2024年03月29日( 金 )

低コストで実現するIoT公共サービス LoRaWAN実証実験スタート

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 糸島市を舞台に、公共サービスの在り方が変わろうとしている。糸島市、福岡県、(株)Braveridge(ブレイブリッジ)、(公財)福岡県産業・科学技術振興財団 社会システム実証センター(以下、ふくおかIST社会システム実証センター)が連携して取り組む「LoRaWAN(ローラワン)を活用した公共サービス実証実験」。実用されれば“日本初”となるこのプロジェクトの概要を紹介する。

LoRaWANで広がる 安心・便利

「LoRaWANのデバイスを含め、IoTデバイスの開発・製造まで一手に手がけられるのが弊社の強み」と、(株)Braveridge 代表取締役社長(CEO) 吉田 剛 氏

 LoRaWANは、長距離無線通信が可能なネットワーク。ネットワーク網の構築に向けて、(株)Braveridgeが糸島市内20カ所に基地局となる「LoRaゲートウェイ」を設置。LoRaゲートウェイは、1局で半径約3kmを網羅し、2018年4月現在、生活圏を中心に糸島市内70%のエリア(同年5月末に市内90%を目標に掲げている)をカバーしている。ネットワーク網が構築されることで、Braveridgeが開発・製造を手がける専用デバイスとの情報共有が可能となり、その情報はスマートフォンやPCを通じて、市民1人ひとりが任意のタイミングで取得できるようになる。

 糸島市は、LoRaWANネットワーク網の構築により、「見守り」「水位管理」「バス管理」「鳥獣捕獲檻管理」といった情報提供・共有サービスの拡充に期待を寄せる。

 Braveridgeが開発・製造を手がける専用デバイスは、低消費電力(電池で数カ月~1年以上駆動)と低価格(各種デバイスは数万円以下で提供可能)を実現しており、公共サービスの充実がリーズナブルな価格帯で実行可能な、費用対効果の高いシステムとなっている。

糸島LoRaWANの構築と公共サービスの試作検証(概要)

 

4月から実証実験開始

 糸島市で実用を目指して4月にスタートした「LoRaWANを活用した公共サービス実証実験」は、水位管理から着手し、その他サービスへと実験対象を広げていく予定。早ければ、19年度中の実用化を見据える。

「緊急時に求められる情報が素早く得られる環境整備が重要」と糸島市産業振興部商工観光課。課長 川上 重則 氏(手前)、山下 敦士 氏(奥)

「地方自治体が抱える共通の課題を、LoRaWANの実用で解決していける」とふくおかIST社会システム実証部・三次元半導体部。部長 平瀬 博人 氏(手前)、渡邉 恭弘 氏(奥)

 「LoRaWANの活用による情報環境整備のお話をいただいた際に、とくに関心をもったのが、自然災害時における情報発信にもつながる『水位管理』でした。市民の生命・財産を守ることが市に求められる最大の役割ですので、実証実験においても、まずは水位管理から進めていくことにしました」(川上課長)。

 LoRaWANの本格導入に向け、産官連携を加速させる糸島市。この動きをつくり出すために尽力したのが、日々研究と研究成果の実社会における活用に取り組んでいる、ふくおかIST社会システム実証センターである。

 「Braveridgeが生産体制強化に向けて工場用地を探しているとの話を知り、糸島リサーチパークをご紹介させていただきました。近接の社会システム実証センターには、多様な計測・評価機器が完備されていますので、それら設備や情報共有を通じて、双方がより効率的かつ実践的な活動を展開していけると考えたのです。糸島市へのLoRaWAN導入の提案は、こうした動きのなかから出てきたものでした」(平瀬部長)。

水位センサー

停留所に設置予定のデバイス。赤いボタンを押すとバスの運行状況に対応するランプが光る

 まずは「見守り」「水位管理」「バス管理」「鳥獣捕獲檻管理」での実用を目指すLoRaWANだが、すでに別の用途も見出されている。

 「火災報知器としての役割ももたせられないかと考えています。たとえば、屋内に人がいれば、既存の火災報知器でも十分機能しますが、人がいなかった場合、最悪のケースとして、家屋の全焼や、隣家を巻き込む延焼が考えられます。火災を探知した際、警報が鳴るだけではなく、手持ちのスマートフォンなどのデバイスにメール通知が来るようにすれば、“誰も気付かない”という状況はなくしていけると思います」(吉田代表)。

 人口減少社会に突入し、地域コミュニティの維持が一層困難となっていく日本。とくに、地方自治体にとっては、対策が求められる喫緊の課題である。LoRaWANネットワークの環境整備と、それにともなう公共サービスの拡充・効率的な提供方法の確立は、地域コミュニティの持続可能な発展のために、今、最も期待されるIoTサービスだといえる。

社会システム実証センター

(株)Braveridge 糸島工場

【代 源太朗】

■社会システム実証センター
所在地:福岡県糸島市東1963-4
TEL:092-331-8510
URL:http://jiss.ist.or.jp

■(株)Braveridge 糸島工場
所在地:福岡県糸島市東1999-19
TEL:092-331-8181
URL:https://ssl.braveridge.com​

 

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