2024年03月29日( 金 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(3)

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 関電の前号のような事情・実態もあってか、竹中平蔵氏が語っているように、政府高官の子弟が多く電力会社に就職している実態がある。竹中氏は遠慮しているので凡学一生の体験をいえば、東大法学部の卒業生で官僚にならなかった残りの者は銀行・大商社・JRと並んで、電力会社に多く就職している。理工系の人も加えて、電力会社は高学歴職員の世界である。

 同書(内部調査報告書)でMが職員を罵倒しているシーンが多数掲載されているが、エリート街道を歩んできた高学歴職員がこのような理不尽な屈辱に甘んじていたことが本当なら、出世や高額所得の為とはいえ情けないの一言に尽きる。証言は法匪のフィクションと信じたい。

 関電の法匪らは、何食わぬ顔をして形式的に会社法の条文の規定を当て嵌めた。そして、Mが変節でもしない限り立証が困難である不正の請託と、虞犯取締役らの不正行為の発覚は困難であることを確認して、ゴーサインを出したものである。請託とはMが虞犯役員らに不正な発注を具体的に要請することであり、不正行為とはその請託に応じて賄賂を収受した虞犯役員らが不正発注(競争入札なしの発注)を決済したことである。単純収賄罪であれば、すでに関電の虞犯取締役らには成立している。

 しかし、加重賄賂罪である会社法上の賄賂罪の要件事実が、客観的に証拠として存在しなければ検察官は立件起訴できない。ヤメ検弁護士らは法律実務でこの間の事情に精通しているからこそ、「違法ではない」と断言した。従って「違法ではない」と法匪らが断言した意味は、犯罪構成要件に該当しないという意味ではなく、検察官が犯罪構成要件事実を証拠によって立証することは不可能・困難であるから有罪となることはない、という意味である。

 なぜなら法匪らが詳細精密な事実調査をした事実・記録などは存在しないから、要件事実が存在しないという意味の「違法ではない」という判断はあり得ないからである。「違法でない」と判断できる事実があれば、むしろ積極的に提示するに決まっている。まさか、同書の伝聞事実が「違法でない」根拠ではあるまい。国民・マスコミはぜひ、法匪が「違法ではない」と判断した根拠を聞くべきである。

 本件では高額な賄賂の授受の事実は明白に存在する。そこで、隠蔽され続けてきた賄賂授受の事実を合理的に説明できなければ完全な白とはならない。その目的のために考案されたのが、死人となったMの人格悪性説と過度な自己顕示欲に基づく示威行為説である。しかし、これは後述するように完全に論理破綻している。

 法匪らには上記の不良・違法行為に加えて別の重大違法行為がある。それは国税当局が査察を行い、20名の役員重職者の収賄行為を認定し課税した事実を彼らが知ったことに関係する。この事実により、虞犯取締役が大部分を占める関電取締役会は贈収賄に関連する一切の業務執行が不可能となった。増収賄事件は単に賄賂の収受のみならず、その間の発注工事にも関連するから、結局、虞犯取締役は事実上、関電の業務執行が不可能となっている。

(つづく)

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