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2019年05月07日 14:39

パイオニアの惨状!中国資本に身売り

 日本企業が次々と中国資本に吞み込まれていく。オーディオやカーナビなどこれまで数々の「世界初」を生み出してきたパイオニアが、香港の投資ファンドに身売りした。「技術」にとことんこだわってきた名門メーカーは、なぜ沈んだのか。

香港のファンドが1,020億円で買収

 パイオニアは3月27日付で東証一部上場を廃止になった。1961年に上場してから58年。90年にはレーザーディスクなどの競争力が評価され、株式時価総額は1兆円を超えていたが、株式の最終取引日の26日の株価は65円だった。

 パイオニアは1月25日、東京都内で開いた臨時株主総会で、香港の投資ファンド「ベアリング・プライベート・エクイテイ・アジア」(BPEA)傘下に入る議案を承認した。

 BPEAはこの買収に1,020億円を投じる。第三者割当増資により520億円を出資するほか、すでに融資している250億円については債務の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)を行う。さらに既存の株主から250億円で買い取り、完全子会社した。

 主力の車に搭載されるカーナビゲーションは、強烈な逆風にさらされた。スマートフォンがカーナビの機能を代替できるようになったからだ。パイオニアのライバル、アルパインは上場を廃止し、親会社のアルプス電気と経営統合してアルプスアルパインを発足させたほか、日立製作所の子会社だったクラリオンは仏自動車部品大手フォルシアに買収された。

 BPEAに身売りしたパイオニアは、国内外のグループ従業員約2万人のうち3,000人を削減。今後は、地図データや人工知能(AI)を組み合せた自動運転向けのセンサーに活路を見出す考えだという。

 輝かしい「技術」を次々と生み出してきたパイオニアは、なぜ失速したのか。その歴史を振り返ってみよう。

創業者と“中興の祖”の確執

 創業者は松本望氏。神戸市で牧師の次男に生まれ、望の名前は聖書に由来する。丁稚奉公として数々の店を渡り歩く。松本氏の運命を決定づけるスピーカーと出会うのは、東京の電機商で働いていたときだ。

 米国製のダイナミックスピーカーに聴き惚れて、自分の手でスピーカーをつくりたいと一念発起。1938(昭和13)年に「福音商会電機製作所」を設立。親譲りの敬虔のクリスチャンだった松本氏は社名に「福音」とつけ、スピーカーの商標は開拓者を意味する「パイオニア」とした。

 パイオニアが音響メーカーとして認知されるようになるのは1962(昭和37)年に世界初のセパレート型ステレオを発売してから。オーディオブーム全盛時には、山水電気、トリオと並び「オーディオ御三家」(サン・トリ・パイ)と呼ばれた。

 松本氏は外部から人材をスカウトした。第1号が東芝出身の石塚庸三氏。71年に二代目社長に就いた石塚氏は音響機器メーカーとして歩んできたパイオニアの事業転換を図る。79年、レーザーディスク(LD)を中心とした映像分野にいち早く事業を広げた。

 「絵の出るレコード」といわれるレーザーディスクの盟主である日本ビクターが開発したVHDの規格を国内の主要メーカーが支持し、パイオニアは絶対的な不利な状況に追い込まれた。しかし、二代目社長の石塚氏は、創業者の松本望氏をはじめとする社内の反対を押し切り、販売に踏み切った。

 レーザーディスク事業は大成功。石塚氏が社長時代にパイオニアは急成長し、石塚氏は“中興の祖”と呼ばれるようになった。石塚氏がスター経営者としてマスコミの寵児になったことがオーナーの松本氏にはおもしろくなかったようだ。やがて両者の確執が表面化。社内抗争の心労から、石塚氏は82年に出張先のソウルで客死した。

薄型テレビで大失敗

 経営は松本家に大政奉還。望氏の長男、松本誠也氏が社長に就いた。パイオニアの技術陣はスカウトしてきた外国人部隊だ。62年の世界初のセパレートカーステレオをはじめ、75年のコンポーネントカーステレオ、84年のカーCDプレーヤーの発売も世界初だ。86年に国内市販カーオーディオに新ブランド「カロッツェリア」を採用、世界のトップの技術とシェアをもつ企業に成長した。

 90年にGPSカーナビゲーションシステムを世界で初めて市販し、97年にはDVDカーナビゲーションシステムを発売。99年のDVDレコーダー、2006年の50V型フルHDプラズマモニターの発売も世界初だ。

 パイオニアの第二期黄金時代は、創業家一族の伊藤周男氏が4代目社長だった頃だ。97年のプラズマテレビ発売は画期的だった。主要部材の内製化を進めるため、自社のパネル工場も山梨に立ち上げた。伊藤周男社長は「オーディオ機器メーカーのイメージから脱皮する」と宣言し、デジタル家電を軸に年商1兆円突破を目指した。

 あくまで高級品のニッチ市場を目指したものだったが、その認識は甘かった。ニッチ市場はなかったのだ。薄型テレビブームが巻き起こした価格競争の前に、資金力も販売網もないパイオニアは大敗した。

 “中興の祖”と呼ばれた石塚氏は映像に足を踏み入れた後も、テレビは御法度だった。「ウチはステレオの中小企業。金喰い虫のテレビに進出したら、間違いなく失敗して会社がなくなる」と関係者に口にしていたという。石塚氏の予言が的中した。

 2009年に6代社長に就いた小谷進氏が、誰もが創業家に気兼ねして言い出せなかったテレビ事業からの撤退を発表した。次の成長分野に位置付けたカーナビはスマホにおされ、失速した。だが、最大の要因は、プラズマテレビへの巨額投資に失敗したことだ。石塚氏がレーザーディスクで成功したから、創業家はプラズマテレビを成功させてみせるという対抗心があだとなったといえそうだ。

【森村 和男】

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