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2019年03月28日 16:44

RC造と木造、素材同士が「助け合う」究極の工法を目指して

 「いろいろなことを考えるのは好きなんです。ただし考えるだけでは『ただの自己満足』。商売をするのであれば、売れなければならない。だから、売れるものを考えようとしている」――そう話すのは、(株)福岡技建工業(福岡市博多区)の迫野譲二代表取締役社長。気が付いたらすぐメモが取れるよう、車の中、書斎、寝床など、迫野社長の周りの至るところにメモを置いているという。

 同社は、RC造がもつ頑丈さと、木造がもつ心地よさ・温かみを感じられる独自の工法を開発・特許申請した。その工法は、いまからおよそ5年前に迫野社長が構想を練り、研究を重ね、2018年9月に特許を取得したものだ。


工期やコストを抑えつつ、シンプルな作業工程、多能工を実現

迫野 譲二 社長

 今回開発・特許を取得した工法は、今からおよそ5年前から構想を練っていた。「当初はパネル工法のほうが木材が少なく済むと思っていたが、モデルハウスを建てながら研究した結果、逆に手間がかかることがわかった。それならば、日本にある在来のプレカット技術を生かしつつ、丈夫なつくりで短い工期でできる工法はないものか」――試行錯誤を重ね、2018年9月にようやく特許を取得したのが、今回開発した工法である。

 工法の特徴は、一般的なRC造よりも工期やコストを抑えつつ、RCの持つ頑丈さはそのままに、内装は木造の心地よさ・温かみを感じられること。基礎ができあがった段階で通常の木造建築と同じく1階部分の建て方を行う。この際、柱、梁、桁を組み、軸組の外側にシージングボードを張るわけだが、これがそのまま内側の型枠になるのだ。2日目に軸組の外側に1階部分の配筋、3日目に外側の型枠を設置、ここまでがスムーズにいけば、4日目以降にコンクリートを打設することができる。

本社外観

 およそ3日でコンクリートが固まると仮定すれば、1階部分に要する工期はおよそ1週間。翌週には2階部分の工程に入れるとともに、1階部分の内装の造作にも着手できる。その際、内側の型枠を外さずにそのまま利用することができるため、型枠を外す手間を省くのと同時に、木の持つぬくもりや温かみをそのまま生かすことができる。基礎部分については建築基準法に基づいた鉄筋構造のため、構造計算などもそのまま受け継いでおり、耐震性はもちろん、雨漏りなどの心配もクリアしている。

 従来の木造建築であれば、職人による技術は必須。しかしこの工法では、そうした技術は基本的には必要ない。プレカットを組み立て、図面通りに配置し、ボルトを打つというシンプルな作業。型枠に関しても、所定のところに穴が開いているため、別の現場で同じ工法を用いた際の道具を用意すれば、穴に入れていくだけという簡単な作業で済む。迫野社長は「この工法だと、組み立てるのにそこまで技術を必要としないので、型枠職人が1人、ほかを合わせて5人がいればできるのでは」と話す。5人一組のチーム制にすることにより、多能工システムを取り入れることができるほか、職人としての養成期間が短くなるメリットもあるという。

完成した建物はRC造と木造の良さを両立

本社内装

 この工法を用いた建物が間近で見られるのが、同社の本社と、南区的場にあるモデルハウス。いずれの建物にも、柱や天井部分など随所に木の造作がみられ、その工法が生かされていることがわかる。

 本社はもともとあった工務店の木造建築物を改装してつくられたもの。外観はしっかりとしたRC造となっており、耐久性、耐震性は問題ない。元の建物が木造だったということもあり、内装には木材がふんだんに使われていることから、RC造のような無機質さを感じさせないものとなっている。

 モデルハウスは、福岡外環状道路沿いにあり、壁にぶら下がっているキングコングが目印の建物。中に入って驚いたのは1階部分。この工法独自の木の温かみが感じられるのはもちろん、オープンキッチン、バーカウンター、薪ストーブなどが置かれていた。同社の不動産企画・総務担当の迫野琢磨氏は、「モデルハウスですので、お客さまにとってこんなのがあったらいいなという要望をたくさん詰め込んでいます」と話す。そしてこの建物の目玉部分は3階部分。何と屋上にプールが付いているのだ。「庭がない代わりにこうして屋上のスペースを活用することができます。そしてこのプールはうちの社長の夢ということで付けてみましたが(笑)、RC造なのと、その分コンクリートの厚みをもたせているので、水漏れや雨漏りの心配はまったくありません」とのこと。室内は断熱材による効果で日中も快適な温度が保たれており、幹線道路沿いにありながらも、車の騒音などはとくに気にならず、防音対策もしっかりと施されているようだった。

新工法のキーワードは「助け合い」、ゆくゆくはFC方式により全国展開を

モデルハウス外観

 迫野社長自身、特許を申請するにあたり、この工法の問題点を自分なりに探したとのこと。しかしこれと言って思い当たる問題点はなく、構造設計事務所にも同様の質問をしたが、「良いところはたくさんあるが、悪いところはとくに見当たらない」という返答がきたという。「手前味噌かもしれませんが、それくらい完成されている工法だと思います」と迫野社長は語る。
コンクリートが固まるまでの間は、内側に張った木造の型枠がしっかりと支えてコンクリートを固める手助けをしてくれる。コンクリートが固まれば、やがて地震や台風などから家をしっかりと守ってくれる基礎となってくれる。内装に至っては木造がもつぬくもりや温かみが、鉄筋コンクリートにない部分を補ってくれる。

モデルハウス内装

 木材とセメントそれぞれの素材がもつ強み・良さを生かし、お互いに助け合うハイブリット工法。現在、この工法のように、それぞれが助け合い、支えあってできているという意味の名前になればとのことで、社内でいくつか名前の候補を選定している。

 現在、この工法を基に年間20棟の自社受注を予定しているが、迫野社長は、この工法を用いて工事を独占しようとは思っていないそうだ。「まだ構想段階ではあるが、将来的には中小規模の工務店を対象に、FC方式によるパートナー募集準備を進め、全国展開を進めていきたい。これを起爆剤として、日本の工法が変わってくれればいいなと思っています」と話している。

会社名:㈱福岡技建工業
本社住所:福岡市博多区浦田1-28-68 モデルハウス:福岡市南区的場2-14-9
TEL:092-503-6158 FAX:092-503-7168

【長谷川 大輔】

 

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