2024年04月20日( 土 )

注目を集めている北極海航路(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 地球温暖化の影響で北極海の氷が減少している。北極圏の気温上昇は全世界平均の2倍だと言われおり、その影響で、氷が今でも溶け続けているのだ。過去30年間、北極の氷はずっと減少し続けてきた。その結果、北極海の氷の面積と厚さは1980年代と比べて、半分くらいになっているようだ。

 そんな状況下、北極海航路が世界の注目を集めている。世界の物流の9割はまだ海運で成り立っている。海運でコストを左右するのは距離である。北極海航路は既存の航路に比べ、約3割コストを削減できるといい、世界から注目されている。

 北極海航路とは欧州と東北アジアを結ぶ新たな航海ルートを指す。北極海航路の存在は、実は昔から知られていた。しかし、厚く膨大な氷に邪魔され、その航路は利用できず、世界のほとんどの船舶は、南回りせざるを得なくなっていた。

 北極海航路にはカナダ側の北西航路と、ロシア側の北東航路がある。近年、とくに注目されているのは、ロシア側の北東航路である。

 2009年にヨーロッパ・東アジア間の商業輸送が始まった北東航路だが、その後、その数は急速に拡大しつつある。

 現在、北東航路は夏から秋に向けて四カ月間くらい利用可能となっている。砕氷船の数が増えていることもり、今のペースで氷がとけ続けると北極海航路の利用はもっと進むことになるだろう。

 北極海航路にはどのようなメリットがあるのだろうか。まず、航海距離短縮による航海時間とコストの削減が挙げられる。釜山港からオランダのアムステルダムへの運航距離は、スエズ運河を通って24日間かかる南回りのルートと比較すると、航海日数は14日しかかからない。運航距離も2万1,000kmから1万2,700kmと、約3割以上短くなり、航海日数も単純計算で10日ほど短縮できる。このように北極海航路は時間とコストの削減効果をもたらす。

 2つ目のメリットは、航路上にチェックポイントがないことだ。中東の政治不安定から起因するスエズ運河の封鎖や、ソマリア沖やマラッカ海峡における海賊の被害やテロのリスクを懸念する必要がない。上記のようなリスク以外にも、今後船舶は大型化するので、幅が狭いと問題となる。北極海航路はこのような問題を解決できる代替ルートとして期待されている。

 3つ目のメリットは、北極圏に眠る資源の活用に大きな期待が寄せられていることだ。実際、北極圏には全世界の埋蔵量の13%に当たる900億バレルの原油があると推定されている。天然ガスの場合は全世界の埋蔵量の30%に該当する47兆m3があると言われている。シベリア北部にはその他にも、ダイアモンド、銀などが豊富に眠っているようだ。ロシアの場合、このような天然資源を北極海航路を利用して、巨大市場である東アジアに運ぶことを想定している。

 上記のような理由からロシアをはじめ、中国、米国、韓国などは、北極海航路の開拓競争を行っている。

 韓国の場合、以下の3つに注目している。「天然ガスなどのエネルギー源の新たな供給先の確保」「砕氷船の受注」「釜山港を北極海航路のハブ港にする計画」である。

 韓国の大宇造船海洋は、ロシアからすでに砕氷船15隻を受注し、10隻は納品済みである。砕氷船1隻の価格は3億2,000万ドルもするので、韓国の造船会社にとっては新たなビッグビジネスチャンスになるわけだ。

(つづく)

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