2024年04月20日( 土 )

【ネクスト(次世代)カンパニー】「のるーと」でバス事業の新たなビジネスモデルを(前)

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ネクスト・モビリティ(株) 代表取締役社長COO 田中 昭彦 氏
代表取締役副社長CSO 藤岡 健裕 氏

 西日本鉄道(株)と三菱商事(株)は今年4月、新たなモビリティサービス(以下、MS)として、AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の実証運行をアイランドシティ(福岡市東区)で開始した。「のるーと」とは、タクシーとバスの間に位置する乗り合いサービス。利用者はスマートフォンアプリで配車予約し、指定の乗車場所から目的地方面の降車場所まで乗車する。配車やルート選択などの運行管理はAI(人工知能)が行うのがウリだ。

 この「のるーと」を運営するのが、両社の合弁会社ネクスト・モビリティ(株)だ。合弁会社のカタチをとっているが、役員は両社現役社員であり、両社協業での新規事業へのチャレンジという意味で、社内ベンチャー的位置付けに近い。両社は、なぜ合弁会社を立ち上げてまで、MS事業に乗り出したのか。

ネクスト・モビリティが運営する「のるーと」

今のバス事業に対する危機感

 ――ネクスト・モビリティ設立の経緯は?

 藤岡健裕氏(以下、藤岡) 三菱商事(株)では、長年、自動車関連事業を行っている。要は車を売るビジネスだが、世の中の趨勢を見据えると、車を売るだけでは続いていかないという危機感がある。技術革新の流れを捉えたサービス領域での新規事業をつくっていくことで新たな成長の柱へと育成できないか、考えた。そこでMSに着目した。ただ、三菱商事としてオペレーションを行っていないので、オペレーターと組む必要があった。高い次元で、新しいMSを実現するというビジョンで一致した西日本鉄道(株)と組むことになった。

 西鉄は路線バス事業を営んでいるが、「このままの形態では長期的には続かない」という危機感があった。西鉄に限らず、全国のバス会社には、地域の皆さまの足としての路線バスネットワークをどう維持していくか、どうやって運転手を確保していくかという大きな課題がある。

 今回のオンデマンドバスは、それらの課題解決のため、三菱商事が提案した。オンデマンドバスは、これら課題解決の処方箋になるのではないか、という仮説があった。まずはそれを検証してみようということで、西鉄と一致したわけだ。

 オンデマンドバスについて、具体的に提案したのは昨年3月ごろ。三菱商事と西鉄は、その前から福岡空港の運営、海外の不動産事業などで協業していた。地域交通、モビリティについても、2017年夏ぐらいからディカッションをしていた。オンデマンドバスに絞り込んだのは、昨年3月、4月ごろだった。AI(人工知能)に関しては、海外のベンダーを含め、数社を比較検討した結果、今回カナダのSpare Labs社の技術提供を受けることになった。

 三菱商事にMS事業推進室ができたのは18年4月。その前は、プラットフォームビジネス推進室という名称だった。三菱商事としてモビリティに本格的に取り組み始めたのは17年ごろからだ。私は現在も三菱商事に在籍しており、ネクスト・モビリティへの移籍ではなく、兼務だ。

 ――西鉄が新たなMSに挑戦する理由は?

 田中昭彦氏(以下、田中) 未来モビリティ部は今年4月にできた新しいセクションだ。どのように人を運ぶか、どうやって移動するかなどの自動車をめぐる話は、世界中で話題になっており、これまでにはないMSが模索されている。

 西鉄としても、「今までのビジネスモデルではやっていけなくなる」という問題意識があった。そこで、MSの未来像を描こうということで、新たなセクションを設置し、私がその旗振りをすることになった。未来モビリティ部に配属される前は、ICカード「nimoca」のバス機器開発や他地域展開、スマートフォンアプリ「にしてつバスナビ」の立ち上げなど、バスのオペレーションに関する仕組みづくりを担当していた。私も西鉄とネクスト・モビリティとの兼務だ。

 ネクスト・モビリティのオフィスはあるが、主な業務は西鉄の福岡のオフィス、三菱商事の東京のオフィスで、それぞれ業務委託というかたちで分担して業務を行っている。ネクスト・モビリティ専属のスタッフは役員以外いない。実質的には、西鉄と三菱商事の共同プロジェクトだ。

 ――ベンチャー企業なのか。

 田中 社内ベンチャー的位置づけではある。

 藤岡 西鉄と三菱商事の共同のチャレンジだ。

「のるーと」アプリのデモ画面

(つづく)
【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 昭彦
所在地:福岡市博多区博多駅前3-4-25
設 立:2019年3月
資本金:1億5,000万円
URL:https://www.next-mobility.co.jp

<記者プロフィール>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)

立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com

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