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2019年05月24日 10:40

野村證券は危機を乗り越えられるか

 日本の大手証券会社は、独立系の野村證券(野村ホールディングス/以下HD)、大和証券(大和証券グループ本社)の2社と、メガバンク系のみずほ証券(みずほFG)、SMBC日興証券(三井住友FG)、三菱UFJ証券(三菱UFJFG)の3社を合わせて5社となっている。

 大手証券の2019年3月期の連結決算が出そろった。【表1】を見ていただきたい。

※クリックで拡大

■世界経済の不透明感が高まるなか、株式や投資信託の販売が低調だったほか、金利変動が乏しく債券引き受け業務が減少したことが影響し、最大手の野村HDは当期純利益が赤字に転落。他4社も大幅な減収減益となった。

・野村HD傘下の野村證券は日本最大の証券会社であり、その預かり資産は約70兆円で、日本の証券業界の3分の1を一社で占めているといわれる。日本の株式市場でガリバーのような地位を占める存在の野村HDが赤字に転落したのだ。

〜この表から見えるもの〜

計数の表記について

 大和証券以下4社は、営業収益、純営業収益、親会社株主に帰属する当期純利益と標記している。しかし野村HDだけは、営業収益を「収益合計」、純営業収益を「収益合計(金融費用控除後)」、親会社株主に帰属する当期純利益を「当社株主に帰属する当期純利益」と表記しているのが目に付く。

 企業の経営成績を見る場合、同じ表記であるほうが投資家にとって比較しやすいのだが、あえて野村HDだけが独自の用語を使っている。その裏には他の4社とは違う絶対的存在であることを誇示するだけでなく、監督官庁の金融庁にも無言の圧力をかけている証なのではないだろうか。

営業収益について

・大和証券を含む4社の営業収益は1兆8,431億円で、野村証券の1兆8,351億円とほぼ同額であり、一強四弱となっている。

純営業収益について

・純営業収益は金融費用を差し引いた営業収益であり、証券会社の実力を表す計数である。野村HDの純営業収益は前期比▲3,802億円の1兆1,168億円(▲3,802億円:前年比▲25.4%)と大きく落ち込んでおり、厳しい経営状況にあることが読み取れる。

・大和証券を含む4社合計も前年比▲1,768億円(前年比▲11.5%)となっており、銀行と同様に証券会社も、アベノミクスのマイナス金利政策による逆風に晒されているようだ。

当期純利益について

・野村HDの当期純利益は前期の+2,193億円から一転して▲1,004億円と大幅な赤字を計上。赤字転落の要因は、(1)2007年2月に12億ドルで買収した米子会社インスティネット(ヘッジファンドなど機関投資家向けの売買執行を手がける会社)の法人部門の収益力低下のための、負ののれん約670億円、2008年に買収したリーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門で発生していた負ののれん約140億円の計約810億円を減損処理。(2)法人所得税などの▲570億円。(3)非支配持ち分に帰属する当期純利益▲57億円。その3つが主因となっている。

・大和証券の当期純利益は前年比▲468億円の638億円(前年比▲42.3%)。

・みずほ証券の当期純利益は、持株会社のみずほFGが店舗削減や金融派生商品の売却で約6,800億円の減価償却をした影響を受けて、約226億円の一時損失を計上したため、前期比▲314億円の44億円(▲87.8%)の大幅な減益となった。

・三菱UFJ証券とSMBC日興証券も他の証券会社と同様に、株式売買や債券販売の低迷から手数料収入が減少し、40%を超える減益となった。

<まとめ>

 野村HDは業績低迷を受けて、欧州事業の縮小や国内店舗削減などを進める方針を打ち出している。一方、今年3月29日、中国証券監督管理委員会から51%を出資する合弁証券会社の設立許可を受けたと発表。国内の証券業務が低迷するなか、成長余地が大きい中国市場に年内にも開業し、本格進出する予定という。外資の過半出資はスイスの金融大手UBSに続き2例目に認められることになった。

 金融庁は昨年4月13日、経営破綻時の混乱を最小限に抑えるための新規制の対象に野村HDを加えると発表した。「TLAC」と呼ぶ規制で、3メガバンクは2018年度から適用されているが、新たに野村HDも20年度から加わることになる。TLACはグローバルに活動する金融グループに適用される健全性の基準で、日本語で「総損失吸収力」と訳されている。すでに3メガバンクは合計8兆円強のTLAC債を主に海外で発行しているという。野村HDも今後、数千億円規模のTLAC債を発行するとみられる。野村HDは「TLAC債」 発行の資格があるのか。それとも経営危機に直面するかどうかは、2019年3月期の決算次第といえよう。

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 収益の主力はあくまでも日本国内の証券業務である。【表2】を見ていただきたい。昨年3月末の日経平均株価(終値)は2万2,068円24銭。1年余り経った昨日5月23日の終値は2万1,151円14銭で、値動きはわずか917円余りしかない。ネット証券の台頭により大手証券会社は苦戦しているが、野村HDが経営危機を乗り越えられるかどうかのカギは、日経平均株価が握っているのではないだろうか。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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