2024年04月24日( 水 )

意外と守られていない道路法とそのワケ

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 車両は普通車両と特殊車両に大別され、ある一定の基準(サイズや重さなど)を超えた車両は特殊車両とみなされる。トレーラーや海上コンテナ、クレーン車などがその代表だが、このような特殊車両が自由に道路を走れるかといえば、そうではない。

 道路は公共のものであり、特殊車両が通行することで路面に破損が生じるほか、事故が起きれば重大事故につながりかねない。行政はどの特殊車両がどこを走っているかを把握しておく必要があるため、許可制度を設けている。それが道路法で定められた「特殊車両通行許可制度」である。特殊車両を走行させる場合は道路管理者に申請し、手数料を納付。許可証が交付されれば、それを車両に携帯しなければならない。
詳しくはコチラ→特殊車両通行許可制度について

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 実際の申請状況はどうなっているのか――。特殊車両を走行させている九州地方の企業5社について、九州地方整備局に対し各社の「特殊車両通行許可証」の開示を求めたところ、2社は通行許可が確認できたのに対し、ほか3社は「文書不存在」で申請を行っていないことがわかった。サンプル数は少ないものの、ルールが徹底されていないことはたしかなようだ。

 運送や建設の業界団体で周知活動を行うなど、いまや常識となっている制度ではあるが、コンプライアンスの観点からはまだまだ普及は進んでいない。近年、道路管理者や県警などの合同取り締まりが強化されているが、違反が発覚しても口頭での注意や文書指示にとどまることが多いという。是正されないと罰則が適用されるが、全国的にみてもそのような事例は聞いたことがない。

 このような見えない部分にこそ、企業倫理が表れるのだろうが、上述のように申請はタダではない。使用台数やルート数によって申請手数料は異なるが、一度の申請に「数十万円かかる」と答えた企業もあった。

 ある企業経営者はこう語る。「これだけの費用をかけて許可を取っても、正直あまり意味がない。取り締まりが厳しくないので、取得していなくても何ら変わらない。次は更新しないと思う。」――あくまでルールはルールだ。遵守するのが当然ではあるが、道路の保全など本来の目的を果たそうとするなら、取り締まりの強化は必要だろう。

 一方で、申請から許可証の交付まで数週間かかることも問題視されている。突発的な仕事の受注で特殊車両を走行させなければならない場合も出てくるが、許可証の交付を待つわけにはいかない。当然、許可証なしでの走行をせざるを得ない状況も発生する。こんなとき、取り締まりに遭ってしまうのは「運の尽き」というしかないのか。

【東城 洋平】

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