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2020年01月28日 07:00

九州から首都圏に進出 年商5,000億円、「食」と「住」の専門商社 一樹百穫 

卸売業
ヤマエ久野(株)

M&Aで事業拡大

代表取締役社長COO 大森 礼仁 氏

 「食」と「住」の卸売商社、ヤマエ久野(株)が積極なM&A(合併・買収)で事業を拡大している。2020年3月期の売上高は前期比6.4%増の5,200億円と5,000億円を突破する見込み。九州に軸足を置きつつ、視線の先にあるのは首都圏市場だ。

 同社が手がける食の事業領域は幅広い。一般食品や温度管理の必要なチルド、生鮮、惣菜類、食材原料のほか、パンや菓子の原料となる糖粉、畜産飼料などにおよぶ。食品卸では九州でトップを走り、販売先は九州一円から中国、関西、関東のスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、外食産業、中食市場などに広がる。

 売上の8.5%を占める住宅資材は戸建て住宅に必要な木材や建築資材を工務店や建材店に販売するのが主な業務。同社はさらに、グループ会社を通じて運輸やシステム開発などの事業を幅広く手がける。

 卸売業と一口に言っても、業務内容は多岐におよび、しかも近年はますます高度で複雑化している。メーカーから仕入れた商品を小売店に販売するだけなのは過去の話で、消費者ニーズをリサーチし、取引先小売店での売れ筋商品の品ぞろえや棚割りを提案するとともに、情報システムを駆使し、必要な時に必要な商品を必要な量だけ取引先に届けることが求められる。

 卸の機能の中でも重要なのが物流だ。同社はいち早くその重要性に着目し、九州の主要拠点に大型物流センターを整備していった。日本ではかつて問屋無用論が囁かれたが、商品が多種多様に広がった今日では、問屋の物流機能なしには商品は円滑かつ迅速に小売店を通じて消費者の元に届かない。

 現在、九州の主だったスーパーや大手コンビニの物流を包括的に請け負う。複数の同業者から納品された商品を同社のセンターで荷受けし店別に仕分け・梱包し共同配送する。こう言ってしまえば簡単なようだが、物流元請けになるには高度なノウハウと物流提案力が欠かせない。設備投資や経費はかさむが、小売店とは安定した取引が可能になる。

福岡市博多区博多駅東にある本社
福岡市博多区博多駅東にある本社
本社2階のオフィス
本社10階のオフィス

卸では異例の高成長

 住宅資材でも商品を単に販売するのでなく、たとえば木材では部材に加工して住宅建設現場に納品する「プレカット」という業務を行っている。従来大工さんが行っていた図面書きと裁断を同社が代わってコンピューターで処理する。品質や納期が安定するだけでなく建築現場では工数が大きく削減された。

 卸売は一般に成熟業種のイメージが強いが、同社は高い成長を続けている。19年3月期の連結売上高は前月期比14.1%増の4,887億円で、過去5年間の成長率は40%増という高さだ。

 成長の原動力は積極的なM&Aによる営業地域と事業領域の拡大だ。17年からの2年間で関東中心に5件のM&Aを成功させた。

目指すは"グッド&ビッグカンパニー"

 同社は2017年8月、関東の業務用酒類卸・みのりホールディングス(株)(本社東京)をグループ化したのを皮切りに、千葉県の酒販卸・(株)春日や、熊本・福岡県で建設加工業を営む(株)日装建(熊本市)、首都圏でホテルやレストラン向けに高級ワインや食材卸を手がける(株)TATSUMI(東京)、関東の住宅資材卸大手・HVCホールディングス(株)/ハイビック(栃木県)と2年足らずの間に5件のM&Aを実施した。

 M&Aに乗り出したのは、九州での食品卸事業はシェアが高く、人口減もあって今後大きな成長を期待できないためだ。「将来に向け事業分野を多様化し経営を磐石にする」(大森礼仁社長)。といっても、やみくもなM&Aはしない。本業の周辺分野であることと、業績が伸びていることが基本条件だ。

 たとえば、みのりホールディングス(株)は同社が直接手がけていない酒類の業務用卸で、連結売上高354億円、経常利益3億8,200万円を上げていた。年商120億円のTATSUMIとともに、首都圏で業務用市場を一気に拡大できる。HVCは子会社を通じプレカット加工も手がけ、年商204億円に対し経常利益6億5,600万円を上げる優良企業。ヤマエ久野の住宅資材事業は九州だけだったが、関東に進出を果たした。

 もう1つの狙いは九州以外の市場拡大。ゼロから開拓するのに比べ、時間をかけずにシェアを拡張できる。九州以外の占める売上比率は前期の33%から20年3月期には40%に高まる見込みだ。

 M&Aは利益にも貢献し始めている。20年3月期は売上高の伸びが6.4%なのに比べ、経常利益は50億円と28.2%伸びる見通し。グループ化した会社の利益が増加するためだ。

鮮冷福岡支店のチルド倉庫
鮮冷福岡支店のチルド倉庫

 九州市場は拡大の余地が少ないとはいえ、「攻め」を続ける。15年9月、総額約60億円をかけアイランドシティ(福岡市東区みなと香椎)に建設した鮮冷福岡支店は総床面積が1.4万m2超で、冷凍冷蔵食品のほか生鮮や米飯などを扱う。大量の店舗別仕分けが可能なデジタル仕分ラインや、冷凍から冷蔵に温度帯変更できる装置など省力機器を数多く導入した。さらに19年1月、鹿児島市谷山に延床面積1.7万m2の南九州向け物流施設を完成した。

アイランドシテイの鮮冷福岡支店
アイランドシテイの鮮冷福岡支店

 20年8月には熊本市東区に延床面積約6.4万m2の九州中部向け大型物流施設を建設する。九州では最大級の規模で、熊本市内に分散していた拠点を統合、物流を効率化する。

 海外にも目を向ける。18年4月、イタリアの大手スーパー、「コープイタリア」のミラノ市内アローナ店に日本食のテナントを開設。19年9月末で12店舗に拡大し、21年度末には30店に増やす計画。日本食ブームにより好調で、100店は出店が可能と見ている。

 事業の多角化に社内人材だけでは対応が難しくなったとして、19年度から途中採用を大幅に増やしている。なかにはメガバンク出身者もいるという。「質だけでなく、今後は規模も追求する“グッド&ビッグカンパニー”を目指す。それにはチャレンジ精神を持つ人材が欠かせない」と大森社長は力を込める。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:網田 日出人、大森 礼仁
所在地:福岡市博多区博多駅東2-13-34
設 立:1950年4月
資本金:10億2,596万円
TEL:092-474-0713
URL:https://www.yamaehisano.co.jp/recruit

25周年記念出版雑誌 『一樹百穫』 一覧

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