2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

激変する業界・地域環境のなかで タクシーを中核に北九州から全国へ(前)

第一交通産業(株) 代表取締役社長 田中 亮一郎 氏

北九州市に本社拠点を構え、タクシーやバス、不動産などさまざまな事業を展開する総合生活産業として、人々の生活を支える第一交通産業グループ。「SDGs(持続可能な開発目標)」などの世界的な潮流のほか、業界を含めた環境が急速に激変していくなかで、同社はどのようなことに取り組み、どのような手を打っていくのか――。グループを率いる第一交通産業(株)・代表取締役社長の田中亮一郎氏に聞いた。

(聞き手:永上 隼人)

第一交通産業(株)代表取締役社長 田中 亮一郎 氏

 

SDGsの推進で女性ドライバー1,000人に

 ――北九州市が「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。田中社長は「北九州SDGsクラブ」の発起人にもなられていますが、今、御社ではSDGsについて、どのようなことに取り組まれていますか。

 田中 弊社が身を置くタクシー業界は、まだまだ女性が少ない業界です。日本全体で34万人のドライバーがいるといわれていますが、そのなかで女性ドライバーはまだ約8,000人しかいません。

 そのため弊社では、SDGsで掲げられている17の目標の1つである「ジェンダー平等を実現しよう」のために、女性を多く採用しようという取り組みを進めているところです。たとえば子育てなどを積極的に支援するために保育所をつくったり、女性用のトイレや更衣室をつくったりなどといった職場環境の改善のほか、女性職員の定着や意見収集のために“女子会”といったような取り組みを行っています。その結果、昨年1年間で新たに100人ほど入り、今は弊社グループには600人の女性ドライバーがいますし、女性の管理職も4~5人います。この女性ドライバーの数を、2〜3年以内には1,000人にまで増やしたいですね。

 このようにSDGsについては、ただ何かやればいいということではなく、会社の業務内容にリンクしたかたちで、実際にそれをやることで会社にプラスになるようなことを、1つずつやっていこうとしています。女性が増えたことで、売上などの業績面が顕著に向上していますし、営業所内も明るくなりましたね。いろいろな良い影響が、少しずつ表れてきているように思います。

モビリティ革命が進むなかタクシーが担うべき役割

 ――全国一の保有台数を誇るなど、御社の主力といえるタクシー事業ですが、これまで多くのM&Aを手がけることで、事業を拡大されてこられていますね。

 田中 タクシー事業では現在、北は北海道から、南は沖縄まで全国34都道府県に200カ所以上の営業所を構え、9,000台の営業車両を保有しています。これは主にM&Aによってエリアや規模を拡大してきており、私が社長になってからでも200社くらいのM&Aを行ってきましたが、弊社から「ほしい」と言って買収したような会社は1社もありません。すべて、「後継者がいない」とか「ほかの事業で失敗した」などの諸々の事情により、企業の存続や事業再生を考えたうえでの、相手からの申し出によるものです。そうして舞い込む多数の案件を、きちんとエリアや規模などを精査したうえで、弊社の条件に合致する企業については、M&Aで吸収していくというやり方です。

 たとえば無理に合併させようとした場合、車や営業権は買えたとしても、運転手がいなくては元も子もありません。M&Aで合併する際にも、運転手に残ってもらうために、労働条件を含めて「他所のタクシーに乗るより、第一交通のタクシーに乗ったほうが、安定してお客がいて稼げる」――というようなことを、いかにきちんと示せるかが重要だと思っています。

 また、3年前に「No.1タクシーチケットネットワーク」というものをつくりました。これは、弊社の営業所がないエリアに対して、M&Aではなく業務提携でカバーしていこうというものです。現在、全国450社くらいと提携し、このネットワークでの相互利用台数はトータルで3万7,000台くらいになります。

 ――現在、「Uber」や「DiDi」などのタクシー配車アプリとの提携を行われていますが、これについてはいかがですか。

 田中 弊社はもともと自前で、「モタク」という自動配車アプリを提供しています。一方で現在、国交省の主導により、海外の配車アプリとの連携が推進されています。というのも、以前のように大型バスで団体客がいっせいに押し寄せるのではなく、個人や少人数での旅行客が増えるなど、今やインバウンド客の形態も変わってきました。そうなると、やはり移動するにはタクシーが便利なのですが、海外で使われているアプリが日本国内では使えないというのはおかしい、ということで、弊社でも先に挙げた「Uber」や「DiDi」などのタクシー配車アプリとの提携を進めているところです。

 とはいえ、弊社には自前の「モタク」もありますし、電話での要請もかなりの件数あります。なので、「Uber」や「DiDi」などに依存するのではなく、イメージとしては、その地域にある新しい共同無線に入るような感じですかね。

 ――今後のタクシー業界については、どのようにお考えですか。

 田中 業界自体の総売上としては、残念ながら落ちていくと思っています。しかし一方で、これからは“乗り方”そのものが、今までとは変わってくるのではないでしょうか。たとえば、今までは1台のタクシーに対して、1人もしくは1組のお客さんが乗るというのが多いですが、これからは“相乗り”のような乗り方も増えてくるかもしれません。また、弊社でも手がけている「おでかけ交通」のように、路線バスや鉄道の廃止にともなう代替交通や交通空白地帯解消の役割を担うような、そうしたタクシーの需要はなくならないと思います。

 自動運転についても、私はもう技術的にはある程度可能になってきているのではないかと思っています。たとえば高速バスや、駅から病院を結ぶなど、ある程度決まった路線をつなぐ分にはいいかもしれません。ただし、今の高齢者の方々は、「途中で何かあったときどうするのか」など“自動運転の車はこわい”という認識をもたれている方が多いと思います。また、「荷物は誰がもってくれるの」とか、「階段の補助を誰がしてくれるの」などの、自動運転だけでは解決できない問題もあります。

 今後、自動運転も含めて、「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)などの新たなモビリティサービスが生まれてくるなかで、“ラストワンマイル”の部分は、これからもタクシーが担わなければならないのではないでしょうか。タクシー業界としても、今後どのようなことに取り組んでいけばいいのか、いろいろと研究が必要になってくると思います。

(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】

<プロフィール>
田中 亮一郎(たなか・りょういちろう)

1959年4月、東京都出身。青山学院大学卒業後、82年4月に全国朝日放送(株)(現・テレビ朝日(株))に入社。94年7月に第一交通産業(株)に入社し、取締役、専務、副社長を経て、2001年6月に代表取締役社長に就任した。北九州商工会議所副会頭や福岡経済同友会副代表幹事、北九州タクシー協会会長、九州タクシー協会会長、全国タクシー協会副会長など、数々の要職も務める。

<COMPANY INFORMATON>
第一交通産業(株)
所在地:北九州市小倉北区馬借2-6-8
設 立:1960年6月
資本金:20億2,755万円
TEL:093-511-8811
URL:http://www.daiichi-koutsu.co.jp

(後)

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