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2019年09月06日 16:00

【日韓問題・インバウンドへの影響】岐路に立つ九州の観光業 戦略転換で課題解消を(後)

メディアがつくる空気に抗う発信力を

 メディア出身でもある松清氏は、日韓のマスメディアの対応にも苦言を呈す。「日韓両国のメディアはどちらも冷静ではありません。理由は簡単で、ネット上で(日韓についての)ニュースを出せばアクセス数が稼げるからです。その点では、韓国のメディアは7月から日本のメディアに近くなりました。韓国のメディアのなかには韓国語版と日本語版で翻訳が異なっているため、内容に相違があると指摘されてネット上で炎上する企業もあります」。

 福岡での韓国人観光客のインバウンド事業は、ほかの地域にないアドバンテージがある。入国手段に、荷物制限がないフェリーなどの海上交通がある点だ。対馬が観光地として栄えた理由がそこにあると同氏は指摘する。しかし、その対馬が、「ひどい状況」だったという。

 「対馬は比田勝港が大きく、9月上旬には240室を備えた東横インがオープンする予定です。しかし、今回の件で予約状況が芳しくないということでしたし、大きな免税店は客の入りが悪くガラガラ。そのうち1店舗は日本人にも開放していましたが、中に入ってみても買いたいと思えるほど魅力的な商品はありませんでした」

 その理由には、先述の3つの「ない」ものであり、対馬で手に入るもの、買えるものが限られることも要因に挙がる。「これまでは距離の近さから、それこそ宣伝しなくてもたくさん観光客がきていた。これを機に変化しなくてはなりません」と同氏。

 必要な情報発信は何か。「これまでは何の努力をしなくても観光客がきていた。来訪を促す情報も向こうも任せ。言ってしまえば『勝手にきてくれていた』状態でした。韓国人のインフルエンサーも今はヘタにやれば炎上して逆効果。適切な内容を日本側から発信し、ネガティブな反応に対しても細やかに対応する必要があります」。

人的交流が変化の鍵

 円高ウォン安進行がいつまで続くのか、という先行き不安はあるものの、その点では逆に、観光地としてではなく「就職先」としての発信も可能だ。先述の松清氏も、「日本で就職説明会をするにあたって、『インバウンド事業を始めます』と韓国人の学生には説明しています。実際、これで意欲のある学生がやってきます。日本語もできるから2つの市場が狙える人材です」とメリットを強調する。

 福岡県内の事業者でも韓国人学生をインターンシップで受け入れるほか、雇用するケースがある。飯塚市にある(株)カシマ製作所では今年、韓国大田(テジョン)にある短期大学・ウソン情報大学の卒業生を雇用した。その理由を鹿島克介代表は、「人材として技術が高かった」ことを理由に挙げる。

 「人手不足もありますが、技術的に中小企業でなかなか採用できないと感じました。採用した韓国人のキムさんはコミュニケーションも不自由ないし、日本の労働慣習にも理解があった」といい、キム氏も、「日本でものづくりに携わりたい」という希望があるなど、両者のマッチングがうまくいった事例だ。

 同氏は柳川市内の高校に通いながら3カ月間、インターンシップに従事。その後、カシマ製作所で面接を受けた。入社後にギャップを感じたのではと聞いたところ、「まったく感じなかった」という。その理由は、短大の講師陣に日本企業で勤務した経験がある人がいたからだという。

 同大学で設計を学んだ同氏に対して、「先生は、ものづくりの現場に立たなくては本当に良い設計はできない、日本企業に勤めたら最初は現場に出ることになるだろうと教えてくれた」と情報のアドバンテージが人材を生かしている。 

 鹿島代表は、「釜山大学のインターンも受け入れましたが、その人も優秀でした。今後も積極的に採用していきたい」と考えを示した。

鹿島克介代表(右)とキム氏
鹿島克介代表(右)とキム氏

変化が試される九州の経済

 取材のなかで判明したのは、これまでの韓国人向けインバウンド事業が団体客やツアー会社頼みだったという実態と、それでも変わりようのない「距離」だ。

 宿泊施設で出てきたキャンセルは、「ツアー会社が予約していたもの」(別府の宿泊施設)がキャンセルになったため。宿泊先と便を用意し、どこに観光するかは個人に委ねるフリープランが多かったのだが、そこに依存していた宿泊施設ほど苦しいのが現状だ。

 一方で、いかに嫌おうと、いかに非難しようと、日韓は隣国であり、歴史的にも物理的にも近い距離にあることに変わりない。そのことが、「福岡はアジアの玄関口」という言葉にはたしてどれだけ反映されているのか。アジアのなかにある国のいち地方が「アジアの玄関口」を名乗る奇妙さは、顧みられることがない。

 そんなわけはない、と思う人はぜひ街を出て、エスニック料理店を探すといいだろう。外国の料理というのは日本人向けに展開されるというよりも故郷の味を欲する同国人が集まるところだ。かつてはインドカレーを名乗っていた店がネパールカレーを掲げるようになったり、中華料理とは別に「台湾料理」を打ち出す店も出ている。韓国料理も昔ながらの焼肉から韓国のポップミュージック「K-POP」ファンが集まるカフェ・バーなど幅広くなった。

 円高に振れたことで逆に韓国に旅行する日本人も出てくる。交流のなかで互いに好意を積み上げていくことが、地道だが着実な交流であり、それこそが「草の根の交流」そのものではないだろうか。

(了)
【小栁 耕】

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