2024年04月20日( 土 )

財政金融のプロとして政治責任をはたす決意!(後)

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参議院議員 藤巻 健史 氏

地方銀行の主力商品「国債」の金利が、限りなくゼロに

 ―――前回は少しショッキングな真実をお聞きしました。ただし、今でも日銀がメタボになった弊害は、至るところで現れています。

 藤巻 おっしゃる通りです。まず、日銀がメタボになったことによって、「地方銀行の経営」が苦境に陥っています。アベノミクスの「異次元緩和」では、長期国債(10年債や30年債)を日銀が爆買いしました。

 私が金融マンだったころは、日銀が長期国債を買うことはほとんどありませんでした。銀行というのは、地方銀行であろうとメガバンクであろうと、貸し出しは長期金利と短期金利の差で儲けを出しています。日銀が長期債を爆買いしたおかげで、値段は上がり(=長期金利は下がる)ました。おかげで長短金利差がなくなり、これでは儲かるはずはありません。地方銀行のもう1つの主力商品は「国債」ですが、これも金利がゼロ%近辺になってしまったので、儲かるはずがありません。今までは、手持ちの国債、株を売って、何とか凌いできましたが、それも限界に近づいています。

国民の損失の上に、役人の地位にとり安全な運用をする

 次に、「年金2,000万円問題」(金融庁が個人の資産形成を促す報告書で、老後資産が2千万円不足すると試算)も日銀が異次元緩和を行った弊害です。この問題の肝は、政府答弁にある「少子化」ではありません。「積立金が枯渇する」ことが問題なのです。

 厚生政務官の政府答弁に「国民の利益のために安全な運用をしている」とありましたが、私には「国民の損失の上に、役人の地位にとり、安全な運用をしている」という意味に聞こえます。金利がゼロに近い国債で年金の約半分を運用していますので、積立金が増えるはずがありません。このままだと年金は崩壊してしまいます。

年末に日銀は最大の株主に、不動産市場でも存在感拡大

 日銀がメタボになった弊害の3番目として、金利が低いため「ゾンビ企業が生き延び、産業の新陳代謝が行われていない」ことがあります。30年間で最大級の財政出動をしてきたにもかかわらず、日本の経済成長率は世界で断トツのビリである原因の1つはここにあります。年末には日銀は日本最大の株主になります。世界の中央銀行で、金融政策として株を買っている中央銀行はありません。さらに、不動産市場でも日銀の存在感は大きくなっています。国債市場では日銀は巨大です。国債市場、株式市場、不動産市場で日銀が池のなかのクジラになって価格をコントロールしているのは計画経済そのものです。崩壊したソ連を思い出させます。

こんなことをやっていたら、日本はダメになってしまう

 私は1990年代、約30年前から「こんなことをやっていたら、日本はダメになってしまう」と言い続けています。批判だけでなく、再生への筋道(円安・ドル高が進み、デフレが脱却できる方策)も、新聞、書籍を通じて繰り返し提言してきました。アベノミクスの「異次元緩和」には当初から大反対でした。

 しかし、なかなか思うように進まなかったので、自ら政治の世界に入りました。今回、再び、選挙に出ようと思ったのは次の3つの理由です。1つ目は、財政破綻はまだ起きていないので、何か少しでも、財政金融のプロとして、お手伝いができると考えたからです。2つ目は、財政金融のプロが議員のなかにはとても少ないことがわかったからです。3つ目は、引き続きアベノミクスを批判・糾弾、日本経済の再生を早い時点で実現したいと思ったからです。

ハイパーインフレ、預金封鎖などの時の避難通貨として

 ―――先生は「仮想通貨税制を変える会」の会長をされています。今回のテーマと何か関係がありますか。

 藤巻 仮想通貨は高齢者の方は紛い物と思われておられるかも知れませんが、私は決してそうでないと思っています。仮想通貨は将来的に有望で、ブロックチェーン技術とも表裏の関係にあります。それと、今回のテーマに関連付けていえば「避難通貨」になります。

 ハイパーインフレ、預金封鎖などの事態が発生した時、ドル建てなど外貨預金が有効です。しかし、一般の方が外国の銀行に口座を開くことは必ずしも容易ではありません。その際、仮想通貨は避難通貨の候補になります。開設には、やはり1週間程度はかかりますので、その時を考えて口座だけは開設して、少額でいいので、買いの練習をしておくといいと思います。

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
藤巻 健史氏(ふじまき・たけし)

参議院議員(日本維新の会)・参議院財政金融委員会 理事・経済評論家
 1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学してMBAを取得(米ノースウェスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年モルガン銀行入行、東京支店長を経て2000年に退行後、フジマキ・ジャパンを設立。世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務める。2013年の参議院選挙で当選、現在に至る。1999年から2011まで一橋大学経済学部で、02年から08年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師として毎年秋学期に週1回半年間の講座を受け持つ。日本金融学会所属。

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