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2019年08月13日 07:30

ラグビー界を改革できる唯一無二の存在・森新会長

『ヒゲ森』の愛称で、選手、指導者そして現在は協会の会長として日本ラグビー界に貢献し続けている森重隆氏。まもなくアジア初のラグビーワールドカップ2019TM日本大会(以下W杯)が開幕する。その記念となる年に日本ラグビー界のリーダーとして白羽の矢が立ったことは、抽象的であるが運命めいたものも感じられる。「W杯後の日本ラグビー界をより進化・発展させること」を使命としている森会長の描く将来像とは。

企業オーナーとしては初

 日本ラグビーフットボール協会(以下JRFU)は、1926年11月30日に『日本ラグビー蹴球協会』として発足した中央競技団体である。1928年にJRFU初代会長として高木喜寛氏が就任。以降の歴代会長については【表】を参照にしていただきたい。

※クリックで拡大

 森重隆会長までの過去歴代会長13名の経歴について調べると、各界の名だたる紳士であることがわかる。そして、競技歴の長短はあるが、全員がラグビー競技者として活躍している。日本代表での出場歴を有するのは、8代目磯田一郎氏、9代目川越藤一郎氏。3代目の香山蕃氏は初代日本代表監督として活躍した。九州・福岡にゆかりのある人物では、4代目湯川正夫氏が八幡製鐵所、5代目横山通夫氏は若きころ、九州電灯鉄道(現・西日本鉄道)でラグビー、ビジネスともに実績を残した。

 そして、過去13代の方々は、医師、政治家、経済界をリードする企業のトップや経営幹部として能力を発揮し、それぞれの分野で大きな功績を残した。

 14代目森重隆会長は、過去の13名と照らし合わせると、3つの異なる経歴を有している。1つ目は、福岡市在住者として初めての就任。2つ目は、高校ラグビーの指導者を経験していること。森会長は1993年から2015年まで母校・福岡県立福岡高等学校ラグビー部のコーチ・監督を務め、10年には全国高等学校ラグビーフットボール選手権出場に導いた。3つ目は、企業のオーナーであること。明治大学卒業後、新日本製鐵釜石製鉄所に入社し、社内業務に就きながら同社ラグビー部の日本選手権7連覇の礎をつくった。

 30歳で引退すると故郷・福岡に戻り、家業である森硝子店にて再スタートし、91年に同社の3代目として代表取締役に就任した。創業者は森会長の祖父(森菊重氏)で、大正期に創業し、今も地域に根ざした事業を展開するオーナーである。過去JRFU会長に就任した企業のトップは存在するが、オーナー社長はいない。3代目であるが、95年脈々と続く事業を守り進化させ続けるオーナーとして日々前線に立って奮闘している。

 記者の私見だが、高校ラグビーの指導者、地場企業のオーナー経営者である森会長は、これまでの会長より極めて現場に近いリーダーだといえる。なぜなら常に現場に立ちながらマネジメントを実践しており、どのような立場に関わらず、誰とも実直で誠実・丁寧なコミュニケーションを図るなど、人との関わりと対話を重要視する。

信義を重んじ人に寄り添う

 森会長は、「重隆さん」と皆から親しみを込めて呼ばれている。「重隆さんは、豪放磊落です。一方で、自分以外の人々には、1人ひとりの個性を見極めながら、それぞれに合ったコミュニケーションをとりながら、会社の経営マネジメント、そしてラグビーでの活動に励まれています。信義を一番大切にし、人情に厚く、仲間を大事にされる方です」(地場業界幹部)。

 あるエピソードを森硝子店関係者から聞いたことがある。ある社員が酷く落ち込んでいる様子を見て森会長は、「ちょっといいか」と告げて、その社員と一緒に散歩に出た。2人でゆっくり歩きながら森会長は雑談を挟みながら、その社員の話に耳を傾けたという。「約1時間散歩して、社長が親身になって話を聞いていただいたおかげで、元気になりました」。その社員はその日を境にこれまで以上に仕事に打ち込み、充実した日々を過ごしているという。

 福岡高校の監督時代、森会長が指導している光景を何度も見たことがある。時には厳しい言葉を発することもあった。他方、選手たちをじっくり見守ることも忘れていなかった。発展途上の選手に対しては、きめ細かくわかりやすくラグビーの基礎技術(ランニング、パス、タックル)を指導されていた。その言葉の1つひとつに血が通い、心が込められていると確信できた。

 インタビューで、「次世代の子どもたちがラグビーを存分に楽しめる風土をつくる」旨のコメントをされた森会長のラグビーと子どもたちに対する愛情が当時の指導光景から垣間見られたことを思い出す。

 森会長は、日本代表に選出されて27の国際試合に出場している。俊足、四次元のステップ、巧みなパスワーク、強力で堅実なディフェンス(タックル)は伝説となっている。新日鉄釜石ラグビー部7連覇の礎を築いた中心人物であったことは明白で、競技力や戦術が目覚ましく進化し、ルールが当時から大きく改定されている現在においても、当時の森会長が築き上げた新日鉄釜石のラグビーには大いに参考になるプレーや戦術が存在する。

 森会長が述べた通り、日本ラグビー界にとって厳しい時代の真っ只中での会長就任であることはたしかだ。W杯後の動向について、前回(2015年イングランド大会)のブームが一過性に終わったように、将来にわたって日本ラグビー界が進化し続けるための具体的な方策と実効性が問われていくこととなる。トップリーグの観客動員など社会での認知度、スーパーラグビーの2020年シーズンでの撤退予定などJRFUは難問を抱えている。国内プロリーグ創設の是非も問われる。過酷な仕事になる。

 「心身を捧げる」と並々ならぬ覚悟で挑む森会長。新たな理事会メンバーも多士済々で、ラグビーやそれぞれの分野で経験を積んだ百戦錬磨の人物がそろったという印象が強い。

 すでに森会長は、全国の自治体に自ら足を運ぶ活動を始めている。また、ほかの理事もそれぞれの役割をまっとうすべく行動を開始している。

 これまでにない日本ラグビー界へと改革すべく、新たな風を吹かせることができるか。大いに期待しつつ、森会長の手腕を見守りたい。

【河原 清明】

▼関連リンク
次世代の日本ラグビー界が進化、発展するために(前)

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