2024年04月25日( 木 )

【凡学一生のやさしい法律学】戦後最大の冤罪事件~ゴーン裁判近し(3)

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 そして、未だ完全に闇の中にあるのが2名の共犯者と2名のヤメ検弁護人の接点である。

 通常、2名の共犯者は捜査当局によって、自らが犯人の嫌疑を受けていることを自覚していなければ、そもそも共犯者として司法取引に応ずることはない。そうであれば、2名の共犯者らは誰から被疑者となっていることを知らされたのか。その嫌疑理由に2名の共犯者らは納得していたのか。筆者の推測であるが、2名の共犯者らは2名のヤメ検に虚偽の説明か、利益誘導を受け、錯誤によって、自らが容疑者であることを誤解させられたものと思う。

 この2名の共犯者らが自らを犯罪者と認識した過程こそ、本件最大の闇であることはもはや誰の目にも明らかである。2名の共犯者らは司法取引によって、犯罪の責任を問われることがないのであるから、世間に対して、懺悔の意味でも、司法取引に応じた経緯を公表すべきであり、また、マスコミも国民が最も関心のある事実として、この間の事情について2名の共犯者に取材すべきである。筆者が最も危惧していることは、これら2名の重要証人が忽然と日本社会から消えてしまうことである。

具体的な刑事訴訟法の条文(刑訴350条の2 及び同350条の3)

第350条の2
 検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が特定犯罪に係る他人の刑事事件(以下単に「他人の刑事事件」という。)について一又は二以上の第一号に掲げる行為をすることにより得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重び情状、当該関係する犯罪の関連性の程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、被疑者又は被告人との間で、被疑者又は被告人が当該他人の刑事事件について一又は二以上の同号に掲げる行為をし、かつ、検察官が被疑者又は被告人の当該事件について一又は二以上の第二号に掲げる行為をすることを内容とする合意をすることができる。

1. 次に掲げる行為 
イ 第百九十八条第一項又は第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して真実の供述をすること。
ロ 証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること。
ハ 検察官、検察事務官又は司法警察職員による証拠の収集に関し、証拠の提出その他の必要な協力をすること(イ及びロに掲げるものを除く。)。

2. 次に掲げる行為 
イ 公訴を提起しないこと。
ロ 公訴を取り消すこと。
ハ 特定の訴因及び罰条により公訴を提起し、又はこれを維持すること。
ニ 特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求すること。
ホ 第二百九十三条第一項の規定による意見の陳述において、被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること。
ヘ 即決裁判手続の申立てをすること。
ト 略式命令の請求をすること。

2. 前項に規定する「特定犯罪」とは、次に掲げる罪(死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たるものを除く。)をいう。 

1. 刑法第九十六条から第九十六条の六まで若しくは第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪、同法第百五十七条の罪、同法第百五十八条の罪(同法第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪又は同法第百五十七条第一項若しくは第二項の罪に係るものに限る。)又は同法第百五十九条から第百六十三条の五まで、第百九十七条から第百九十七条の四まで、第百九十八条、第二百四十六条から第二百五十条まで若しくは第二百五十二条から第二百五十四条までの罪

2. 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第三条第一項第一号から第四号まで、第十三号若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪、同項第十三号若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪の未遂罪又は組織的犯罪処罰法第十条若しくは第十一条の罪

3. 前二号に掲げるもののほか、租税に関する法律、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)又は金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の罪その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの

4. 次に掲げる法律の罪 
イ 爆発物取締罰則(明治十七年太政官布告第三十二号)
ロ 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)
ハ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)
ニ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)
ホ 武器等製造法(昭和二十八年法律第百四十五号)
ヘ あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)
ト 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)
チ 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する
法律(平成三年法律第九十四号)

5. 刑法第百三条、第百四条若しくは第百五条の二の罪又は組織的犯罪処罰法第七条の罪(同条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係るものに限る。)若しくは組織的犯罪処罰法第七条の二の罪(いずれも前各号に掲げる罪を本犯の罪とするものに限る。)

3. 第一項の合意には、被疑者若しくは被告人がする同項第一号に掲げる行為又は検察官がする同項第二号に掲げる行為に付随する事項その他の合意の目的を達するため必要な事項をその内容として含めることができる。

第350条の3
1.前条第一項の合意をするには、弁護人の同意がなければならない。
2.前条第一項の合意は、検察官、被疑者又は被告人及び弁護人が連署した書面により、その内容を明らかにしてするものとする。

解説
1 司法取引の合意当事者は被疑者又は被告人、検察官、弁護人の3者である。合意は文書によらなければならない。
2 被疑者又は被告人と弁護人の関係については一切の制限はない。本件ではゴーン氏の犯罪行為すら存在しないのであるから、どうして共犯者の犯罪行為が存在するのか、という根本的な論理矛盾が存在する。2名の共犯者が犯罪の存在が無いことを知って共犯者の役割を演じた可能性も否定できない。2名の共犯者が自らを犯罪者と認識した経緯理由が本件では最も重大な事実となる。

(つづく)

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