を新しく整備するより、地域に根ざした企業の知名度や設備、人的資源を取り込んだほうが効率的です。ですから、社名は変えていません。私が代表取締役を兼務していますが、実際の経営は地元に任せています。トラックのデザインもそのままです。これらはその後買収した会社も同様です。

再生案件はやらない

 ―M&A案件というと経営が傾いた会社が多い。実際に買収してみると予想以上に内容が悪かったという事例も少なくありません。

 富永 再生案件には手を出さないのが基本です。おかげでこれまで買収した6社には難しい会社はありません。北松通運のように本業に経営資源を集中したいというものや、後継者がいない、といったケースがほとんどです。もちろん、なかには「助けてくれ」という相談ももち込まれます。その場合は内容をよく精査しますが、現在まで再生案件はありません。

 ―昨年9月グループに入った青森県の(株)八洲陸運も146台をもち、東北では中堅の企業ですね。

 富永 我が社はそれまで東北では盛岡市までしか拠点がなかった。八洲陸運がグループに加わったことで当社の盛岡営業所とシナジー効果を発揮し、東北での低温輸送のシェア拡大を狙っています。

全国で勝負する

 ―グループ売上高1,000億円が目標ですか?

 富永 いや、内心ではもっと高いところに目標を置いています。私はいま44歳ですが、65歳までに1,000億円は無理なく達成できる数字です。少なくとも現役の間に達成しておかなければならなりません。

 トラック運送事業で生き残るには2つの道しかありません。1つは地域でナンバーワンの会社になること、もう1つは全国展開することです。我々は後者を目指し全国で勝負します。M&Aを進めるのもその一環で、全国の主要都市に配送拠点を配置し顧客ニーズに迅速かつ効率的に対応するのが目的です。事業拡大には自力だけでは限界があります。

 ただ、トラック運送業者は全国に約6万社あり、輸配送を融通し合うなど横のつながりが強いです。仕事を奪う、運賃競争をするなどの乱暴なことはしません。あくまでソフトランディングが基本です。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡市博多区空港前2-2-26
設 立:1956年10月
資本金:1億円
売上高:(18/3)214億2,600万円

<プロフィール>
富永 泰輔(とみなが・たいすけ)
1974年11月18日福岡県生まれ。98年東京大学経済学部卒。平沼赳夫経済産業相の秘書を2年務めた後、98年4月福岡運輸(株)に入社。取締役、常務、専務を経て2010年6月代表取締役社長就任。グループ企業である(株)福岡運輸ホールディングス、福岡運輸システムネット(株)などの代表取締役を兼務。

(中)

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