固い「石」で貫き通した「意志」が故郷の「山」を救う試みに結実する(前)
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2018年05月09日 11:59

固い「石」で貫き通した「意志」が故郷の「山」を救う試みに結実する(前)

Anny Group KFT(株) 代表取締役 二枝 崇治 氏

 「次世代型冷暖システム」として注目を集める、「光冷暖」。風をつかわず、「光エネルギー」を用いて体感温度や室内環境をコントロールし、家のなかすべての室温を一定にすることで、24時間365日快適な住環境を実現するというものだ。この「光冷暖」を生み出したKFT(株)代表取締役・二枝崇治氏の、苦境に陥ってもくじけず、常に未来と世界に目を向ける経営者魂に触れた。

かつての石炭の町・志免、ボタ山に新しい息吹を

Anny Group KFT(株) 二枝 崇治 代表取締役

 かつて「黒いダイヤモンド」ともてはやされ、戦前戦後を通じて日本の産業力を力強く支えたエネルギー、石炭。北部九州は国内有数の石炭産地として知られ、とくに筑豊から現在の北九州市まで広がる筑豊炭田は、旧・官営八幡製鐵所の存在と相まって工業地域としての北部九州を象徴する存在だった。

 その筑豊炭田に隣接するのが糟屋炭田(別名、福岡炭田)。旧海軍が、軍艦で焚くための燃料として開発した炭田である。糟屋炭田の石炭は非常に質が高く高熱で燃え、軍艦で焚いても余分な煙を出さないことで知られていた。糟屋炭田の中心となった志免鉱業所に、今もそびえ立つ竪坑櫓が姿を現したのは1943年のこと。戦後は国鉄直営の炭鉱として、高度経済成長期の原動力となった。

 64年に炭鉱としての使命を終えて閉山。2009年には、竪坑櫓は国の重要文化財に指定された。そしてそのそばには、志免町、須恵町、粕屋町にまたがるボタ山がそびえている。

 「竪坑櫓とボタ山は、ここで暮らす人々にとっては1つのシンボルです。竪坑櫓を見上げ、ボタ山を駆け回って育ってきた。これはいわば原風景です」。

 懐かしそうに語ってくれた二枝崇治氏は、志免町生まれ。
 「毎日のように拾って歩いた石炭、つまり石こそが私の原点であり、ビジネスの発端でもあります」と語る二枝氏は、言葉通り「石」を活用したビジネスで一世を風靡し、一度は苦境に陥りながらも、さらにまた「石」の力で新たなビジネスをつかみ、雄飛している。

「石」の恵みでビジネス拓く、岩盤浴で一世を風靡

 まず、最初に「石」が二枝氏のビジネスを切り拓いたのは、ストーンスパ「石の癒」だ。「子どものアトピー性皮膚炎の改善のために始めた研究を進めるうち、温泉水と地下にある石の関連性に着目するようになった」という二枝氏が、遠赤外線と岩盤浴を併用して03年に出店したのが「石の癒」博多店だった。3年間で48店舗を出店するなど好調に規模を拡大していたという。しかし好事魔多し。一時、「岩盤浴」を看板に掲げたスパ、温浴施設、リラクゼーションサロンが雨後の筍のように街中に建ち並んでいたのをご記憶の方も多いだろう。二枝氏は「石の癒」の施設についての特許を取得していなかったため、類似の岩盤浴ビジネスが許諾なしに世間にあふれることになったのだ。その数、3,000店舗を超えたという。さらに、これらの類似ビジネスが起こした問題によって、「岩盤浴は不潔ではないのか」とマスコミがキャンペーンを起こす。過当競争とメディアによる不当な攻撃の影響で、売上は対前年比で2割に落ち込んでしまう。「浴室の乾燥による消毒にこだわるため、営業時間を短くする」「お客さまに塩素消毒したお湯に入ってほしくないから、浴槽はつくらない」と、衛生にはとくに気をつかっていた二枝氏にとって、どれだけ不本意な状況だったことだろうか。

 しかしこの逆境が、現在二枝氏が取り組む新たなビジネス「光冷暖」につながっていく。「石」にかけた強い意志が、新しい未来を切り拓いたのである。なお、「石の癒」は計6店舗にまで規模を縮小して現在も営業を続けているが、近年非常に業績が良いとのこと。二枝氏は「何店舗も閉店して今の規模にしましたが、ちょっと縮小しすぎたという人もいるかもしれませんね」と苦笑する。

苦境を糧に生まれた光冷暖、新技術で人々を健康にしたい

 誰も思いつかなかった閃きから生まれ、さまざまな賞を受けたうえ、建築家の隈研吾氏からも高い評価を得ている空調システム「光冷暖」。この光冷暖の誕生に、「石の癒」での経験が生きているという。

 現在、一般に使われている空調(エア・コンディショナー)の淵源は、アメリカの技術者ウィリス・キャリアが1902年に申請した特許にさかのぼる。電気の力で温度と湿度を調整した空気を送り出すという仕組みは、現在のエアコンと原理的には変わらない。いわば、100年前の技術を改良しながら使っているというわけだ。

 光冷暖が画期的なのは、エアコンと違い空気を直接暖めたり冷やしたりするものではないということ。エアコンから出る冷風、温風で体調を崩す人は多く、「クーラー病」という表現まであるほど。このリスクが、光冷暖には存在しないのだという。

 大まかにいうと、光冷暖はヒートポンプを用いて室内に設置したラジエーターの温度を調節。屋内の壁や天井に特殊なセラミック素材を用いた壁紙や塗料を施工し、輻射熱で冷暖房を行うものだ。

 光冷暖が温度調節に使用しているようなフィン付きラジエーターを、空調のために使う手法はすでにあった。しかし、二枝氏があるメーカーのプレゼンを受けたところ、広めのダイニングルームを暖めるにはラジエーターが8台必要だという。これではイニシャルコスト、ランニングコストともに高額になってしまう。

 「私はすでに『石の癒』での経験で、エネルギーを均等に送り出す技術について気づいていました」という二枝氏は、業者にラジエーターをまず1台だけ設置してくれ、その代わりにこちらが指定する塗料を床や壁に塗ってくれ、と依頼した。すると、二枝氏の予想通り1台で十分なほど部屋は暖かくなったという。

 人間の体感温度は、熱の移動によって感じ方が変わる。体から熱が出ていけば寒く、熱が入ってくれば暑く感じる。その際に、部屋の壁や天井、床に由来する熱量は全体の5割にも上るという。

 光冷暖とは、その床・壁・天井、そしてラジエーターの表面に、特殊なセラミック素材を混入した「光冷暖専用素材」を、漆喰・ローラー漆喰、水性塗料、壁紙のかたちで施工することで、優れた冷暖房効果を発揮する、というもの。その原型が、「石の癒」で誕生したのだ。

 二枝氏はすぐ特許申請の準備を始める。「石の癒」での経験を踏まえ、「特許は、発明を1人占めにするためではなく、技術を守るためにも必要だと感じました」という二枝氏は、特許の効用に改めて気づいたという。現在23の特許を出願し、そのうち6つが認定されている。

(つづく)
【深水 央】

<COMPANY INFORMATION>
Anny Group KFT(株)
代 表:二枝 崇治
所在地:福岡市博多区店屋町6-3
URL: http://www.anny.co.jp/ (アニーグループホームページ)
設 立:1999年3月
資本金:1億円
売上高:(17/2)6億9,600万円

 
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