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2019年10月15日 16:50

セブン&アイのリストラ~業態が壊れていく 

 

 小売業の世界にはチェーンストア理論という広く知られた戦略がある。たくさんの店をつくり、より多くの売上を獲得し、価格交渉力を大きくしてさらに店舗数を増やし、それによる市場制覇を目指すという考え方である。世界の大手小売業は例外なく多くの店をもち、それによる市場制覇を目指してきた。しかし、その戦略が今、危機に瀕している。

 

 先般、セブン&アイが傘下の百貨店と総合スーパーの従業員3.000人を削減すると発表した。もちろん、これは突然発生した緊急事態ではない。長年の経営不振が積み重なった結果だ。

 消費者の嗜好性と調達手段はこの半世紀、劇的な変化を続けてきた。行商が業種店に取って代わられ、それがスーパーへと姿を変えた。荒物屋はホームセンターになり、酒店はコンビニになった。だが、業態を変えればすべてがうまくいくということではない。

 業態の強さは平均であり、個別に見ればそれぞれ大きな違いがある。たとえば、その強さが強調されてきたコンビニの実態がそうだ。業界最強といわれるセブンイレブンも毎年、大量の出店を行うものの、その半分を閉鎖するといったことを繰り返して現在がある。しかも、閉鎖にともなうリスクの大半はフランチャイジーといわれるオーナー個人が負う。閉鎖を免れた店も、少なくない店がぎりぎりの採算での運営を強いられるという現実がある。

 このことは業態としてのコンビニが限界値にきたことを物語っている。かつて、セブンイレブンジャパンのカリスマ経営者・鈴木敏文が不振を極める本体であるイトーヨーカ堂に対して、「改善を極めれば生き返る」とその改善に腐心した。しかし、彼の思いは叶わなかった。陳腐化した業態に処方箋はないのだ。

 そんな中で順調に成長を続けたコンビニだが、そんなコンビニにいま、転機が訪れている。契約で締めあげられ、理不尽な現実にも声を挙げにくかったコンビニオーナーが、ここにきて本部に対して法的措置も含む抗議の声を挙げ始めたのだ。

 史上最強といわれるコンビニ業態のほころびが、本格化したということだ。その大きな原因として過当競争による売上の停滞と労働力人口の減少からくる人手不足があげられる。

 昨今、コンビニのレジには東南アジア系の従業員が目立つ。たとえば、外国人対象の日本語学校を訪ねると校内の掲示板にはコンビニ各社店舗のアルバイト募集が所せましと貼られてある。時給も高い。それでも応募者は少ないという。

 はたしてこれらの問題を解決する妙手はあるのか?物販だけでなく、ATMなど複数のサービスを付加したコンビニがさらなる利便機能を付加するのは容易ではない。過当競争による売上の低迷に加えて、人手不足という2つの苦難を抱えてしまったコンビニの量的拡大はもはや絶望的である。

 さらにコンビニの問題は、ただその企業だけの問題に終わらない。コンビニ最大手のセブンイレブンの親会社はセブン&アイである。百貨店、大型、小型スーパー、金融、レストランなどの複合業態を抱える我が国第二位の小売業だが、その利益の大半はコンビニによるものだ。その柱が揺らぐということは企業全体が大きな問題を抱えるということに他ならない。

 表はセブンイレブンの業態別の経常利益を表したものだ。コンビニ以外の小売業態は極めて深刻な状況にある。

 これはセブン&アイだけの問題ではない。世界中の大型小売業でも同じような問題が起きているのだ。

 さらにここにきて、従来型のリアル店舗を多数持つ大規模小売企業を窮地に追い込んでいるのはEC小売業だ。ECの大きな特徴は無限の商圏にある。この違いこそ、店ごとに異なる商圏があるリアル企業との決定的な違いだ。加えて、店舗というコストに気を遣う必要もない。

 従来型リアル店のもう1つの問題が消費者のライフスタイルにスマホが大きな比重を占めるようになったことだ。スマホ利用の買い物にはリアル店舗のデメリットであるわずらわしさがない。

 スマホを使いこなすミレニアル世代以降の若者はどちらかというと希薄な人間関係を好む。そんな世代がこれからの消費の主役になる。ECの拡大は近くない将来、消費全体の25%に届くだろう。そうなる時、現在の業態がそのままなら彼らに生き残るすべはない。

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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