2024年04月16日( 火 )

直面する人手不足と採用 解決のカギは健康経営(前)

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東宝タクシー(株) 代表取締役社長 大野 慶太 氏

 「健康」という今の高齢化社会に潜む課題をいち早く見出し、社員の健康づくりのための「健康経営」に積極的に取り組んでいる。心のこもったサービスをする企業として、人手不足や人材採用の課題を乗り越えることを目指す、これからの時代の経営のあり方を東宝タクシー(株)代表取締役社長・大野慶太氏に聞いた。

高齢化の問題は「年齢」ではなく「健康」

代表取締役社長 大野 慶太 氏

 高齢化社会の問題は、「年齢」ではなく「健康」だと東宝タクシー(株)代表取締役社長・大野慶太氏は話す。タクシー業界は年齢層が高く、平均年齢が60代だ。東宝タクシーは約130名のドライバーが所属しているが、これまで生活習慣病などで年に1人が亡くなるという現実に直面してきた。そして、社員のお葬式に行く度に対策はないだろうかと感じてきたことが、社員の健康増進に企業として取り組む「健康経営」を始めるきっかけになった。

 タクシー業界は深刻な人手不足だ。「入社する人の多くは50~60代で、ドライバーが若年層にシフトするのは現実には難しい。年齢に関わらず、働きたい人に働いてほしい」と大野氏はいう。

 健康で働く意欲さえあれば、生きている時間が長い方が、人と接するドライバーとして豊富な人生経験を生かせる。しかし、ドライバーは乗客の命を預かるため、健康でないと、安全面から仕事を任せられない。健康を害すると交通事故につながるため、ドライバーの健康が安全に大きく関わってくる。健康診断で異常があった人の割合(有所見率)は一般産業では54%だが、タクシーなどの道路旅客業は72%と高い。これはタクシー業界の平均年齢が60代などと高いためだ。

 やはり、年齢とともに、健康に「黄色信号」が灯ることが増える。タクシー業界に入社する50~60代は、これまでの生活習慣から血圧やコレステロールが高いなどの健康リスクを抱えている人も多い。働きたい人に元気で長く働いてもらうには、健康でいることが必要だ。そのため、入社してから健康が悪化することを防ぎたいと大野氏は感じてきた。

健康経営にどう取り組んでいるのか?

 タクシー会社では、運転手が出発する前に、車の整備を点検して、安全上の注意を伝える出庫点呼という業務がある。東宝タクシーでは、このタイミングで、1人ひとりの血圧、体重、体温を測り、睡眠が十分取れているかをチェックする。「日常健康見守りサービス(東芝情報システム(株))」のシステムを使って、体調を「見える化」することで、健康に問題がある場合には産業医の先生に診てもらい、早いタイミングで対応できるようにしている。

 タクシー運転手は勤務時間が長いため、深夜に食べるなど食生活が不規則になりがちだ。栄養が偏った食事や短い時間で急いで食べる習慣があると、健康を害する原因になる。そのため食生活を改善することが健康づくりのカギと考えて、栄養バランスが良く、食品添加物を使っていない「タベナル((株)AIVICK)」のお弁当を1食500円で社内で購入できるようにした。今では、健康のことが気になっている社員が健康管理できるサポートになっている。

(つづく)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:大野 慶太
所在地:神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央2-6-27
設 立:1953年6月
資本金:1,000万円
売上高:(18/3)7億8,600万円

(後)

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