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2019年04月18日 14:36

【総統選挙で正念場を迎える台湾の命運】「台湾のトランプ」は権力を握るか~追い込まれる与党・民進党

 台湾・鴻海グループの郭台銘董事長が17日、台湾総統(大統領)選挙に出馬すると発表した。「シャープ」を買収し再建中のワンマンオーナーである。野党・国民党の予備選に出馬し、同党の総統候補を目指す有力馬である。経済に強い「台湾のトランプ」に擬せられている。

 昨年の統一地方選挙で大敗した与党・民進党は、蔡英文総統が再出馬を目指しているが、国民的な支持が弱い。彼女より人気が高い元行政院長(首相)の頼清徳氏も、同党候補に名乗りを上げている。来年1月に行われる台湾の次期総統選挙は、21世紀台湾の命運を左右する情勢になってきた。

 私は3月18日のNetIBNEWSで、以下のように予測した。

 「台湾に『反日政権』が誕生する日/来年の総統選挙をめぐる危険な予感/習近平の台湾戦略を警戒せよ」

 台湾情勢は私の懸念した通りに動いてきた。郭氏には17日、台北の国民党本部で「栄誉賞」が贈られた。今後、党内予備選挙を経て、同党総裁候補にになるかが決定される。ほかにも候補がいるが、有力馬であるのは間違いない。

 「思い切った決断である」。経済界では台湾の内外から驚きの声が挙がっている。鴻海グループに有力な後継者がおらず、出馬のハードルは高いと見られていたからだ。

 郭氏は戦後、中国大陸から台湾にわたってきた「外省人」の息子だ。1950年、台北で警察官の父親の長男として生まれた。学歴は高校までしかない。その後、工場や運送会社などで働いていた。25歳で母親から借りた10万台湾ドルを元手に、小さなゴム工場を立ち上げた。テレビの部品やコンピューターの部品の製造を手がけながら、企業を大きくしていったという立志伝中の人物である。エネルギッシュで、精力絶倫の私生活から「台湾のチンギスハーン」との異名もとった。

 「台湾のトランプ」への変身願望の背景は、中国の習近平国家主席から「古き友」と呼ばれるほど、親中的な政治的バックグラウンドがある。明らかに中国から大歓迎される「国民党の人材」なのである。

 前回も書いたように、台湾の総統選挙は、国民投票による一発勝負である。民主化以降、1996年から「総統民選」の直接が始まり、李登輝(国民)、陳水扁2期(民進)、馬英九2期(国民)、蔡英文(民進)と続いてきた。李登輝氏は間接選挙時代から数えると2期務めている。蔡英文氏も2期目を狙いたいところだが、最近の世論調査では、敗色が濃い。

 台湾の総統選挙にはジンクスがある。直近の統一地方選挙で負けた政党は、総統選挙でも負けるというジンクスだ。これが5回中、4回を占めている。例外は2012年の総統選挙の時だけである。地方選の結果が接戦だったのだ。

 昨年の統一地方選挙で、国民党の総得票数は約610万票であり、民進党は約490万票だった。つまり、民進党の政権維持は、きわめて厳しい状況なのである。

 国民党のほかの総統選候補者としては、前回選挙で敗れた朱立倫氏(前新北市長)がいる。彼は従来は、次回も本命候補だった。高雄市長・韓国瑜氏は市長になったばかりだが、国民的な人気は高い。郭氏は実は、台湾では人望がない。これは彼が商売で得た利益を台湾に還元していないという非難にもとづくものだ。

 民進党内での候補者選出は、郭氏の出馬という想定外の事態を受けて、当初4月中旬に予定されていたスケジュールは、さらにベタ遅れになるだろう。後出しジャンケンのほうが有利だからだ。

 こういう事態を、台湾の有権者はどう受け止めているのか。僕の問い合わせに台湾の友人は日本で起きないことが台湾ではいろいろ起きる」と当惑気味だ。

 前回レポートで警告したように、日本国内では「台湾=親日国家」との思い込みがまかり通っている。郭氏の出馬表明は、日本の主要紙でも大きく報道された。だが、選挙結果がどうなるかは予測できない。郭氏出馬という新たな要因を加えても、依然として与党・民進党が不利という情勢は変わらない。

 それでいいのか。

<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)

 1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。

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