2024年04月20日( 土 )

民意の付託を受けた議会として再配分機能を充実させる(1)

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第69代福岡県議会 議長 栗原 渉 氏

 5月16日の福岡県議会臨時議会で、栗原渉氏(朝倉市・朝倉郡選出/自由民主党/当選4回)が第69代福岡県議会議長に選任された。今年4月の県議選改選前に議会運営委員長を務めていた栗原氏は、1965年生まれの53歳。県立朝倉高校を卒業後、太田誠一衆院議員の書生秘書を兼任しながら大学を卒業し、太田氏の公設秘書を経て2010年に初当選。以来、自民党県連の若手ホープとして着実に実績を積み重ねてきた。保守分裂となった県知事選の後遺症から揺れる県議会をどう運営するのか、栗原氏にかかる期待は大きい。

(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役社長・児玉 直)

県民の生命と財産を守る、この1点に力を注ぐ

 ――改めて、議長就任にあたっての抱負をお願いします。

第69代福岡県議会 議長 栗原 渉 氏
第69代福岡県議会 議長 栗原 渉 氏

 栗原議長(以下、栗原) 当然のことでもありますが、地方議会の構成員は、直接選挙を受ける県知事と同じく直接選挙による民意の付託を受けており、民意の具現化としての議会で意思決定がなされます。国は議院内閣制ですが地方は二元代表制であり、ある意味では議会の議決が非常に重要になります。

 あえていえば、議決権をもつ議会のありようが国に比べて地方自治のほうが重いという現実があります。そういうことをふまえますと、県議会の議長という職をお預かりすることは極めて緊張感をもたねばならないと気を引き締めているところです。

 県議会は会派制ですのでそれぞれの会派の意思や考え方がそれぞれあります。同時に会派それぞれの方々が選挙区で付託を受けているわけですから、会派での議論とそれを受けた会派の意思、それらをどう集約するのかということですね。ここで大切なことは「決められない政治」は許されないということです。

 議長の仕事としては、議会のルールに則って進めることが大前提になりますので、議論が起きた場合にはルールを基準として結論を出していく。極めて重い職責であり、緊張感をもって取り組まなければなりません。民意を受けた者同士の議論を重ねていく、その繰り返しで結果を出していく作業ですから、6月議会でもそうでしたが、時として非常に激しい状況にもなりますね。

 ――8月にはまた集中豪雨が九州北部を襲いました。議長の故郷である朝倉周辺はどのような状況だったのでしょうか。

 栗原 水が溜まる地域があり、川から越水したところもあります。2017年の被害が非常に大きく、3年連続で豪雨による被害が出た状況です。ここ2年あまりで応急復旧から仮復旧を経て、昨年本工事に入ったところです。私も30年ほど政治に携わってきたなかで、災害復旧としては行政各部門、地域の方々の力、地元で現場を動かす業者さんや企業の方もそうですが、皆さまが一生懸命に向き合っていただいているのは間違いないと思います。

 ――これだけ災害が続くと、毎年備えなければならない時代かもしれませんね。

 栗原 私は10年4月に初当選しましたが、その年7月も旧甘木地区で災害が出ました。災害のリスクをどう考えるかというのは一番大事なところで、いつどこで発生するかわかりませんので、県議会としてあらゆる手立てを考えなければなりません。

 河川だけではなく山もありますし溜池もあります。居住地域の防災ももちろんです。河川のことでいえば福岡県では筑後川と遠賀川を始め一級河川があり、県南でいえば筑後川をマスタープランでどう治めていくのか、どう利用するのかも含めて計画を立てています。

 これは私見ですが、筑後川の治水能力は1953年の水害以降に相当強固な堤防をつくってきましたから、そう簡単に筑後川が氾濫することは考えにくい。問題は、筑後川へ流れ込んでいる支流の水をどう治めるかということで、これからの大きな課題だと思います。

 河川整備は一定の計画のもとで行っていますが、計画はこれまで経験した水の量が基準になっています。経験したことを基準にするのは行政のありようなのでしかたありませんが、たとえば「想定外」の事態にどう備えるのか。こうしたことにも、調査を基に計画をたてなければならないでしょう。

 県議会としての使命は、まずは県民の生命と財産を守るということが一番の使命でもあります。そのわかりやすい例が防災計画です。17年の大災害で感じたのは、災害が起きた場合にはもちろん失ったものを取り戻す作業をしますが、さらに災害によって経済活動が停滞してしまうことの影響も大きいわけです。諸外国ではいまだ内戦や紛争が続いているがために経済が二の次になっている地域もあります。

 災害も性質は同じで、大災害によって生活も経済も一気に非日常の世界に置かれるわけです。これを回復するためには膨大な手当てが必要になります。そうであるならば、防災や減災のための先行投資としての整備や支援の再配分ははるかに効率が良いでしょう。こうしたことは一度にはできませんので、継続してやり続けなければなりません。

(つづく)

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