【検証】市一丸となってSDGsを推進 問われる北九州市の本気度
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2019年05月13日 07:02

【検証】市一丸となってSDGsを推進 問われる北九州市の本気度

「SDGs推進室」を新設、全局に担当課長も配置

 北九州市は、北橋健治市長のトップダウンにより、SDGs推進に向けた取り組みを開始し、2017年12月のジャパンSDGsアワードに公募。特別賞「SDGsパートナーシップ賞」を受賞した。同市の公害克服の経験が「ほかの自治体のロールモデル」になり、「経験や技術が国際的目標への貢献に資する」などと評価された。18年4月、OECDから「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に選定されたほか、同年6月には、「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」にも選定された。提案内容は「地域エネルギー次世代モデル事業」を核にしたものだった。

 同年8月には「北九州市SDGs未来都市計画」を策定。「『真の豊かさ』にあふれ、世界に貢献し、信頼される『グリーン都市』」をビジョンに掲げ、「経済」(人と環境の調和により、新たな産業を拓く)、「社会」(1人ひとりが行動し、みんなが輝く社会を拓く)、「環境」(世界のモデルとなる持続可能なまちを拓く)の3つを統合的に推進することを打ち出す。

 SDGs推進に当たっては、18年2月、SDGsに関する最高意思決定機関として、市長を本部長とし、局長級職員からなる「北九州市『SDGs未来都市』庁内推進本部」を設置。SDGsに関連の強いセクションの課長によるワーキンググループも設けた。19年4月には、企画調整局にSDGs推進室を新設。トップに部長級職員を配置。ほかのすべての局、区役所にもSDGs推進担当の課長(基本的には総務課長兼務)を置き、定期的な情報共有を行うことにしている。

 19年2月には、学識者や経済団体、市民代表からなる「北九州市SDGs協議会」を設置。市への助言をもらう体制を整えた。18年11月に、市民や企業、団体などの交流の場として「北九州SDGsクラブ」も創設し、市との連携体制も構築。協議会委員数は8、クラブメンバー数は446(19年3月現在)。SDGsに対応する組織づくりは、整ったように見える。

SDGs未来都市に合わせたエネルギー政策を策定

 北九州市では「地域エネルギー拠点化推進事業」として、風力発電やバイオマス、太陽光発電などの自然エネルギーの地産地消を目指した取り組みを実施している。同事業の一環として、北九州市は15年12月、(株)安川電機などとの共同出資で地域エネルギー会社「(株)北九州パワー」を設立。ゴミ焼却時の熱を用いて発電した電気を、市内公共施設や企業に供給している。同市では今後、同社を核にした市内でのエネルギーマネジメントシステムの構築を視野に入れている。

 同市環境局は19年3月末、自治体SDGsモデル事業としてエネルギー政策を整理した「北九州市地域エネルギー・SDGs戦略」を策定した。この戦略では、「7つのアクション」として、エネルギー政策とSDGsの目標をそれぞれ紐付け、目標3、4、7、8、9、11、13、15、17に資する活動として位置付けている。23年に「次世代エネルギー拠点の総合的な形成」、30年に「グリーン成長都市」、50年に「クリーン成長都市」を目指すことも打ち出している。同局の担当者は、「具体的な計画は未定だが、将来的にはドイツの公益事業体であるシュタットベルケのように、電力事業を核として市民サービスの向上を図る新たな社会システムの構築・整備を目標にしている」と話している。

 7つのアクションのうち、「響灘における風力発電などの集積」は、響灘地区で整備を進めている洋上風力発電事業を指す。同市は16年、同事業の設置運営事業者として九電みらいエナジー(株)などが出資する特別目的会社ひびきウインドエナジー(株)を選定。同社は現在、風車設置に向けた各種調査を行っており、22年度の工事着工を目指している。発電出力最大22万kwの予定。総事業費は1,750億円程度。同事業は「風力発電を中心とした再生可能エネルギー産業の人材育成」にも紐付けされている。

市民や企業へのSDGs浸透に課題が

 北九州市が一丸となって、SDGsに貢献する組織体制は整いつつある。だが、市職員のすべてがSDGsに取り組む意義を理解しているとは言いがたい。市民や市内企業への浸透もまだまだだ。クラブメンバーに名を連ねる企業であるにも関わらず、いまだSDGsへの対応についてアピールできない企業も少なくない。何のために協議会やクラブに参加しているのか、そもそも自発的に対応する意思があるのか、疑問を禁じ得ない。

 SDGsはもともと、企業や市民などのすべてのステークホルダーが自発的に対応する枠組みだ。企業の真剣な対応を引き出すためには、北橋市長自ら、業界団体や企業などのトップと面談し決断を迫るなど、最大限レベルを上げた対応が必要だと思われる。全局、区役所に推進担当課長を配置したが、それで万全とはいえない。ほかの職員が「自分は担当ではない」と他人事として捉えてしまうリスクがあるからだ。もし、役所組織という安全な場所に甘んじ、一方的なSDGsに関する啓発、広報を行うだけでは、SDGsによる新たなまちづくりは“机上の空論”に終わってしまうだろう。すべてのステークホルダーの本気を引き出すことは容易ではない。今、SDGsに対する北九州市の本気度が問われている。

【大石 恭正】

マンガでSDGsをPR

※クリックで拡大

 北九州市は19年3月、SDGsのPRのため、マンガ冊子「マンガで分かる!SDGsってなに?」を制作した。今回制作した冊子はB5判40ページ。6,000部印刷し、市役所や市環境ミュージアムなどで配布している。マンガ制作に当たっては、同市漫画ミュージアムが受賞歴や実績から推薦した3名の漫画家が執筆。「私たちの未来とSDGs」という作品では、地球環境に関心のない北九州市在住の男子高校生が未来にタイムスリップし、SDGsに関する気づきを得るストーリーが描かれている。子どもや若者世代への訴求に力点を置いた仕上がりになっている。

北九州市地域エネルギー
SDGs戦略
7つのアクション

●響灘における風力発電等の集積
●地域における太陽光発電の活用
●バイオマスの活用による地域エネルギー供給
●地域エネルギー会社の事業拡大
●城野ゼロ・カーボン先進街区におけるエネルギーマネジメントの高度化
●再生可能エネルギー由来の水素サプライチェーンの構築
●風力発電を中心とした再生可能エネルギー産業の人材育成

 

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