2024年03月28日( 木 )

医者があきらめた疾病を完治 パーキンソン病の症状を抑制する針治療(後)

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長尾治療院

ドパミン欠乏を解消

 Cさんは長尾治療院で初めて治療を受けた時からすぐに効果を実感し、今では週1回のペースで通院している。本人にパーキンソン病であることの自覚はないが、針治療を受けると「体が軽くなり、動きやすい」ことを実感しており、実際に治療前と後ではCさんの歩き方が変わる。治療前は歩調も遅く、上半身が固くやや前傾の姿勢だが、針を刺した途端に歩調は早まり、姿勢が良くなる。

 身体の機能は動かさない時間が長くなるほど機能は低下する。長尾治療院ではドパミンの分泌を促すツボを刺激することで、一時的に脳内のドパミン欠乏を解消させる。その効果はいつまでも持続しないが、その時間に低下した機能を運動させることで、症状の進行が抑制される。重症な患者ほど針治療の効果は顕著で、他人に支えてもらわないと転倒するほどの重症患者が、万里の長城を1人で歩いて観光できるまでに回復した事例もあるという。

 伝統的医療として鍼灸治療が伝承されてきた中国では、パーキンソン病に対する知見が広い。上海中医薬大学にはパーキンソン病専門の研究機関があり、長尾院長はかつてそこと一緒に研究をしていた経験がある。脳梗塞や半身不随の治療として大脳皮質にある運動野、感覚野に有用なツボのそばに、15mmくらいの間隔でブトウシンセンク(舞踏振戦区)というパーキンソン病治療に有用なツボがあるようだ。「僕のところにきて症状が進んだ患者は1人もいない」という長尾院長のもとには、現在8名の患者が通院している。

自然治癒能力を後押し

舞踏振戦区(パーキンソン区)に針を刺した状態

 一般的に、薬で進行を遅らせたり、電流で脳深部を刺激して症状を抑えるといったパーキンソン病治療があるなか、薬物療法と針治療を併用するDさん(72歳女性)も週1回のペースで長尾治療院に通院している。4年ほど前から生活のなかでうっかり、よく転ぶようになったというDさんは、ウオーキングの際にも足を前に出す感覚に違和感を感じていた。病院に行くと外科的な疾患はなく、脳外科でパーキンソン病と診断され、現在は薬を処方されているがとくに実感はなく、進行性の疾患なだけに不安ばかりが募る日々を過ごしていた。

 そんなDさんが同じ病気の知人から紹介を受けて長尾治療院を訪れたのは昨年12月。針治療を受けた途端に体全体が軽くなり、明らかに歩き方が違う自分自身に驚いた。「針を刺されたと同時に機能が回復したみたいな感じで、先生に出会えたことで前向きになれました。子どもたちも私が元気にしているのが喜びみたいで、これ以上症状が進まないように頑張ります」と微笑んだ。

 長尾治療院では重症な患者ほど病院で診断を受けてきてもらい、治療の参考にする。科学的根拠が示されれば、より安心して治療ができるからだ。しかし、化学合成物質である薬は機能性が高いがゆえに、身体の機能が薬に依存して自分で働かなくなりやすく、十分に注意してほしいと警鐘を鳴らす。薬の副作用が二次的な障害につながることもある。鍼灸治療の本質は、もともと身体がもっている治癒能力を後押しすること。本来、人間の体はしつこいくらいに丈夫で、自然治癒を生かした鍼灸治療は現在、世界160カ国で施されている。

(了)

<プロフィール>
長尾 良一(ながお・りょういち)

 1949年福岡県生まれ。手技療法の大家であった父・松造氏の跡を継ぎ、長尾流の手技と独自の鍼灸治療で現在に至る。長尾治療院院長、日中特種鍼法研究会会長を務める。

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県唐津市西城内6-7
TEL:0955-72-7243
FAX:0955-74-7072
URL:http://nagao-chiryouin.jp
治療内容:内科・外科・婦人科・皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・精神科・脳神経科系

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