• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年07月18日 10:57

トランプによるデカプリングは主体が中国に逆転する可能性も!

 7月13日(土)13時30分~16時00分に大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウスにおいて、NEASE-Net(北東アジア研究交流ネットワーク)第45回政策セミナーが開催され、『米中貿易戦争とアジア』と題して平川均 名古屋大学名誉教授・浙江越秀外国語学院東宝言語学院特任教授が講演、杉本勝則 北京外国語大学客員教授がコメンテーターを務めた。平川均氏は講演のなかで「トランプによるデカプリング(切り離し)は中国によるデカプリングに主体が逆転する」可能性があることを示唆した。

貿易問題が安全保障上の脅威などの問題に質的に転換

平川 均 氏

 平川均氏はまずトランプ大統領の誕生(基本姿勢は民主主義の大義や同盟関係とは無関係の「アメリカ第一」で多国間主義を否定した2国間取引による脅迫外交)と米中貿易(アメリカの対中貿易赤字は1990年の9.4%から2018年には48.0%に増大)の基本構造について話はじめた。そして、アメリカの第1次攻勢と休戦(P.ナバロ大統領補佐官・対中強硬派)、第2次攻勢と休戦(ライトハイザーUSTR代表・対中強硬派)の「米中貿易戦争」の詳細を時系列で振り返った。

 ポイントは大きく2つある。1つは、第2次攻勢では「貿易問題」とは次元の異なる「中国製造2025」の産業補助金問題や為替操作への言及など、「安全保障上の脅威」「技術覇権問題」「異なる体制問題」などへ質的に転換したことである。もう1つは、トランプの考えるディールと政権内や議会の対中強硬派の考えに違いが出てきたことである。

国家レベルと企業レベル双方における分断を仕掛ける

 次に、平川氏はトランプのデカプリングに言及した。トランプの考えるデカプリングとは、国家レベルでは「米陣営と非米陣営への分断」、企業レベルでは「世界的ビジネスのサプライチェーンの分断」を意味する。平川氏ははたしてこのトランプのデカプリングは成功するか否かを占った。結論として「トランプによるデカプリング(切り離し)は中国によるデカプリングに主体が逆転する可能性がある」と語っている。その根拠は大きく分けて3つある。

ファーウェイ問題が中国包囲網につながる可能性はない

 根拠の1つ目は、「ファーウェイ問題のゆくえ」と中国の科学技術力である。ファーウェイは次世代通信技術5Gの世界トップ企業であり、取引禁止措置が中国包囲網になることは極めて難しい。今、明確に排除を表明しているのはアメリカとオーストラリアだけである。

 中国の科学技術について、研究論文数(米国に肉薄、世界第2位)は有名であるが、ハイテク研究テーマ別ランキング30テーマでも、その8割(ナトリウムイオン電池、リチウムイオン硫黄電池、酸化還元、光触媒、水素発生触媒など)で世界の首位にある。(日経2018.12.31)また日経「主要商品・サービスシェア調査」(2018年)ではスマートフォンなど9品目で中国は世界シェアを拡大中である。週刊エコノミストのOnlineには「制裁でも揺るがぬ5G覇権 孤立する米国の『排除戦略』」(2019.7.8という記事が載った。

中国経済の貿易依存度と外資依存度は大幅に減少した

 根拠の2つ目は、中国で今起こっている2重の自立化である。中国では2000年代に入って経済の対外依存度(貿易依存度と外資依存度)の低下が始まっている。

 中国の貿易比率は1990年代から2005年の64%に向って大きく上昇したが、その年をピークに減少に転じ2015年の比率は36%になった。中国経済発展における貿易依存度は小さくなっている。同様に外資系企業の貢献度も大きく低下傾向にある。

 根拠の3つ目は、中国の最大貿易相手はすでにアメリカではなくなったことである。貿易相手国は、新興国、アジアに移り、貿易構成でもアメリカ離れが大きく進んでいる。東アジア(アメリカのGDPの130%)貿易もアメリカ依存から中国依存に劇的に転換した。それを踏まえて、中国の習近平国家主席は本年4月25〜27日に北京で開催された2回目の「一帯一路」国際協力フォーラムで、国際ルールの遵守を明言し「質の高い一帯一路」を約束、国際社会への最大限の配慮を表明した。

アメリカの政治的・地政学的覇権を弱めることになる

 最後に平川氏は「アメリカ第一」で多くの国が翻弄されているが、立ち止まって冷静に事態を直視すれば、その先の新たな構図はすでに見えている。トランプのデカプリングは中国経済の自立化を促進させ、中国に新たな市場を求めさせ、並行して質の高いインフラ建設を余儀なくさせる。その結果、アフロ・ユーラシア地域(南北のアメリカ大陸とオーストラリア大陸以外のすべてが含まれる世界最大の大陸)の開発が進み、アメリカの政治的・地政学的覇権を弱めることになるのではないかと語った。

<「一帯一路」から「グローバルガバナンス」の言葉に>

 平川均氏の後、杉本勝則氏が「中国の体制と米中貿易戦争の今後の展開」と題して現場感覚の短い講演を行い、会場とのQ&Aに続いて、谷口誠NEASE-Net代表幹事(元国連大使)が総括・挨拶をした。

谷口 誠 氏

 谷口氏は講演者・コメンテーターに感謝した後、G20で大阪に行き6月25日にNEASE-Netを代表して講演したことを報告した。そして、G20で中国の習近平主席は「一帯一路」という言葉はほとんど使わず「グローバルガバナンス」という言葉を好んで使った。また、中国社会科学院の研究者も最近はあまり「一帯一路」を強調することがなくなった事実を披露、もはや「アメリカ第一」になった米国に代わって、中国は「グローバルガバナンス」を意識し始めたのではないのかと語った。

 次に話題をOECDの世界経済のシナリオ『The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060)』(世界経済の中心はアジアへ移行、中国とインド両国ともそれぞれ世界全体のGDPの20%~25%占めるのに対し、OECD諸国のシェアは40%をわずかに上回る程度と予測されている)に移し、2060年には、中国、インド、アメリカの3つどもえにはなるが、アジアの世紀が来ることは間違いない。しかし、経済が大きいだけではダメで、歴史のある欧米の知見に学びながら、中国、インドを中心にアジアの国がしっかり「グローバルガバナンス」の舵取りができるようになる必要があることを谷口氏は強調した。

【金木 亮憲】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

ライオンズクラブ337-A地区 明るい未来をつくるために(2)NEW!

 本日(20日)、側近に取材申し入れの書簡を送付した。側近に対しては以前より数度にわたって取材の依頼をしたものの回答がなかった。

2019年08月20日 17:42

福岡市東区の病児保育室「ぞうさんの家」、市の業務委託解除へNEW!

 福岡市東区にある小児科「ならざき小児科」(事業者:(医)育慈会、楢崎亮代表)が開設・運営している病児保育室「ぞうさんの家」が、近日中に福岡市の病児・病後児デイケア事...

2019年08月20日 17:33

フェルナンド・トーレス氏、佐賀県の「SSPアンバサダー」に就任NEW!

 佐賀県は20日、8月23日に現役を引退するサガン鳥栖のフェルナンド・トーレス氏を県庁に迎えて「SSPアンバサダー」就任式を行い、山口祥義知事からトーレス氏へ「SSP...

2019年08月20日 17:25

【訃報】博多港振興協会の角川敏行前会長が死去NEW!

 博多港振興協会の前会長で博多港運(株)の前名誉会長・角川敏行氏が15日に死去した。

2019年08月20日 17:23

「平成挽歌―いち編集者の懺悔録」(15)NEW!

 私が週刊現代編集長だったのは平成4年から平成9年までの約5年半だった。販売に調べて貰ったら、この間の平均実売率は82%を超えていた。あの当時でも信じられないほど高い...

2019年08月20日 16:55

どうする?どうなる?社会保障(1)

 「老後に2,000万円が必要」という金融庁の報告書により、年金制度、さらには社会保障制度に注目が集まった。老後に必要な資金を発表して、投資などの資産運用を促すことが...

2019年08月20日 15:25

お盆期間の高速船「ビートル」~韓国人利用客が前年比約7割減

 福岡と韓国の釜山を結ぶ高速船「ビートル」のお盆期間(8月9日~18日)の利用客は3,728人で、前年比46.6%減だったことが分かった。

2019年08月20日 15:08

ニトリ販売のレンジ台、商品転倒の恐れで約1万7,000台がリコール

 (株)ニトリホールディングス(本社:北海道札幌市、白井俊之社長)が、2018年8月21日から19年7月14日の期間に販売したレンジ台が、重量により底板に亀裂や割れが...

2019年08月20日 14:16

拡大を続ける健康食品市場

 生活者の健康志向の高まりを背景に、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品といった公的制度の導入も進み、健康食品市場は1兆円を超え拡大を続けている。

2019年08月20日 14:00

【交通取締情報】21日、福津市で実施

 福岡県警は21日(水)、福津市で可搬式オービスによる交通取り締まりを実施する。

pagetop