「住むまち」から「暮らすまち」へ仕掛人が手がける、那珂川町のこれから(中)
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2018年01月08日 07:02

「住むまち」から「暮らすまち」へ仕掛人が手がける、那珂川町のこれから(中)

那珂川町事業間連携専門官
(株)油津応援団 専務取締役 木藤 亮太 氏

 ――市制を目前に控え、どのようなまちを目指すのでしょう。

 木藤 それについては、ちょうど武末茂喜町長とも直接意見交換をさせていただき、方向性をあらゆる角度から検討しているところです。ここ10年くらいの那珂川町は、とにかく人口5万人を達成して市になることに邁進してきました。町内の賃貸アパートについて敷金礼金の補助を始めたのもその一例です。

木藤氏が油津商店街で手がけた「油津コーヒー」

 念願かなってようやく市になることが決まりましたが、では次に目標とすべきものは何なのか。町中を見渡してみると、駅の周辺は人口が増えてマンションも「乱立」しています。一方、南畑地区では人口が減少する農村エリアが広がっている。これらのギャップを「問題」と捉えずに「他にない特徴」と捉える。そういった飽和と過疎の両極をもつこと自体は「可能性」になると考えています。たとえば、近隣の春日市や大野城市などを見ると、市内のほとんどが市街化されて農村が姿を消してしまいましたが、逆にまちとしての個性は失われてしまったようにも見えます。

 単純に人口を増やすだけなら開発を加速して住宅団地でもつくればいいのですが、それは那珂川町の目指すものではありません。福岡都市圏にもかかわらず、この町には貴重な田園環境がいまだに残っています。この環境をしっかりと残し、さらに育てながら町場と農村エリアとをうまくマッチングさせる事業を続けることこそ、那珂川町らしいまちづくりだと思うのです。

 博多南駅では夏になるとビアガーデンのイベントをするのですが、那珂川町内の農村エリアから毎朝集めてくる野菜やタマゴなどを食材として使うのです。いわば地産地消ですが、町場に住む方に那珂川町でこれだけおいしい野菜がつくられていることに気づいてもらって、ひいては週末に農村エリアに遊びに行こうかな、農業体験でもしに行こうかなとなれば都市部と農村の交流が始まります。

 那珂川町が持っている「町場と農村」という2つの特長はこれまで交わることがありませんでした。町場に住んでいる人は土地や賃貸料金が福岡市より安いためにベッドタウンとして住んでいる人の割合が多く、農村エリアとの交流も少なかった。2極の接点をいかに生み出すのか、それが那珂川町らしい暮らし方につながると考えています。

 また、那珂川町の人口は増えていますが、実は住んでいるだけで働く場はほとんどが福岡市です。だから地元の経済活動とはあまりつながっていなくて、消費活動も地元スーパーくらいは利用するでしょうが、週末に食事や遊びに行くとなれば外に出てしまうわけです。那珂川町内で住居と経済活動をしっかりつなげること、すなわち「『住む』から『暮らす』へ」をどのように実現していくかを、町長や役場の皆さまと議論し合っているところです。人口や税収が増えても、単に寝るために帰るだけのまちでは、油津商店街を始めとして、各地方がこぞって創意工夫を始めたこの時代においては、どんどん置いて行かれてしまうかもしれません。

(つづく)
【小山田 浩介】

<プロフィール>
木藤 亮太(きとう・りょうた)
1975年生まれ。福岡県那珂川町出身。九州芸術工科大学大学院修了。環境設計を専攻。卒業後は、大学の先輩が創業した(株)エスティ環境設計研究所に14年間勤務、取締役を務める。在職中の実績は、子守唄の里五木の村づくり(08年土木学会デザイン賞優秀賞)、重要文化的景観「蕨野の棚田」、かなたけの里公園、古湯・熊の川温泉など。13年、全国公募で選ばれた日南市油津商店街テナントミックスサポートマネージャーに就任。現在は、(株)油津応援団取締役。

 
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