2024年04月24日( 水 )

日本橋兜町・茅場町 金融のまち復権へ(後)

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動き出した再活性化プロジェクト

始動した「KABUTO ONE」プロジェクト

 日本橋兜町・茅場町は、「日本橋七の部地域」に属している。2015年6月に、日本橋兜町・日本橋茅場町1丁目が「東京圏国家戦略特区」の新規再生プロジェクトとして位置づけられた。東京都が提唱する「国際金融都市・東京」構想では、大手町から兜町地区にかけてのエリアを金融軸とし、官民連携により多くの金融機能を整備する考えだ。

 金融業集積地として地域の特性を生かしたまちづくりを行うため、中央区は「日本橋七の部地域まちづくりビジョン」を策定し、地域のさらなる発展を目指している。「このまちづくりビジョンは町会長を始めとする地元の方々と協議のうえで策定したことが、大きなポイントです」(中央区の担当職員)といい、まちづくりの目標は、「七の部地域の核となる新たな兜町金融拠点の形成」と「まち全体のにぎわいと回遊性の創出」の2点を挙げている。目標実現に向けた指針は、別表の通りだ。

 国や東京都、中央区が次々と構想やビジョンを打ち出していくなか、地元の平和不動産(株)でも「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」に向けて、本格的に動き出した。将来的には、地区全体で「国際金融都市・東京」構想の一翼を担うことを目指す。まちづくり対象エリアの面積は約10万m2。地下鉄5路線の駅が集積し、東京駅へも徒歩圏、羽田・成田の両国際空港へのアクセスも良好なポテンシャルの高いエリアであり、兜町・茅場町再開発の第1弾プロジェクトは、国家戦略特区のプロジェクトとして認定されている。再開発ビルの名称は「KABUTO ONE」。“兜町が日本経済の基点であり続ける”との意味が込められた。

茅場町には老朽化した建物も多い

 日本を代表するオフィス街である日本橋や大手町には、主要金融機関やグローバル企業などが集積している。隣接する兜町が日本橋や大手町と連携し、役割を分担することで、「国際金融都市・東京」構想をスムーズに実現する狙いが平和不動産にはある。そこで同社は兜町・茅場町地区の導入機能のイメージとして、「投資家と企業の対話・交流促進」「資産運用を中心とした金融ベンチャー企業や金融専門サービス業者等の発展の貢献」「主として外国人をターゲットとした高度金融人材の受入促進」の3つを掲げている。
 かつて昭和の時代には、多くの証券会社で賑わっていた兜町だが、バブル崩壊や場立ちの廃止により、現在では事務所を構える金融機関はわずかで、もはや金融街とは呼べないまちへと変貌してしまっている。そのまちが、東京都の「国際金融都市・東京」構想や、中央区の「日本橋七の部地域まちづくりビジョン」、平和不動産の「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」などの動きにより、国際金融都市の一角として再生に動き出した。東京が世界に誇る国際金融都市となるためには、賑わいが失われつつあった兜町・茅場町が、再び金融街として復権できるかにかかっているといっても過言ではない。

(了)
【長井 雄一朗】

(前)

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