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2019年10月24日 07:00

関西電力の地元対策を仕切った高浜町の元助役~大企業が仕切り屋に頼る原点は「総会屋」にあり(後)

児玉系総会屋、木島力也の呪縛

 1997年の第一勧業銀行と野村證券など4大証券の総会屋・小池隆一に対する利益供与事件は、大企業は総会屋の関係の転換点となった。

 歴代経営トップの相次ぐ逮捕で、空前の金融スキャンダルに発展。金融事件につきものの犠牲者も出た。第一勧銀相談役の宮崎邦次(元頭取・会長)は自宅で首を吊って自殺した。

 東京地検特捜部が第一勧銀本店に捜査に入った直後、頭取を辞任することになった近藤克彦は苦渋に満ちた表情で、今なお語り継がれる名文句を吐いた。

 「(木島力也の)死後も、呪縛が解けず対応を変えることができなかった」

 これには、説明が必要だろう。木島力也はもともと久保祐三郎系の総会屋だったが、久保の死後は、児玉誉士夫グループと手を組んだ。木島は児玉グループと共闘して、1970年前後に起きた数々の企業の内紛へ介入していく。神戸製鋼所のトラブル処理を請け負ったのは代表例だ。

 木島は神鋼への影響力を強めた。神鋼所有の牧場を手に入れ、名馬ハイセイコーの馬主として知られるようになる。ハイセイコーの「セイコー」は神戸製鋼の「製鋼」から採ったものだと信じられている。

第一銀行と三菱銀行の合併潰しからの因縁

 第一銀行の合併潰しで、大物総会屋の嶋崎栄治と木島力也は共闘した。

 1971年、第一銀行と日本勧業銀行が合併して第一勧業銀行(現・みずほ銀行)が誕生した。この合併の2年前の69年、第一銀行の長谷川重三郎頭取と三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)の田実渉頭取は両行の合併で合意した。

 「三菱に呑み込まれる」。この合併に猛反対したのが、代表権のない会長に祀りあげられていた第一銀行会長の井上薫だった。

 井上は合併を潰すために、総会屋を利用した。その中心にいたのが、大物総会屋の嶋崎栄治である。総会屋やブラック系の雑誌が井上の味方になり、合併反対の援護射撃をした。

 嶋崎の隊列に木島力也も加わった。木島と井上の関係が生じたのは、嶋崎が紹介したのが発端だったという。井上は、総会屋たちに、取締役にも圧力をかけさせた。総会屋たちの意を体する木島が実行した。

 合併は失敗し、頭取の長谷川は辞任、井上が頭取に返り咲き、2年後の第一銀行と日本勧業銀行の合併を成功に導く。木島は「三菱・第一合併潰し」に協力して、井上に恩を売ったのである。木島は第一勧銀の経営中枢に入り込む。

 1984年に児玉誉士夫は死亡し、93年に木島力也が亡くなったが、第一勧銀の経営陣は恐怖の呪縛が解けなかった。

 第一勧銀が呪縛にかかったのは、木島自身に対してではない。木島のバックにいる児玉の影に怯えて呪縛が解けなかったのだ。

 およそ大物とはいえない小池隆一につけ込まれたのは、小池の背後に児玉の名前を最大限に利用した木島がいて、その木島の背後霊のように児玉本人や児玉と親しくしていた町井久之の東声会という暴力装置が存在していたからである。

仕切り屋との結びつきを清算できなかった関電

 第一勧銀の総会屋利益供与事件は、列島を揺るがす金融危機に発展し、企業と特定勢力との癒着を清算する転換点となり、総会屋との関係を断つ企業が相次いだ。総会屋が大手を振って歩く時代は終わった。

 だが、関電では、「仕切り屋」との結びつきが温存されていた。関電の調査委員会が昨年9月にまとめた報告書には、こういうくだりがある。

 〈森山(栄治)氏に対しては、過去からの慣例で、当社幹部が多数出席し、年始会、お花見会、お誕生日会などを開催することとしており、対応者は、これらの供応接待を森山氏に失礼のないよう円滑に実施する必要があった〉

 この一節は、総会屋への「オ・モ・テ・ナ・シ」を彷彿させる。一匹狼の総会屋である栗田英男は、総会屋として稼いだカネで色鍋島や古伊万里などの陶器のコレクターとなった。彼は日本初の大規模陶磁器美術館と銘打った栗田美術館の館長になった。

 美術館建設には莫大な費用がかかったが、そこはそれ、総会屋のこと。お付き合いの企業に協力してもらった。美術館建設中から大企業の総務担当者が草むしりに日参し、1975年の美術館の開館式には一流企業のトップから各国大使まで駆けつける権勢ぶりだったと、伝わっている。

 経営幹部は、仕切り屋がヘソを曲げないように接しなければならないのである。関電は仕切り屋との腐れ縁をいまなお断ち切れないでいた。報告書は、元助役と絶縁する「勇気」を、幹部らが持ち合わせてなかったことが問題の本質だと指弾している。だが、金品受領に関与した経営陣は、これを非公表にして闇に葬り去った。

 大騒ぎになって仕方なく公表したものの、多額の金品をもらっていながら、「預かっていただけ」と言い放つ神経には、驚きを通り越して、恐ろしさすら感じる。地域の「殿様企業」である電力会社は、何をやっても許されると思い上がっているのではないか。関電の闇は深い。

(敬称略:了)
【森村 和男】

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