2024年03月29日( 金 )

【凡学一生のやさしい法律学】戦後最大の冤罪事件~ゴーン裁判近し(4)

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共犯の認定(以下、敬称略)

 2名の共犯者のうち、1名はハリ・ナダという弁護士資格(外国)を持つ法務担当執行役員(当時)である。このハリ・ナダとゴーンが共犯関係にあるという事実認定はどのようにされたのであろうか。

 周知のように、ゴーンは突然逮捕されたのであり、ハリ・ナダが共犯関係を自白し、ヤメ検の弁護人とともに捜査協力合意書に署名したことはまったく知らなかった。もちろん、事前の任意取調べもまったく受けていない。つまり、ハリ・ナダの自白によってのみ共犯関係を検察は認定し、ゴーンの逮捕状を請求したことになる。

 ゴーンは一貫して闇の役員報酬の存在を否定している。特定の会計期間・年度の役員報酬は最終的に取締役会の事前の承認(当該期間の予算への計上)と事後の承認(同決算における業務実績の確認)がなければ法的には正式に成立せず、支給されないのであるから、いかに退任後に獲得予定の金額を毎年、記録してもそれが、法的に有効・正式な役員報酬となるはずもない。

 弁護士資格をもつハリ・ナダがそれくらいのことすら理解していないとは到底信じられない。しかも、ハリ・ナダとゴーンの間で確定した将来の役員報酬という共通の認識とそれを隠蔽しようとする共通の認識がなければ共犯の意思が存在するとは認められない。

 とくにゴーンは上司としてハリ・ナダらに同書類を作成させ、ほかに知られないように保管を命じたもので、ハリ・ナダとゴーンの間に有価証券報告書の虚偽記載の共同行為の認識があったとはまったく認定できない。

 単に部下が上司の命令によって将来のための備忘録を作成し、内密に保管するように命じられ、それに従ったに過ぎない。どこにも犯罪の要素、共犯の要素は存在しない。ハリ・ナダは如何なる経緯、理由でゴーンとの有価証券報告書虚偽記載罪の共犯の意思を認めたのだろうか。かかる場合、ハリ・ナダの立場では当然のことながら、上司に命令され書類を作成し、内密に保管しただけで、有価証券報告書の虚偽記載の故意はない、いわんや、共犯の事実はない、と抗弁してしかるべきである。ハリ・ナダは当然の抗弁をなぜしなかったのか、いかなる説得を誰から受けて共犯犯罪を認容したのか。どのように考えても理不尽の一言に尽きる。これが、本件司法取引において隠蔽されてきた「闇」である。

 ハリ・ナダとほか1名の共犯者はみずからが共犯者でないことを知って共犯者として捜査協力書に合意署名をした疑いがある。これが、ゴーンを策略によって犯罪者に仕立てた冤罪犯罪の可能性を否定できない理由である。

(了)

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