2024年04月27日( 土 )

水素自動車は普及するのか?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 最近韓国政府は水素社会の実現を目指し、さまざまな政策を発表している。そのなかでも、水素自動車の普及を促進すべく、補助金の増額、各種規制の撤廃などを積極的に進めている。しかし、一方では、そのような政策の妥当性について疑問を呈する声も多い。今回は水素自動車が普及するには、どのような課題を克服しないといけないかを取り上げてみよう。

 水素自動車(FCV)とは、ガソリン燃料の代わりに水素を燃料として走る自動車である。水素自動車は電気自動車とともに、環境に優しく、将来的に普及が見込まれている。水素自動車には燃料電池が使われているが、燃料電池とは、バッテリーのように電気をためておく装置ではなく、水素と酸素を化学反応させて電気を継続的に発生させる発電装置である。

 燃料電池は2つの電極とその間に水素イオンが通過できるようにした電解質膜で構成されている。1つの電極に水素を、もう1つの電極には酸素を供給する。水素が供給された電極では、水素分子が水素イオンと電子に分離され、水素イオンは電解質膜を通過し、酸素と結合し、水となる。この過程で電気を発生させるのが燃料電池である。

 電気自動車は航続距離の問題と、充電時間の問題を抱えている反面、水素自動車はそれを解決したということで有望視されているが、現状はどのようになっているのだろうか。当初の政府の計画では2020年度の韓国国内の水素自動車の普及台数は200万台だった。しかし、2020年を来年に控えた現時点で水素自動車の普及は1、000台を下回っている。今回、韓国政府は2022年の目標を65,000台に再設定した。また、水素ステーションも、2020年までに2,800カ所にするという計画だったが、実際は全国に15カ所しかない。現在15カ所の水素ステーションを2019年までに80カ所に、2022年までには310カ所にするという計画を今回打ち立てている。

 確かに、水素自動車の航続距離は600km以上で、充電時間は5分くらいしかかからないので、その点においては電気自動車より優れている。しかし、この優位性もバッテリー技術の進歩で、だんだん薄れつつあるし、水素ステーションの設置に莫大な費用がかかることと、水素タンクの空間効率が悪いなどが普及の障害になっている。さらに今、世界的には電気自動車の普及に向けて一気に動いているような状況だ。

 もちろん複数の自動車メーカーで水素自動車の研究はしているものの、商品としての将来性についてはまだ結論が出たわけではない。このような状況のなかで、なぜ韓国政府は水素自動車にかけようとしているのだろうか。その背景として、自動車業界が内需と海外輸出の停滞で、深刻な危機的状況に陥っていることが挙げられる。韓国経済を支えてきた1つの柱だった自動車産業が揺れており、何とか対策を打たないといけない状況だからだ。

(つづく)

(後)

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