法を踏みにじり社会生活を脅かす 政商・日建設計　これを容認する行政庁たる東京都（後）

　――豊洲市場に関する訴訟は空転状態が続いているようですが今後の見通しはいかがでしょうか？

　仲盛　豊洲市場に関する訴訟について私が聞いた話では、審理に入らないまま結審をしようとした裁判長に不信感を募らせた原告が「裁判官忌避」を申し立て、結果的に申立は却下され、審理を再開することになったそうですが、審理の期日さえいまだに決まっていないそうです。

　これは、審理に入れば日建設計による不適切な設計・建築基準法違反に触れざるを得ないので、「行政である東京都が、市場管理者である東京都に是正命令はできない」という建前論で片付けようとしているからです。民間の建物であれば、東京都は是正命令をかけることができます。豊洲市場の建物が建築基準法違反なのですから、裁判所は建前論で誤魔化すのではなく、実態に即した判断をすべきです。現在の東京地裁の姿を見る限り、司法も行政も民間企業（政商）も同じ穴のムジナとしか思えません。

　先程述べた築地市場跡の再開発計画だけでなく今後、築地に建築される施設の設計に日建設計が関与することは既定の事実だと関係者は述べています。まともに裁判の審理を行えば日建設計の受注に影響を与えるし、豊洲市場の計画通知を交付した東京都の責任も明らかにしなければならないので、審理に入ることができないのです。しかし、「裁判の審理に入らず結審する」という暴挙が強行されたならば、日本の司法の崩壊だといえます。原告は審理に入るよう裁判所に強く求め続けていくと思います。

　――次の質問は「開場間もない豊洲市場ではすでに2人の方が亡くなっています。構造設計上の問題とは関係ないかもしれませんが、建物全体の設計が不適切だったからではないでしょうか？」という質問です。

　仲盛　市場内を走行するターレ（運搬車）から人が転落する事故やエレベーターのドアに挟まれる事故が発生し、尊い命が犠牲になっています。また最近、関係者から聞いた話では、豊洲市場では真っ黒な粉塵により、咳やのどの痛みなどの健康を害す人が増えており、この粉塵が原因で死亡された方もいるということです。粉塵の成分は高濃度の猛毒物質であると報じられています。

　これらは私の専門分野ではないのでコメントは避けたいと思いますが、仮に首都直下型の大地震が発生し、豊洲市場の建物が倒壊した場合、数百人・数千人の犠牲者が出る可能性が考えられます。粉じんの問題などと同じく深刻な問題だと思います。

　構造上の問題以外にもさまざまな問題点を封じ込めて、強引に建設された豊洲市場は、いかなる問題が表面化しようとも東京都は頑なに認めようとしません。東京都が市場で働く人や来場者の安全よりも東京都や日建設計などの保身が第一と考えているのであれば、それは人道的に許されないと思います。

　――次の質問は「豊洲市場以外にも、欠陥マンションなどに関する訴訟が全国で行われています。それらの裁判でも弱者である区分所有者が不利な判決となっているように感じるのですが、建築に関する裁判とはそのようなものなのでしょうか？」という質問です。

　仲盛　欠陥マンションなどの場合、原告である区分所有者と被告であるマンション販売会社やゼネコンでは、力の差が歴然としています。販売業者やゼネコンは豊富な資金をもっており技術論においても原告を圧倒できる体制も備えています。かたや原告は、数十人・数百人規模の区分所有者の意思をまとめることは非常に困難であり、訴訟費用の問題などもあります。

　裁判において、被告である販売業者やゼネコン側が一見まともに思える技術論を展開した場合、原告である区分所有者および弁護士は技術的な反論ができず、裁判官は一見まともに思える被告の技術論に惑わされることが多いようです。裁判官としても、いくら違法行為があろうとも、技術論の中身に入っても理解できないので、違法性の是非を結論づけず、被告側の主張を是認するかたちになるようです。

　このように泣き寝入りした例は全国的に相当な数に上ります。しかし、中には被告である販売業者やゼネコンの非を認め、建替えや賠償を命じた判例もあります。裁判官が司法の使命を認識して審理を尽くせば、適切な判決を下す場合もあるのです。

　豊洲市場の裁判においても、東京地裁の担当裁判官が、司法の使命を自覚して適切に対処されることを望みます。

（了）