2024年04月20日( 土 )

新時代へのチャレンジ 新幹線プロジェクト、SDGs、伊都住宅公園

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

外断熱工法による高性能住宅、自然素材住宅の設計・施工・管理ほか
健康住宅(株)

10カ月待ちでも家を建てたい

代表取締役社長 畑中 直 氏
代表取締役社長 畑中 直 氏

 着工状況が記された社内のホワイトボードには、「着工待ち」が溢れんばかりに並んでいる。外断熱工法による省エネルギー、高性能住宅に取り組んで21年で1,500棟棟を超える引き渡し実績を誇る同社だが、品質を確保するためにも年間に着工する棟数を制限してきた。そのため、着工待ちが発生しているのだが、「最大10カ月待ちでも健康住宅で家を建てる」決断をする施主が多いのは、これまで積み上げてきたブランド力の賜物だろう。

 同社の畑中直社長は、次のように話す。「我が社には『GOOD COMPANY with GOOD PEOPLE(いい人がたくさん居るいい会社)』というビジョンがあります。出社するのが楽しく、社内の雰囲気が良くて、仕事には厳しい。もちろん、きちんと利益を出しつつ、社員さんが世間から『良い会社に勤めていますね』と認められる。そんなビジョンです。ゴールは遠いですが、あきらめないで追い続けていきたいですね」。

 このビジョンを具現化するために、17年8月から「新幹線プロジェクト」への取り組みを開始した。新幹線は高速で走行するために、全車両にエンジンを搭載している。その仕組みにならって、社員1人ひとりがエンジンをもち、全員で成長していける会社になる―という意味が込められている。

 新幹線プロジェクトでは、17年7月期を基準に「24年7月末までに、年間棟数を倍、社員数を1.5倍、利益を3倍にする」を数値目標に掲げた。「実現すれば、これまでできなかった方策をとることができるはずですが、2年間取り組んでみて、数値目標にだけ追われてビジョンや理念を後回しにしない仕組みも同時に構築しなければならないと実感しています。改めて理念の重要性に触れられたような気がします」(畑中社長)。

事業に即した健康住宅のSDGs

 また、SDGs(持続可能な開発目標)にも力を入れている。きっかけは、「健康住宅の事業とフィットした国際的な取り組みが始まった」という取引先の一言だったという。18年7月に『SDGs宣言』を行ったが、SDGsに掲げられている17の目標のうちとくに健康や省エネ、伝統技術の継承、そして住み続けられるまちづくりなど、同社がこれまで取り組んできた内容と驚くほど合致している。国際的な取り組みなので、全社的にもテンションが上がって推進しやすいうえ、SDGsに理解の深い顧客も多いという。

 畑中社長は、「お客さまを招いて感謝イベントを毎年企画しているんですが、今年は社員の小さなSDGsをツリーにして会場に掲げました。実は私は、コンビニなどでは賞味期限が古いものから買うようにしているのですが、そのことをツリーに書いたところ、後日、ご参加いただいたお客さまから『非常に共感いたします』と書かれた丁寧なお礼状をいただきました。この方のように、小さなことでも社会に貢献したいと考える方は多く、これまで以上に健康住宅の取り組みを理解していただけたと実感しています」と話した。

理念経営で歩合制も廃止

社内勉強会「健康住宅とSDGs」の様子
社内勉強会「健康住宅とSDGs」の様子

 今でこそ、「地域でいちばん大切にしたい住宅会社」に選定されるなど、経営理念の浸透した企業として知られる同社だが、創業時に経営理念はなかったそうだ。その後、セミナーや勉強会を経て同社も作成することとなるが、当初は内容を暗記するだけでまったく浸透しなかったという。この反省から、従業員と会話する時間を多く設け、会社の目指す方向性「正直で真摯な仕事をしよう」を明文化した経営理念「《K-J HEART》(健康住宅の心)」を作成。12年からは、従業員全員が常に携帯するようになった。これには、会社の理想、人としてのあり方、行動指針、経営理念の具体的実践方法のすべてが詰まっている。

 住宅会社としては珍しく、営業の歩合制を廃止。施主に対しては、社員個人ではなくチームで対応するため、複数の社員で施主の情報を共有できるようになった。提案やアフターフォローを充実させることで、施主との関係性を深めることができ、やりがい創出にも貢献しているという。その結果、同社での退職率は劇的に減少。出戻り社員も8名にまで増えた。

 「弊社でもう一度働きたいと言って戻ってきてくれるのは非常にうれしいですね。彼らは、昔の弊社のことをよく知っているし、独立して苦労した人もいます。その経験は我が社にとって大きな戦力です。うちしか知らない社員の良き相談相手にもなってくれているようです」―同社の畑中社長はそう話してくれた。

 15年には、経済産業省が主催する「おもてなし経営企業選」(※)に選出。年間休日の多さや社員大工など従来の建築・不動産会社には珍しい体制が評価された結果となったが、意外と知られていないのが、1日5回の清掃を欠かさないという「現場綺麗運動」だ。清掃の徹底は、最初こそ現場から不満の声も出ていたが、『ミスの減少』『工期短縮』『コスト削減』につながったことで完全に定着したという。

(※)おもてなし経営企業選:価格競争に陥ることなく顧客のニーズに合致したサービスを継続的に提供し、「顧客」のみならず、「社員」「地域・社会」から愛される経営を実現している企業を経済産業省が選出するもの。

新プロジェクト伊都住宅公園

夏祭りイベント
夏祭りイベント

 社内チャットやスケジュール管理アプリ、顧客管理システムなどのIT化も急ピッチで整備。住宅会社として導入するうえでの設定に時間をかけたことで、「IT化」するだけでなく、しっかりと活用されているようだ。設定が重要なのは、社員の評価制度も同じだろう。新幹線プロジェクトを進める同社では、規模の拡大とともに社内のポストも増加。曖昧な評価だったころと比べ、昇給や昇進に対する社員の「なぜ?」「どうして?」が減り、前向きに業務に取り組む環境ができた。

 本社の住宅資料館、春日展示場(春日市)、hitマリナ通り住宅展示場(西区)、梅林宿泊体験施設に続き、19年5月には、伊都住宅公園(西区)をオープンさせた。約600坪の敷地に外断熱工法の健康住宅とグループ会社で高性能な内断熱工法が主体のハウスオリジンの2つのモデルハウスが並ぶ体験型施設だ。本社と同じくそれぞれの住宅性能を裏付けするセンターハウス(20年3月完成予定)のほか、インテリアや雑貨など暮らしの提案施設が設けられる予定だ。

 グループ会社で内断熱工法を取り入れていることについては、「外断熱がベストであることは間違いありませんが、日々工法は変化しています。断熱材を吹付発泡ウレタンにすることで、原価の安い内断熱でもベターな家をつくることができます。健康住宅とハウスオリジン、両社の良さを並べてみられるのが、伊都住宅公園です。単なる展示場としてだけではなく、イベントやメンテナンス相談会などを通じて、『お客さまの幸せが実現できる企業』を目指します」(畑中社長)と話した。

ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2018にて特別優秀賞と特別優秀企業賞をダブル受賞
ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2018にて特別優秀賞と特別優秀企業賞をダブル受賞

<COMPANY INFORMATION>
代 表:畑中 直
所在地:福岡市城南区別府5-25-21
設 立:1998年8月
資本金:2,000万円
TEL:092-846-3000
URL:http://www.kenkoh-jutaku.co.jp

25周年記念出版雑誌 『一樹百穫』 一覧

関連キーワード

関連記事