2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

激変する業界・地域環境のなかで タクシーを中核に北九州から全国へ(後)

第一交通産業(株) 代表取締役社長 田中  亮一郎  氏

分譲マンション契約1,000戸超、もう1つの柱・不動産事業

 ――御社ではタクシー事業のほかに、不動産事業も手がけられていますが、こちらを始めたきっかけは何でしょうか。

第一交通のタクシー

 田中 タクシー事業を展開していく過程でM&Aを進めてきたのは先ほどお話ししましたが、同じエリアで2~3社をM&Aしたときに、狭いエリア内に営業所が複数あるような状況も発生しました。そうした営業所を統廃合し、余った土地にマンションなどを建てていったのが、弊社の不動産事業のスタートになります。今では分譲事業本部が中心となって土地の仕入から行い、自社で独自のマンションや戸建などの不動産分譲事業や、店舗・オフィスなどの不動産賃貸事業、さらには不動産再生事業など、不動産に関する事業は一通り手がけています。今では全体の売上のうち、タクシー事業が占める割合が約55%、不動産関連事業が約45%にまでなりましたし、19年3月期は分譲マンションが年間契約ベースで初めて1,000戸を超えました。

 ――現在、福岡県新宮町では、新たに商業施設の開発を進められていますね。

 田中 15年2月に閉鎖された旧福岡ミツカン福岡工場跡地において、JR新宮中央駅の駅前という立地を生かし、約2万4,000m2の敷地面積に分譲マンション「アーバンパレス新宮中央駅前」と商業施設との一元的な開発に取り組んでいます。

 ほかに今、不動産事業で力を入れているのは、賃貸の飲食ビルですね。19年3月期は、大阪や鹿児島、博多、札幌、仙台などで9棟の飲食ビルを購入しました。地方都市になると、電車やバスは早く終わってしまいますので、夜に飲んで帰ろうとする際には、自ずとタクシーを使うケースが多いと思います。そうしたところで、飲食ビルとタクシー事業とのシナジー効果も狙えます。今、飲食ビル(テナント約670戸)およびオフィス・住居を含め約2,000戸では、90%程度の稼働率となっており、弊社の安定収入にも貢献しています。

いまだ高いポテンシャル、北九州市の今後は――

 ――田中社長は、北九州商工会議所の副会頭や(公財)北九州観光コンベンション協会の理事、北九州野球(株)の社長など、北九州市に関係する数々の要職を務めておられます。北九州市のポテンシャルについて、考えをお聞かせください。

 田中 私は、北九州市のポテンシャルは高いと思っています。海もあれば、適度に街ですし、箱モノもたくさんありますので、それらをどのようにうまく活用していくかが、課題ではないでしょうか。ただし、前から言われているように、北九州市にはいまだに“旧五市(門司市・小倉市・若松市・八幡市・戸畑市)”という意識が根強く残っているという弊害もあり、行政としてもこれまでは、旧五市に均等に予算配分しようとしていたのが、1つは大きな問題だと思っています。まちづくりを行っていくうえでは、やはりまず1カ所に集中して進めていかないことには、分散してしまっては意味がありません。

 そのため、たとえば小倉でしたら、まずは中心市街地をちゃんと良くして、そこに人が集まるような仕組みをつくっていこうと、商工会議所でも力を入れて取り組んでいます。そして小倉の活性化がうまくいけば、次はまた別の場所を活性化させていくなど、市内でそうした取り組みを順次進めていかねばなりません。

 もう1つ、北九州市の問題点は、地元の市民が、自分たちの地元の良さをあまり知らないようにも思いますが、これについては、発信の仕方だけでも変わってくると思います。そのため、以前あった(公社)北九州市観光協会を解散させるとともに、(公財)西日本産業貿易コンベンション協会と統合し、17年4月に(公財)北九州観光コンベンション協会として新生させ、北九州の観光事業の推進だけでなく、コンベンションの誘致や支援などを通じて地域の活性化や文化の向上に取り組んでいます。

 今では、JR小倉駅近くにある複合施設「AIMビル」内に、観光コンベンション協会と、商工会議所の産業観光推進室、さらには市の観光課などが同居し、それぞれが“横”の連携を行いながら、まずは地元の人に北九州市の良さを知ってもらうための発信などを行っています。

 10年前に比べたら、集客もインバウンドも増えてきていますし、北九州市も頑張っているとは思いますね。仕事柄、あちこち回っていますが、他所だともう目も当てられないくらい過疎化が進んでいるところもたくさんありますし、北九州市はまだまだ恵まれていますよ。

 ――北九州市はまだ人口も94万人くらいいますし、さまざまなインフラも整っており、たしかにポテンシャルの高さは感じます。

 田中 弊社の社員を他所に転勤させても、しばらくすると「北九州に帰りたい」と口をそろえていうくらい、北九州市は良いまちですよ。ただ、残念ながら、その良さを今は十分に発揮しきれていないように思います。

 たとえば極論をいえば、新幹線や特急列車などで福岡市内へと通勤する、ベッドタウン的なまちづくりの進め方もあると思います。理由はどうあれ、人が住まないことには、まちは発展していきません。であれば、「物価が安い」「子育てしやすい」「老人が住みやすい」「家が安くて広いところに住める」などの北九州の良さをもっと発信するとともに、教育環境の向上や医療・福祉関係の充実などの行政的な施策も進め、北九州の住みやすさなどが認知されれば、北九州市に住む人も増えてくるのではないでしょうか。

 やはり北九州市には、これからもっともっと良いまちになっていってほしいですし、弊社も北九州市に本社を置く企業として、その発展に寄与していきたいと思います。

(了)
【文・構成:坂田 憲治】

<プロフィール>
田中 亮一郎(たなか・りょういちろう)

1959年4月、東京都出身。青山学院大学卒業後、82年4月に全国朝日放送(株)(現・テレビ朝日(株))に入社。94年7月に第一交通産業(株)に入社し、取締役、専務、副社長を経て、2001年6月に代表取締役社長に就任した。北九州商工会議所副会頭や福岡経済同友会副代表幹事、北九州タクシー協会会長、九州タクシー協会会長、全国タクシー協会副会長など、数々の要職も務める。

<COMPANY INFORMATON>
第一交通産業(株)
所在地:北九州市小倉北区馬借2-6-8
設 立:1960年6月
資本金:20億2,755万円
TEL:093-511-8811
URL:http://www.daiichi-koutsu.co.jp

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