2024年03月29日( 金 )

【加速する志免町】歴史を積み重ねて町制80周年 多くの魅力があふれる志免町

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いわば“福岡市志免区”ベッドタウンとしての発展

 志免町は西側が福岡市、北側が粕屋町、東側が須恵町、南側が宇美町と隣接し、南北に長い8.69km2の町域を有し、県下では3番目に小さな自治体である。狭い町域ながら4万6,080人の人口を抱えていることで人口密度は高く、福岡県下では春日市についで2位、町村としては全国1位となっている。町の中心部を県道68号が通るほか、福岡東環状線などの幹線道路も有しており、バスを含めた自動車による交通アクセスは比較的良好。一方で、かつては国鉄・勝田線が走っていたものの、85年4月に廃線となり、現在は町内に鉄道路線はない。

 同町は古くから「糟屋炭田」の一角として、戦前は海軍採炭所、戦後は旧国鉄の志免鉱業所と“炭鉱の町”として栄えていた歴史をもつ。その名残が、今でも町のシンボルとして屹立する「竪坑櫓(たてこうやぐら)」と、その背後にそびえるボタ山(西原硬山)である。

町のシンボル「竪坑櫓」と、その後ろにあるボタ山

 その後、エネルギー需要が石炭から石油へと移り変わるなか、1964年6月に炭鉱が閉山。これにより、町の成長は一時止まったかに見えた。だが、同町は適度に安い地価と福岡市に隣接しているという立地を生かし、以降はベッドタウンとしての住宅開発を進めることで、再び人口が上昇傾向に。78年には3万人を突破した人口は、2004年には4万人を突破。近年は4万5,000~4万6,000人で推移している。同町はいわば“福岡市志免区”的なポジションとして発展を遂げてきたといえよう。

渋滞が慢性化している県道68号

 現在、町内各所に住宅地が広がるほか、同町別府にある亀山工業団地内に機械や金属工業を中心とした事業所が立地。また、県道68号や福岡東環状線などの幹線道路沿いに商業施設などが集積している。

開発余地は限られるも人の力で町を盛り上げていく

 現在の志免町内を見てみると、町域のうち、住宅用地が約35%、工業用地が約9%、農地が約8%、商業用地が約7%となっており、そのほかは公共施設や道路などのインフラなど。意外なところでは、町内にある公園の総面積は約46万7,000m2にもおよび、志免総合スポーツ公園や平成の森公園、志免福祉公園など、町の各所に町民の憩いの場となり得る公園が点在することも、同町の住みやすさ向上に寄与しているといえよう。

 ただし一方で、町内のほとんどのエリアで開発が進んでおり、いわゆる“手付かず”の空き地はほとんどないに等しい。可能性があるとすれば、町の南東部に広がる農地エリアが挙げられる。ちょうどこのエリアでは現在、都市計画道路「志免宇美線」の開通に向けた整備が進められており、開通に合わせて沿線などの周辺開発を進めていけば、将来的に新たな市街地が形成される可能性も高いだろう。また近年は、リノベーションなどによって中古住宅を利活用する動きも出ており、町内での大規模な開発は難しくとも、既存の住宅地をうまく生かしていく方法もある。

 町の魅力向上は、ハード面だけに依存するものではない。たとえば地元の志免町商工会では、伴走型支援による事業者の発展の手伝いを通じて間接的に町の活性化に寄与するとともに、“志免ブランド”の特産品開発などに力を入れて、町の魅力向上に取り組んでいる。同商工会の伴義信会長は、「志免町は、町の職員も事業者たちも皆が良い人ばかりです。そうした皆の力を合わせながら、町をもっと盛り上げていきたいですね」と語る。

 ほかにも、町内の商店主を中心としたグループ「志免68」が、グッズ販売やイベント開催を通じて町を盛り上げる活動を行っており、そうしたソフト面の“人の力”も志免町にはある。

 19年4月に、町制施行80周年の節目を迎えた志免町。この80周年を通過点とし、100周年、さらにその先の未来に向けて、町の発展が今後も続いていくことを期待したい。

【坂田 憲治】

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