地方チームの成功モデルだったサガン鳥栖が赤字転落

九州のJ1チームでは鳥栖と大分が明暗を分けた。鳥栖は今季18位と最下位だ( 6月15日現在 )。
サガン鳥栖の運営会社、サガンドリームスの2018年度決算は赤字に転落した。営業収益は42.5億円(前年度比9億円増)と、九州のクラブチームのなかで首位。しかし、当期純利益は5.8億円の赤字だ。J1に昇格した2012年度以降で最多額。今年1月に6億円の第三者割当増資を実施し、純資産額は3,600万円となり、かろうじて債務超過を回避した。それでも累積赤字21.9億円はJリーグのなかで最大だ。
元スペイン代表のFWのフェルナンド・トーレス選手を獲得するなど大型補強を敢行したため、チーム人件費は26.7億円(同7.7億円増)に膨らんだ。さらに、昨年10月にマッシモ・フィッカデンティ監督らを解任したことによる違約金などで、営業外費用が4.5億円に増えたことが赤字の要因だ。
鳥栖のスポンサー収入は22.9億円(同7.2億円増)。増加額は神戸(同28.5億円)についでJリーグ2位。スポンサー収入増→チーム人件費増→チーム成績の上昇。この好循環が勝利の方程式だ。鳥栖は地方クラブのお手本と絶賛されてきた。ところが、これが機能しなくなった。チーム人件費増→チーム成績は低下。J2転落の危機に立たされている。
経営サポートでは成功したが、J2に降格したV・ファーレン長崎
Jリーグ史上に残る奇跡と言われたのが、V・ファーレン長崎の1部昇格だった。17年3月、3億円を超える累積赤字を抱える長崎は給与未払いに陥り、J3降格寸前となっていた。その危機を救ったのは、地元企業のテレビ通販大手ジャパネットホールディングス(HD)の創業者の高田明氏。運営会社をジャパネットHDの100%子会社にして、自ら社長に就いた。その年にJ1昇格を決めた。
経営難で危ぶまれていた弱小チームをJ1に昇格させたのだ。高田氏はチームよりも有名になり、“高田マジック”と称賛された。
百戦錬磨の経営者である高田氏はJ1で渡り合うには、20億円の資金は必要と考えた。長崎の16年度の営業収益は7.4億円。経営を引き継いだ17年度は11.2億円、J1に昇格した18年度は23.2億円。増加額12億円は、神戸、鹿島についでJリーグ3位。スポンサー収入の増加額6.4億円は神戸、鳥栖につぐJリーグ3位。入場料収入増加額2.9億円は神戸(3.2億円)につぐJリーグ2位。経営面ではしっかり結果を出した。
これでチームがJ1にとどまっていれば文句なしだったが、そうそう甘くはなかった。1年でJ2に降格。今季はJ1復帰を狙う。
福岡県勢はどうか。アビスパ福岡の営業収益18.3億円は前年度比1.4億円の減。入場料収入1.7億円は1,600万円の減。チーム人件費9億円は9,100万円の減。ギラヴァンツ北九州の営業収益7.9億円は7,000万円の減。入場料収入1億円は1,700万円の減。チーム人件費2.8億円も2,100万円の減だ。福岡と北九州は縮小傾向を強めている。福岡のJ1昇格、北九州のJ2昇格は、経営面からみると厳しいと言わざるを得ない。
【北部九州4県のJ1・J2・J3クラブの2018年度決算】(単位:百万円) | |||||
クラブ | 鳥栖(J1) | 長崎(J1) | 福岡(J2) | 大分(J2) | 北九州(J3) |
営業収益 | 4,257 | 2,323 | 1,831 | 1,128 | 794 |
(うちスポンサー収入) | 2,296 | 1,183 | 990 | 486 | 394 |
(うち入場料収入) | 678 | 407 | 174 | 254 | 107 |
営業費用 | 4,393 | 2,310 | 1,829 | 1,089 | 813 |
(うちチーム人件費) | 2,670 | 814 | 909 | 482 | 287 |
営業利益 | ▲136 | 13 | 2 | 39 | ▲19 |
当期利益 | ▲581 | 37 | 2 | 37 | ▲21 |
(チーム名は、サガン鳥栖、V・ファーレン長崎、アビスパ福岡、大分トリニータ、ギラヴァンツ北九州。決算期は長崎が18年12月期、他は19年1月期。 出典:Jリーグ発表資料) |
(了)
【森村 和男】