2024年05月27日( 月 )

美しいまちづくりを推進する景観法と景観条例

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 戦後、急速な都市化のなかでのまちづくりは、経済性や機能性を重視したものであった。しかし、2003年に「美しい国づくり政策大綱」が策定され、04年に「景観法」が制定されて以降は、全国的に環境や景観を重視したまちづくりが推進されている。福岡市における景観への取り組みを紹介していく。

景観法の制定と景観計画

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 高度成長期の日本では、さまざまな建築物・構造物が次々に建てられたが、まちづくりにおいては、良好な景観や環境よりも経済性や効率が優先されてきた。
 国土交通省は、2003年に策定した「美しい国づくり政策大綱」のなかで「国土づくり、まちづくりにおいて、経済性や効率性、機能性を重視したため美しさへの配慮を欠いた雑然とした景観、無個性・画一的な景観等が各地で見られる」「美しさへの配慮を欠いていたという点では、公共事業をはじめ公共の営みも例外ではなかったと認識すべきである」と述べ、「我が国の美しい自然との調和を図りつつ整備し、次の世代に引き継ぐという理念の下、行政の方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切ることとした」と宣言した。
 これを受けて、良好な景観を実現するために04年に制定されたのが「景観法」だ。ただし、景観法自体は直接的に景観に関する規制を行う法律ではなく、景観行政団体(都道府県や政令指定都市、一部の市町村など)が景観に関する計画や条例をつくる際に根拠となる法制度である。つまり、商業地域と歴史的な観光地では目指す景観が異なるため、各地域の特徴に沿ったかたちで具体的な制度・条例は各地域の判断に委ねられているのだ。
 景観法が制定される以前から、各地の状況に応じて景観条例などを定めている自治体はあったが、景観法の制定によってそれらの条例が実効性・法的強制力を持つことになった。
 景観行政団体は、良好な景観を保全する必要があると認められる区域について、景観法に基づいて「景観計画」を定めることができる。景観計画には、景観に関するまちづくりを進める基準として、建物の形態意匠(デザイン)の制限や壁面の位置、色の規制などが設定されており、景観計画が適用された区域を「景観計画区域」という。
 景観計画区域では、建物の新築や改築などを行う際に景観行政団体の長に届出が必要で、計画の基準を満たしていない場合、勧告や変更命令を出されることがある。

福岡市における景観への取り組み

 福岡市では、1987年に「福岡市都市景観条例」、88年に「都市景観形成基本計画」を策定し、福岡らしい景観を目指す取り組みが始まった。
 12年には、景観法に基づいて「福岡市景観計画」を策定するとともに、福岡市都市景観条例を一部改正。景観法に基づく届出対象行為などに関する規定を定めて具体的な景観形成方針、景観形成基準を示すことで、魅力ある都市景観づくりを推進している。
 福岡市は市内全域が景観計画区域に指定されており、一定規模以上の建築・工作物の新築や増築、回修などを行う場合、あらかじめ福岡市地域まちづくり推進部都市景観室への届出が必要になっている。
 福岡市の景観計画区域は性質に応じて6種類のゾーンに分かれており、ゾーンによって景観形成方針や基準、届出の条件が異なるため、事業者はその違いを確認しておく必要がある。
 ゾーンのなかで、とくに事業者が注意しておきたいのが、16年10月1日に施行開始されたばかりの「歴史・伝統ゾーン」。施行前の建築物の届出対象規模は「高さ31m、または延べ面積10,000㎡」だったが、施行後は「高さ15m、または延べ面積1,500㎡」となった。また、景観形成方針として歴史資源と周辺の街並みへの配慮が求められるようになっている。
 届出は行為開始の30日前までに行う必要があり、届出後30日間は行為に着手できない点にも注意が必要だ。
 また、市を代表する地区や良好な景観の形成を図るべき7つの地区は、「都市景観形成地区」として、地区ごとに基準が細かく設定されている。
 たとえば、御供所地区では、建築物の高さの基準が12m、20m、25mと地区内だけで3種類設定されている。はかた駅前通り地区や天神(明治通り・渡辺通り)地区では、建築物の低層階は可能な限り店舗やサービス施設など、不特定多数の人が利用できる用途にする必要がある。ほかにも、自動販売機を直接通りに面して設置してはならないなどの制限が設けられている。
 都市景観形成地区内での建築物、工作物の新築増築、改築、移転、概観や色彩の変更などの行為を行う際は、規模にかかわらず、すべて届出を行う必要がある。
 都市景観室によると、都市景観形成地区の建築基準などは、各地区でまったく別のガイドラインになっており、市が公表するガイドラインでわかりにくい場合は、都市景観室まで問い合わせることを勧めている。


 福岡県全体では、政令指定都市の福岡市と北九州市以外にも、太宰府市や柳川市、宗像市といった観光地などが景観に関する条例を制定している。
 景観に関する基準は地域によって大きく内容が異なる。事業者はすべてを把握することが望ましいが、事業で関わる地域に景観条例があるかどうかを確認するだけでも、作業の効率化につながるだろう。

【犬童 範亮】

 

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