復興はまだまだ道半ば 長期スパンで、復旧・再生・発展へ
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2019年09月04日 12:00

復興はまだまだ道半ば 長期スパンで、復旧・再生・発展へ

朝倉市役所
朝倉市役所

安全・安心の地域再生と産業・経済の復興へ

 2017年7月5日から6日にかけて発生した「平成29年7月九州北部豪雨」。福岡県朝倉市や東峰村、大分県日田市などの地域を中心に、福岡・大分の両県合わせて274件の土砂災害が発生し、計42名の死者・行方不明者を出すなど甚大な被害がもたらされたことはまだ記憶に新しい。あれから早2年が経過―。「平成30年7月豪雨」や「大阪府北部地震」「北海道胆振東部地震」など、依然として豪雨や台風、地震などの自然災害の猛威を振るうなか、九州北部豪雨の被災地での復興の現状はどうなっているのだろうか。

 記録的な豪雨の影響によって市内各地で多数の山腹崩壊や河川の氾濫、浸水被害などが発生し、建物の全壊・大規模半壊372件に加え、死者・行方不明者36名と最も多くの人的被害を受けた朝倉市では、被災後の18年3月に「朝倉市復興計画」を策定・公表した。

「朝倉市復興計画」の各段階

 復興ビジョンとして「山・水・土、ともに生きる朝倉」を掲げ、(1)「安心して暮らせるすまいとコミュニティの再生」、(2)「市民の命を守る安全な地域づくり」、(3)「地域に活力をもたらす産業・経済の復興」の3つを基本理念としている。

 復旧・復興にあたっては、市民と市が主体となって、国・県や関係機関などと協働で各事業での連携を図り、相互に情報共有しながら取り組んでいく。計画期間は、17年の豪雨災害発生から概ね10年間としており、主に住宅や生活基盤、インフラなどの復旧に取り組む3年間の「復旧期」と、被災前の活力を回復する4年間の「再生期」、そして被災地を新たに活力ある地域として生まれ変わらせる3年間の「発展期」とおおまかに区分。各期とも将来の朝倉市の姿を見据えながら、段階的かつ着実に取り組んでいくとしている。

 復旧・復興を加速化する取り組みとして18年5月、とくに被害が大きかった8地区(松末、杷木、久喜宮、志波、朝倉、高木、三奈木、蜷城)に「地区別復興まちづくり協議会」を設置。継続的な協議を通じて知恵を出し合い、市民と一丸となった復興まちづくりを進めている。また18年7月には、朝倉市役所・総務部内に復興推進室を新設。ソフト面の事業を迅速かつ集中的に実施していくとともに、被災者への対応を一本化することで、復興に向けて市民1人ひとりに寄り添う体制を整えている。

 さらに19年2月には、復旧・復興を総合的、円滑に進めるための市復興推進委員会が発足した。これは被災地区のコミュニティ協議会やJA、商工会議所など関係機関の代表ら約20人で構成されており、復旧・復興に必要な事項を協議して市長に意見を述べるもの。これまでに2回の委員会を開催し、委員らからは避難所の自主運営や出水期のダムの放流、今後の住宅再建に向けた具体的な取り組みについて意見が出されている。

まだまだ残る爪痕と教訓を生かした防災体制

 現在、朝倉市では前述した「復旧期」の最終年度にあたり、生活基盤やインフラなどの復旧についてはある程度メドが付きつつあり、すでにボランティアによる支援はほとんど必要のないフェーズへと移行しつつある状況だ。とはいえ、豪雨災害がもたらした爪痕は、いまだ深く残されている。

 たとえば、とくに被害の大きかった市内8つのコミュニティのうちの1つである高木コミュニティ(約160世帯)。ここは市内でもとくに山間部に位置しており、他地域に比べると復旧・復興が遅々として進んでいない。また、住民の高齢化が進んでいることもあって、隣の三奈木コミュニティに移住しようとしている人も少なくなく、そう遠くない将来にコミュニティ消滅の可能性も出てきているという。

 「依然として約500世帯の方々が仮設住宅やみなし仮設、自主避難などによる避難生活を余儀なくされていることを考えると、まだまだ復旧は道半ばです。地域によって復旧・復興の状況に格差もあり、災害前の生活を取り戻すにはまだまだ時間を要します」と、朝倉市・復興推進室長の梅田功氏は語る。

 行政としても、今後の防災・減災のための基盤整備には力を入れている。河川や橋梁、砂防・治山施設、ため池、ダムなどの安全性の確認や、必要に応じた防災・減災のための安全対策の実施などのハード面の整備はもちろんのこと、ソフト面を中心とした地域防災力の向上にも注力。とくに被災の経験を得たことによる、地域防災計画や各種ハザードマップなどの見直しを行うとともに、自主防災組織の育成・強化や、災害からの教訓・記憶の継承による住民の防災意識の向上などの取り組みを進めている。

 「復旧・復興については概ね10年かかると考えていますが、1日も早く“ふるさと朝倉市”を取り戻せるよう頑張っていきたいと思っています。とはいえ朝倉市には、急速な人口減少による活力の喪失など、被災前から直面していた課題も依然として存在しており、単に元に戻すのではなく、人口減少に歯止めをかけ、市民経済の活性化が図れるよう産学官で連携して地方創生で切り拓いていく、“あさくら創生”も併せて進めていきたいと考えています。被災後、全国からたくさんの支援や応援をいただいたことについては、本当にありがたく思っています。忘れないでいただくことや、気にかけていただくことなど、たくさんの人と人とのつながりが今後の復興のための“元気の源”になりますので、今後とも継続的な支援をお願いできれば、と思います」(梅田室長)。

自治体に求められる安全・安心の防災体制

 朝倉市に隣接し、同じく豪雨により甚大な被害を受けた東峰村。同村においても18年3月に「東峰村復興計画」を策定・公表。単なる復旧にとどまらず、災害の教訓を生かしながら暮らしの再建や産業・経済の復興を成し遂げ、同村の総合計画で掲げる「美しい山里を継承し 豊かな暮らしを創造する 幸せな村」の実現を目指すとしている。

 計画期間は17年から24年までの8年間。こちらも朝倉市と同じく「復旧期」(~19年度)、「再生期」(~21年度)、「発展期」(~24年度)の3つのフェーズに分けられ、復旧期の最終年度である現在、社会基盤や産業基盤の早期復旧に向けての取り組みを進めている。東峰村においても、災害からの復興はまだまだ道半ばといった状況だ。

● ● ●

 朝倉市や東峰村に限ったことではなく、大規模な自然災害からの復旧・復興は一朝一夕には進まない。自治体に求められるのは、早急な復興のための政策はもちろんだが、被災時の被害を最小限に抑えるための、防災・減災を見据えたまちづくりだ。北九州市が災害発生の危険性が高い一部の斜面住宅地について居住を制限する検討に入ったように、それぞれの都市計画やまちづくりのなかで、平時から備えておく必要があるだろう。悲惨な被災の経験を教訓化し、二度と悲劇を繰り返さないために――。

【坂田 憲治】

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