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2019年10月07日 10:50

まちづくりの総仕上げには40年かかる~シャンポール大名から学ぶ

シャンポール大名
シャンポール大名

シャンポール大名のデビューに衝撃

 福岡市の中央区役所正面には、地域の象徴ともいえる歴史あるマンション「シャンポール大名」が静かに存在感を主張しながら佇んでいる。建設されたのは、昭和56年(1981年)のことである。

 中央区役所と同マンションとの間をはしる明治通りの地下には地下鉄が走っており、ようやく都市・福岡でも地下鉄が完成し、モダンな街並みが登場しようという矢先の時期でもあった。

 同マンションを企画・販売したのが、東京に本社がある大蔵屋である。同社は一時、業界のリーダー格を担っていた時期もあったのだ。

 何が衝撃だったかというと、同マンションは天神のど真ん中まで徒歩5分の場所に位置していたのである。巷では「はたして350戸の共住マンションが売れるのか?需要があるのか?」という疑問が蔓延していたのだが、同マンションは即日とまではいかなかったが、短期間で完売した。結果、不動産関連業者たちは「福岡でも職・居接近の生活パターンを求める需要が高まっていたのだ」と認識。己の浅はかさを知り、衝撃を受けたのである。

 東京ではそのころ、たしかに「職・居接近」のライフスタイルが流行しはじめていた。だが「福岡で流行するには、いましばらく時間を要するだろう」という見立てが主流だったので、完売という事実に直面し、衝撃を受けた専門家たちは「いよいよ福岡も東京並に最先端のものが流行する大都市に変貌した」と溜息をついたものだ。

 しかし、現実は、この「職・居接近」のメイン通りへと様変わりするまでに40年という歳月を要している。

大蔵屋は苦しまぎれに売り出す

 当時、大蔵屋九州支店の課長に就いていたのが、ユニカ社長・緒方寶作氏だった。同氏の話を総合すると下記のようになる。

(1)もともと、この不動産は緒方竹虎氏の邸宅で1,000坪あった(同氏は朝日新聞社副社長、自由党総裁、自由民主党副総裁の要職に就き、ジャーナリスト・政治家という華麗なるキャリアがある)。

(2)大倉屋が買収する前は港湾土木の会社が所有していた。昭和48年当時、坪25万円で買収していたらしい。政令都市になったばかりの福岡市中心部の一角が、この価格で取引されていたとは驚きである。

(3)同社がこの土地を手にしたのが昭和52年のことである。坪60万円で取得したとか。現在、現地の最大価格評価は坪900万円となる。42年経過して15倍に高騰したことになる。

(4)この場所に「職・住接近のモデルを築こう」という野心的な構想のもとに企画されたものではないことは事実のようである。スタッフ一同、「都心のど真ん中に350戸のマンションを建てても売れるわけがない」と不安いっぱいだったとか。

(5)不安となる根拠として、社内全体でも350戸の販売実績が無かったことが挙げられる。大蔵屋の全国での実績を見ても東京でも都心部においても300戸以上の大型物件の売出実績がなかったのである。

 同社九州支店の販売ノルマは400戸だったとか。緒方課長は「1年分の販売戸数に匹敵する物件を、この大名で売り出すのだぞ。効率的ではないか!」と社員たちをなだめすかせつつ、鼓舞した結果、「シャンポール大名」が誕生したのである。

40年してようやく追いつく

 平成の始めに「けやき通り」が有名となった。地名でいえば警固・赤坂に該当するゾーンである。メイン通りの明治通りに比較すると格としては2番目にあたる通りとなる。しかし、「けやき通り」という先行イメージの割には、それに相応しい建物は稀有であった。多少話題となるマンションは建ったが――。

 現在、「けやき通り」の木々は太くなり、木自身の風格が漂う雰囲気は心地良い。ただ街並みのブランドイメージを向上させるような建物が増えた様子はない(多少のリッチ層が定住した功績はある)。

(左)MJR赤坂タワー、(右)プレミスト天神赤坂タワー
(左)MJR赤坂タワー、(右)プレミスト天神赤坂タワー​​​​​​

 肝心の大名の明治通りはどうなったのか!「シャンポール大名」は添付写真の通り、改修工事を行っている(権利者が多数存在しており、建替えについて困難視されている)。その西隣(JT九州支店跡地)に大和ハウス工業が都心部中心型マンション「プレミスト天神赤坂タワー」を販売した。さらに一件隣にはセキスイハウスがホテル建設に奔走している。その西側にはJR九州がマンション「MJR赤坂タワー」を売り出し、完売の様相である。

 ここに至って繁華街型「職・居」のメイン通りが誕生した。いや、一部には都市中心シルバーゾーンの誕生ともいわれている。「ニューリッチ層」が大名地区に定住することになったのである。

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