2024年04月26日( 金 )

不正会計で既存店舗の競争力低下が顕に M&Aで活路を見出せるか(前)

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(株)梅の花

 (株)梅の花は、湯葉と豆腐の懐石料理店「梅の花」を中心に、近年はM&Aで他業態にも進出を図ろうとしている。創業来のワンマン体制から脱却すべく、18年9月から本多裕二氏が代表取締役社長に就任したが、19年6月に不正会計が発覚。組織内のコンプライアンス意識の欠如などが浮き彫りとなった。

高級日本料理店「梅の花」を展開

梅の花本社(福岡県久留米市)

 (株)梅の花の前身は梅野重俊氏が佐賀市神野町でカニ料理店「かにしげ」を創業したのが始まり。79年10月にかにしげ(有)を設立。80年12月、久留米市に本社を移転し、86年4月に京懐石料理「梅の花」1号店を久留米市内にオープン。以後、南は鹿児島、北は北海道に至るまで全国各地に店舗展開している。

 90年1月に(株)ウメコーポレーションを設立。同年7月にかにしげ(有)(実質上の存続会社)を組織変更を目的として吸収合併。97年10月に現社名へ商号変更し、99年4月には店頭登録(現・ジャスダック)をはたした。
 2004年9月からは持株会社へ移行。全国各地の店舗を地域や店舗内容で数社に分割しているほか、大手百貨店などとも業務提携している。現在、同社を中心とした梅の花グループには、不動産管理会社や食材供給会社、居酒屋チェーン店運営会社などが名を連ねている。18年9月からは本多裕二氏(前・取締役専務執行役)が代表取締役社長兼COOに就任。梅野氏は代表取締役会長兼CEOとして、引き続き経営陣に名を連ねている。

積極的な事業展開が裏目にも

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 【図I】は直近12年間の同社の業績である。売上高は例年280~330億円の間を推移しているが、最終利益は12期中8期で最終赤字となっている。

 08年9月期はテイクアウトの巻き寿司・いなり寿司の販売を行う(株)古市庵を買収したことにともない、連結売上高は前年比40%以上の増収となる285億2,200万円を計上した。しかし、リーマン・ショックによる影響で既存店舗の売上高が低迷し、原材料費や人件費の高騰、古市庵の子会社化にともなうのれん償却費計上などが重なったことで、営業利益は前年比94%減の4,900万円に減少。さらには古市庵がデリバティブ取引で評価損を出していたことも影響して、経常段階で3億3,500万円の赤字を計上し、最終赤字は20億5,700万円にまで膨らんだ。この影響は09年9月期にもまたがり、同期はテイクアウト部門で不採算店の閉鎖や古市庵の管理部門を統合するなどコスト削減を図ったが、またも億単位のデリバティブ損失を計上し2期連続して経常赤字、以後11年9月期まで連続赤字となった。この時期の同社の経営は、危機的状況に立たされていたと言っても過言ではない。

 12年9月期は財務体質の強化を目的として投資を抑制し、有利子負債の圧縮に努めた結果、最終利益で2億9,500万円を確保。同年11月には、国内有数の百貨店グループであるエイチ・ツー・オー リテイリング(株)と資本・業務提携を締結し、さらなる業績向上が期待された。しかし、提携効果が期待された13年9月期の売上高は297億8,100万円にとどまり、利益は前年比減益となった。14年9月期はコスト削減効果により大幅増益となったが、売上高は296億8,000万円でほぼ横ばいと振るわず。15年2月にはエイチ・ツー・オー リテイリングとの提携関係を発展させ、梅の花が子会社になる方向で協議を開始していたが、協議は不調に終わり、その傘下に入ることは叶わなかった。この期は売上高こそほぼ横ばいで推移するも、軒並み利益を減少させ、8,400万円の最終赤字を計上した。

 16年9月期は西日本シティ銀行および福岡銀行から60億円の借入を実施し、(株)丸平商店、ヤマグチ水産(株)、(株)グッドマークトレーディングの3社からなる丸平商店グループの株式を3億9,500万円で取得し子会社化。同年11月には(株)フジオフードシステムと資本業務提携を締結。17年2月にはサトレストランシステムズ(株)のグループ事業である「すし半」の事業取得に際し、(株)すし半を25億2,000万円で買収した。そして19年3月には、主に首都圏で海産物居酒屋「さくら水産」を運営する(株)テラケンの株式の58.0%を取得し、連結子会社化することを発表している。

 同社の沿革と業績を振り返ると「梅の花」業態に頼らない新たな業態への展開を模索しようとしていることがわかる。しかし、いずれの事例も期待した成果を得ることはできず、依然として「梅の花」既存店舗に依存する経営体質からの脱却には至っていないことが浮き彫りとなっている。

(つづく)

【長谷川 大輔】

<COMPANY INFORMATION>
(株)梅の花
代 表:本多 裕二
所在地:福岡県久留米市天神町146
設 立:1990年1月
資本金:50億8,294万円
売上高:(19/4連結)194億9,960万円
(後)

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