• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月21日 11:05

種子の自家採取原則禁止、疑念払拭できず 種苗法めぐり農水省(後)

農水側を追及する山田元農水相(2019.10.15筆者撮影) -7勉強会の様子(2019.10.15筆者撮影)
農水側を追及する山田元農水相(2019.10.15筆者撮影)

 質疑応答では、最初に山田正彦元農水相が「種苗法改正案が来年の通常国会で出すのは明らかなんだろう」と確認を求めた。農水省側は検討会で議論中であるとして、「現段階では種苗法の改正について意思決定されていない」と答えた。

 山田氏が検討会で出された「自家増殖や転売は一律禁止」の文言を取り上げ、「許諾がなければ、自家増殖できないかたちにするんだね」と向けると、「登録品種については、育成者権者の許諾を得てやるようにしようと」と答えた。

 これに対し、山田氏は「モンサントが育成者権者だったら、他人に『どうぞ使ってくださって結構』というか。許諾するわけないじゃないか。イチゴだって、1本250円位の苗を6000本買おうとしたら大変な出費」と反論。

 登録された品種であってもこれまでは原則、自家採取が認められてきたことを農水省側が認めると、山田氏は「今度は許諾がなければ、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処され、または併科される。共謀罪の対象にもなる」と指弾すると、農水側は「育成者が自家採取しないでくれと言っているものは」と釈明した。

質問する山岡議員(左、2019.10.15筆者撮影)
質問する山岡議員(左、2019.10.15筆者撮影)

 山岡達丸衆院議員(国民)が配付資料のなかに検討会で出された意見として「開発費用の回収が困難であることが悩み」「公的機関は、多くの新品種の利用者から、薄く広く許諾料を徴収することが重要である」との記述があることを挙げ、「新品種をつくったらその分お金をもらいたいと書いている。最悪のシナリオは、海外に流出した品種について制限できないのに国内を規制すると、海外では安くコピー品が出回って、国内は登録育成者の名の下に負担が大きくなる。価格競争力を失って、輸出どころか、市場から追い出されてしまう」と懸念を示した。

 農水側は「検討会を立ち上げたのは、海外に流出したものを何とか抑えたいということ。海外での種苗登録も併用しながら、外に行かないように。出ていっても、産地化しないように」と述べ、あくまで登録品種の国外流出を防ぐためとの見解を示した。

 山田氏は、「海外流出というが、国内法(種苗法)で止めることはできない。10年前に農水省が出した『品種保護制度の概要』で登録品種の第三者への譲渡は禁止されている」「農水省はなぜ、海外でシャインマスカットを意匠(育種・商標)登録しなかったのか。海外への流出を食い止めるためというのはうそではないか」と追及した。

 農水側が「国内法だから海外ではできない。種苗を持ち出す前に、水際で止められるようにする」と返答すると、山田氏は「今の種苗法21条で、登録された品種の持ち出しを禁止することはできるじゃないか」と反論した。

 農水側が「無断で増殖したものを持ち出すことはできないが、通常利用権を得て増殖された種苗を買って持ち出すことはできる」と否定。山田氏は「我々TPP違憲訴訟の弁護団の解釈では、譲渡は禁止されていると思っている。だから(種苗法)改正の必要はまったくない」と返した。

 福田議員は米ソ冷戦が終わり、米国は3つの国益を追求したとして(1)金融自由化(2)知的財産権の保護(3)インターネットを挙げた。「これらによって世界の富を米国に集める。種子法の廃止や種苗法の改正は、-2知財権の戦略に見事に乗せられている。これに乗っかっては駄目だ」とくぎを刺した。

 同会幹事長・山本伸司氏(パルシステム連合会前理事長)は南西諸島のサトウキビ栽培を取り上げ、「8割くらい自家増殖しているが、これが全部一律禁止になるのか」と尋ねた。農水側は「サトウキビは農家で増やしていただいて農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)もつくって県が支援して産地化している。農業者ができなくなるようなことにはならない」となだめた。

 農水側が「今と同じようなことを許諾を受けてやっていただく」と重ねると、山田氏は「農研機構の許諾を得るか、種を買わなきゃいけないわけだろう。その都度」とただす。農水側は「たとえば、農協とかを通じて許諾をする。いろいろなかたちがある」と説明した。

 山本氏は「今の場合、育成者権者は農研機構。国だから国民の税金で開発している。国民が育成者権者ではないか。それを許諾するのは自己矛盾」と告発した。農水側は「農研機構は国民のために試験研究を行う機関なので、日本の農業者のためになるように判断される」と希望的観測を述べた。

 山田氏は「農業競争力強化支援法で、農研機構や都道府県の知的財産権や優良品種の知見を全部民間に譲渡しなさいと決めたじゃないか。民間が許諾するわけがない。サトウキビでもサツマイモでも、1本ずつ苗を買わなきゃいけない。大変なこと」と迫った。

勉強会の様子(2019.10.15筆者撮影)
勉強会の様子(2019.10.15筆者撮影)

 会場から意見が出された。循環農法を営むという男性が「国民のための農水省さんの発言に聞こえない」と主張すると、拍手を浴びた。都道府県の研究所で開発されたコメの種子が、三井化学アフロなど民間種子になれば10倍もの価格になることを挙げ、「これを毎年買えと言われたら、農家はやっていけない。野菜は1%程度しか登録品種ではないが、種の7割をモンサントやダウなどグローバル種子企業がもっていて、ほとんどがF1(一代交配種)。モンサントやダウの出先機関の発言に聞こえる」と不満を示した。

 女性は「全部一緒くたに考えるから、こういうことになるのでは。だから本当に保護したい人を保護できなくて、モンサントとか、企業がもうかるようにしてしまう」と批判した。別の女性は「登録品種と同じように在来種・伝統種を扱い、申請しなければいけないとか、自家播種(はしゅ)を禁止するとかはやめてほしい」と訴えた。

 ゲノム編集技術の自由化を問題にした男性は、「日本の農民のためにというが、だったらなぜ、種子法を廃止したのか。種子生産できる会社が何社あるか。国際企業が日本を狙っている」と警告した。

 同会はあらかじめ質問を用意していた。「毎回、許諾を義務付けるのか」「許諾がなければ自家増殖はできないのか」「接ぎ木を前提としているものや、サトウキビ、イチゴ、サツマイモなど、苗から苗を増殖しているもの、これらについて、明確に一律禁止となるのか」など8項目である。これらについて農水省知的財産課は、後日回答することを約束した。

(了)

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。ブログ『高橋清隆の文書館』。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年11月19日 16:50

誰もが「自分の未病の医者」になれる 未病メソッドを提唱し、未病産業を振興(1)NEW!

 未病の考え方を普及し、未病総研メソッドを提案する団体として、(一社)日本未病総合研究所=未病総研(代表理事:福生吉裕)が今年1月に発足した。(一社)日本医学会連合の...

美談の裏で─ライオンズクラブ337-A地区と朝倉災害支援─(2)NEW!

 なぜ、朝倉市は地域住民からの要望があったにもかかわらず、同校体育館の改修工事を発注できず、LC337-A地区から「寄贈」を受けたのかを時系列で明らかにしていく。

2019年11月19日 14:09

【(株)万惣】低価格武器に九州進出 宇美町に11月5号店NEW!

 広島県を本拠とする万惣は11月末、福岡県宇美町に九州5号店を出す。昨年11月、飯塚市に1号店を開設してからわずか1年。本拠地で出店余地が少なくなったことから持ち前の...

2019年11月19日 13:47

中小企業では経営者と労働者は共通の目的を達成するパートナー!(前)NEW!

 今、大企業を中核とする現代の市場社会が、経済的停滞に陥ると同時に、人々の共同性・連帯性や労働の尊厳を破壊している現実がある。では、人々を封建的抑圧から解放した市場経...

2019年11月19日 11:42

【凡学一生のやさしい法律学】憲法改正について(6)

   憲法の条文上では、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」(第81条)とあるため、日本...

2019年11月19日 11:32

伊都国フードフェスティバルが糸島を盛り上げる!

 第9回目となる伊都国フードフェスティバルが、糸島市多久で11月16日(土)開催された。今回は初となるやますえ会場と五洋食品会場の2会場で開催され、両会場ともに、朝か...

2019年11月19日 10:52

JR九州、ハイエナファンドの餌食になる!~ファンドの圧力に屈して、100億円の自社株買い(前)

 JR九州は11月5日、発行済み株式の2%に当たる320万株、取得額100億円を上限に、自社株を取得すると発表した。

2019年11月19日 10:46

「第11回ひのまるキッズ 九州小学生柔道大会」を開催 スポンサー募集中

 (一社)スポーツひのまるキッズ協会(永瀬義規理事長)は2020年1月19日(日)、福岡県春日市の春日市総合スポーツセンターで、「第11回スポーツひのまるキッズ 九州...

2019年11月19日 10:13

続々・鹿児島の歴史(1)~古墳について~

 今回は大隅国(種子島・屋久島等の熊毛地域を含む)や新たに追加したい事柄等を中心に述べます...

2019年11月19日 09:42

名門ゴルフクラブの株主権確認訴訟~法務過誤

 国民は本件事件で、現在の司法サービスがまったく国民には無益有害となっている実態を学ぶことになった。第一審判決は勝訴した長男に遺産の全額の帰属を認めたが、それは長男に...

pagetop